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雨降り

幽霊について

2016 年に映画館で見た映画

ベストテンや各賞は2016勝手に映画ランキング! inハイク - はてなハイクに書きました。2016 年は、おもしろい映画がたくさんあって、もしかして走馬灯でも見ているんじゃないかと不安になるほどでした。2017 年も健康に気をつけて映画館詣でを続けたいです。

以下は 2016 年に映画館で見た映画一覧メモです。57 本見たのかな。書きたいこと、他にいくつかあったけど、もう松も明けるし、去年のことはこれでおしまいにします。

 

2016 ベストワン候補

  • この世界の片隅に……後から思うと、テンポがはやいのも良かった。考えるのは後からゆっくりでも良いし、頭を真っ白にしてただ見るという体験ができたのが良かったんじゃないかな。
  • サウルの息子……カメラがすーっとサウルに焦点を合わせた瞬間からずっと、息が苦しかった。
  • ハドソン川の奇跡……始まった瞬間はっとした、あの感じが忘れられない。
  • 裸足の季節……主人公が逃げ出そうとするときに、内と外をひっくりかえすこと、「行かせてやれ」という声が、彼女を閉じ込めていた側の人間からあがることなんかが印象的だった。
  • ベストセラー……仕事に献身するということに当然ついてくる様々なことがゆっくりと描かれる。ハードだけど、優しい映画でした。
  • ブルーに生まれついて……事実を元にしたという感じが薄い。ゆるくない、ハードな物語。イーサン・ホークが今まで出してこなかった声を出している。
  • タイガーマウンテン 雪原の死闘……記憶と史料、歴史、そして物語の関係を生き生きと描いていて、素晴らしかった。
  • キャロル……キャロルが主人公でなくなりそうな雰囲気があった。くるくると視点が変わるような、視線の行ったり来たりの過程で映画そのものが変質してしまいそうな危うさにどきどきした。
  • リリーのすべて……映画冒頭のリリーたちの間にあった、創造的で、二人で闘いながら生き抜いていくのよ、幸せになるのよ、という雰囲気が、もう戻ってこないとわかってからも、一瞬でいい、戻ってきてくれないかと思いながら見ました。
  • ヘイトフル・エイト……時折誰かが口にする「お前の話を聞かせてくれ」という言葉が終盤に行くにしたがって大きく反響していって、あのラストになる。
  • マネーショート 華麗なる大逆転……映画なんだけど、本を読むような楽しさがある。
  • ボーダーライン……自分が日常、その中で考えている法や論理が通用しないところにぽーんと放り込まれる、その放り込まれ方があまりに静かでびっくり。
  • スポットライト……それぞれの立場、それぞれの見え方が無理なく、穏やかに共存したかたちで描かれていて上品だった。
  • アイ アム ア ヒーロー……原作より上品で大人っぽい仕上がり。
  • クリード チャンプを継ぐ男……欠点がない、完璧な映画だと思う。
  • 貞子VS伽倻子……最高!
  • ヒメアノ~ル……もう麦茶は飲めない。この映画が残した傷は深い。
  • 暗殺……チョン・ジヒョンが大好きになった。
  • シング・ストリート……長男大賞。

 

2016 ワンじゃないけどベストテン圏内候補

  • ローグ・ワン / スター・ウォーズ・ストーリー……主人公の三人が、私は好きだった。私にとってはとても魅力的な三人だった。
  • ブレイク・ビーターズ……甘酸。ラストがすごくいい。
  • スター・ウォーズ / フォースの覚醒……レイの前で神話が歴史になる瞬間がクライマックスになっているのが良かった。
  • オデッセイ……疲れているときに見るといいと思う。
  • ノック・ノック……主人公は何の落ち度もないのに酷い目に遭う。そのひどい目に遭う彼に対して、いらっとしたり、時には笑ったりしてしまう……。キアヌ・リーヴスでなければ成り立たなかった。
  • ストレイト・アウタ・コンプトン……147 分もあるように感じなかった。実話をもとにしているせいか、アップダウンが上品だった。
  • レヴェナント:蘇りし者……あそこまでやっといて、最後のショットでああなるっていうのが、いいなと思ったよ。

 

2016 欠点はあるだろうけど私は好きだった群

  • 香港、華麗なるオフィス・ライフ……いやもう、びっくりした。すごい映画だった。
  • 湾生回家……こればっかり見てたらいけないとは思うけど、これはこれで撮られて、公開されて良かった。
  • ジェイソン・ボーン……映像も音楽も不躾な中、ボーン本人の強さがきらっとしていておもしろかった。
  • グランド・リジュージョン 見破られたトリック……疲れているとき見たらいいと思う。
  • インサイダーズ / 内部者たち……映画全体が粘り強くて良かった。
  • ダーティ・コップ……ラストがちょっといい。いいニコラス・ケイジ
  • ゾンビスクール!……「この人、ひとっつもいいところないな〜」っていう登場人物はいないので、わりと最後まではらはらどきどき楽しいです。
  • ロブスター……ルールのわからないゲームに途中参加するような不安が味わえます。ラストはシニカル。
  • マネーモンスター……おもしろかった。
  • 探偵なふたり……これわりときっちりおもしろいのでおすすめです。
  • プリースト 悪魔を葬る者……すごいテンポがはやくて「うわあ」とびっくりします。エンドクレジットでは主人公たちが朗々と歌います。
  • 私の少女時代 - OUR TIMES -……まあ、すごいです。甘酸。天使役でアンディ・ラウが。
  • 華麗なるリベンジ……あんまり華麗ではないんですが、主人公たちは魅力的だし、ラストもさわやか。
  • 弁護人……これがヒットしたという事実がたいへんに重いです。
  • エブリバディ・ウォンツ・サム!!……縁もゆかりもない、体育会系のうかれたみなさんの、人生最高に調子乗ってる数日を見るという不思議な体験。
  • 君の名は。 ……予告と全然違う、予想外にきちきちーと組んである話なので、予告で「なんだいれかわる話か」と思って見てない人は、見た方がいいんじゃないかな〜。
  • メカニック ワールドミッション……前作では趣味がクラシックだったステイサム。今作ではロックに。お金がなくなったようです。それでも素敵。
  • DENKI GROOVE THE MOVIE ? 石野卓球ピエール瀧……ガラの悪い仙人の活動をぼんやりと見ることができます。

2016 リバイバル上映なのでどう位置づけていいかわからないけど傑作群

  • ブリーダー……マッツがどえらいことになっているので、みんな見てほしい。
  • 黒衣の刺客……映画館でかかる度に見たい。「解ける」ことをこんな風に映すなんて。
  • 悲情城市……何度見ても不思議なおもしろさ。
  • ロシュフォールの恋人たち……いちいち踊ったり歌ったりしないと次のステップにすすめない恋人たちに幸あれ。
  • めまい……いやもう、何もこんなに主人公をひどい目にあわさんでも。

 

2016 好みかと聞かれればわからないけど、おもしろかったし、文句はないというか、何なら賞賛したり、人に勧めたりしても構わない

  • マイケル・ムーアの世界戦略のすすめ……まじめな映画で、誰にでもおすすめできます。

 

2016 それ以外群

  • ドラゴン・ブレイド……ジャッキー・チェン、色々大変なのかなあとか思った。
  • サウスポー……編集で何か無理をしたような印象でした。
  • FAKE……全体にだらしなかった。
  • シン・ゴジラ……苦手なかっこわるさだった。
  • すれ違いのダイアリーズ……すごろくみたいな話だった。
  • 神なるオオカミ……回復不能な、やったらいけないことをやって、それを映しているのに、なんとなく許されるのが気持ちわるかった。
  • ヘリオス 赤い諜報戦……何でヒットしたのかさっぱりわからなかった。ゆるゆるに見えた。ニック・チョンにあんなことをさせる映画界に腹が立った。

ざべすのきまぐれ便り

今週のお題「2017年にやりたいこと」

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こんばんは。

ざべすよ。

雨子が忙しいっていうから代わりに書いているわ。

雨子、忙しいっていうけど、今年のぎょうむはぜんぶ終了しているらしいわよ。後は本読んでお酒飲んで寝るだけですって。優雅ね!

ざべすはこう見えても色々忙しいの。

きぜわしいっていうのかしら。

雨子って気がつくとぼんやりしていて、なんにもしないのよね。だから代わりにばんごはんのメニューを考えたり、おやつの時間を教えてあげたりしているのよ。

ざべす、そんな雨子につれられて、2016 年はたくさん映画を見ました。

おもしろいのもあったけど、眠たいのもあったわ。

ざべすは「貞子VS伽椰子」がおもしろかったわ! 客席で興奮して立ち上がっちゃった。立ち上がってもざべす小さいから影響ないんだけど、本人としては驚きました。まほうつかいみたいな男の人が出てきてね……これ、言っちゃっていいのかしら? だめかもしれません。

ざべすは来年、映画以外にももっとたくさんおでかけしたいの!

素敵な喫茶店とか洋館とか行きたいわ。

それに100歩譲って、映画に行ったとして、帰りはどこかでおいしいもの食べましょうよ。映画館におむすび持っていくのなんて、もってのほかよ!

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(こういう感じのところですか?)

レトロすぎるわよ!

もう!

そういうところばっかりじゃなくて、来年はもっときらきらしたところにお出かけするのよ!

 

ではおやすみなさい。

みなさま、今年は雨子がお世話になったわ。来年もよろしくお願いするわね。

どなたさまも良いお年を。

 

Based on a True Story 2016

" (Movie) based on a true story" の但し書きを目にすると、それを見るかどうかかなり迷います。映画を見るまでの手続きがめんどくさいし、見た後も「あー、おもしろかった!」で済まないし。

まあでも、そうでなくても大抵は「あー、おもしろかった」では済まないのですが……。

 

11 月 26 日@立川シネマ

best-seller.jp

原題:Genius

監督:マイケル・グランデージ

編集者マックスウェル・パーキンズの元に、まだ無名だったトマス・ウルフの原稿が持ち込まれた。パーキンズは編集者として献身的に作品作りに打ち込み、トマスもそれに応え、第一作『天使よ故郷を見よ』が完成した。それはベストセラーとなった。

コリン・ファースジュード・ロウニコール・キッドマンガイ・ピアースローラ・リニーといったスター俳優たちのきらきらした姿が見られます。みんな好き放題、やりたいように演じている感じで、生き生きしている。「扱いにくい天才」という主題が過去のものになりつつある現在だからこそのバランスがあって、ゆっくりと見ていられる穏やかさがありました。上手く言えないのですがメモ的に書くと、時々映画を見ていて発生する、追い詰められるような、おどされるような感じと無縁で、それがとても良かった。ゆったりと考えることができました。

 

11 月 26 日@立川シネマ

borntobeblue.jp

原題:Born to Be Blue

監督:ロバート・バドロー

チェット・ベイカーがヘロインに溺れ、売人たちに殴られ顎に大怪我を負い、再起不能と言われた時期、そばにはジェーンという女性がいた。

「6才のボクが、大人になるまで。」や「ビフォア・ミッドナイト」  といったリチャード・リンクレイターとの長い共作が終わった後のイーサン・ホークは「ドローン・オブ・ウォー」といい、この作品といい、それまでは演じたことのなかったタイプの人物、演出に挑戦しており、それらがことごとく成功している印象で、ちょっとすごいと思っています。この「Born to Be Blue」は実話に材を取ったとは思えないシャープな仕上がりで、とてもおもしろい。含みやはぐらかしがなく、ただただ痛ましい。「偉大であれ」という声に、自らの不幸で応じるという倒錯があって、ひたすら悲しい。

 

 

11 月 30 日@シネマート新宿


映画『弁護人』予告編

監督:ヤン・ウソク

2013 年 韓国

1980年代、軍事政権下の韓国で、高卒から弁護士となり、税務弁護士として日々の糧を得ていたソン・ウソク(ソン・ガンホ)は、食い詰めていた若いころから世話になっていた食堂の息子ジヌが国家保安法違反容疑で逮捕されたことを知る。かつては大学生がデモをすることにすら批判的だったウソクだが、実際によく知るジヌが逮捕され、拘置所に出向いて彼の心身に拷問の後を見ることで、衝撃を受ける。その裁判を通じて彼は法を司るものとしての意識に目覚めていく。

韓国の五人に一人が見たという大ヒット映画。弁護士時代の盧武鉉元大統領が担当した冤罪事件「プリム事件」を元にした物語で、苦学の末に資格を取り、税務専門の弁護士として成功していたウソクが民主主義に目覚めていく過程を追う。

おもしろかった。ウソクが世話になった恩人の息子、ジヌの苦境を目にして一も二もなく弁護を引き受けてしまうその速度、つまり、人の尊厳がふみにじられる現場で尊厳の回復に尽力することに目覚める速度がおもしろかった。ウソクは実際にジヌの拷問の跡を目にするまでは行ったり来たりするのだけど、一度目にしたら、思考の質自体が変わってしまう。その一線を越えたら、後はもう、話はシンプル。

映画のそこここに繊細な工夫があって、観客が笑顔を浮かべて映画館を出られるよう尽力しているなと感じました。映画が「傷ついた人々」を観客として想定しているなとも感じました。

 

というわけで、今年見た実話ものは結局どれもとてもおもしろかったし、「ハドソン側の奇跡」も含めて、個性的で、後々まで色々と考えたり調べたりせずにいられないところまで全部、おもしろかったです。

 

 

 

 

 

「この世界の片隅に」

11 月 15 日@立川シネマ


映画『この世界の片隅に』予告編

エンドクレジットの後、この映画に出資した方々の名前が流れるのですが、エンドロールのときもそのときも客席から誰も立ち上がらず、灯りがついてやっとゆっくりとみんな立ち上がり、そこここで涙が止まらないような人もいて、こういう体験はなかなかできないなあ、一生でこれが最初で最後かもしれないなあと思いながら歩きました。

この映画を人に勧めるときに「反戦映画ではない」とわざわざいわなければならないというのは、あまりにもナイーヴすぎじゃないでしょうか。この映画は「◯◯映画ではない」といった条件がつくような、構えの小さなそれではないと思います。おそらくは、政治的な主張をプロパガンダする映画ではないから(気楽に)みんな見てほしいという意味でそういっているのでしょうけど、この映画を見た後ですらそんな反応が出るほど、「戦争を全力で避ける」といったことが口にしづらい状況になっているということで、こうなってしまうとほとんど戦時中にいるのと変わらないと思います。「反戦映画ではない(から評価できる)」と主張しているときに(おそらく図らず)採用しているその政治的態度を一度じっくり検討してみてほしいなと思います。

この世界の片隅に」は、これまで第二次世界大戦及び戦争そのものについてなされてきたいろんなレベルでの、厖大な「語りそこね」(例えばその中には、戦時を生きた方々について「昔の人はえらかった」という言葉で済ますということも含まれます)があって、それらの失敗をも全部包み込むような、大きな構えの映画です。反戦映画であり、冒険映画であり、恋愛映画であり、戦争が終わっても、戦争から逃れられず、戦争に傷つきつづけている私たちへの贈り物です。

 

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

 

 

 

この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)

 

 

 

この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

 

 

 

2016 年の秋は脈絡なく映画を見ていました

2016 年の秋は来る日も来る日もずっと雨か曇りで、いわゆる秋晴れを味わわないうちに冬に突入してしまいました。でも、そんなことも後で思い返せば、「えっ、そうだったけ?」てなことになってその時目の前にある気象状況に心が移っていくだろうと思っていたのです。

が、あまりにきついと忘れられないものですね。あの、くさくさする日々を今もありありと思い出します。きつかったあ。あまりにくさくさしていたので、よく考えもせず、隙を見計らっては突然映画館に赴いて見た秋映画は、もう全然脈絡なかったです。

 

9 月 30 日 @立川シネマ サメとしてのジェイソン・ステイサム

mechanic-movie.com

原題:Mechanic:Resurrection

監督:デニス・ガンゼル

2016 年 アメリカ

「メカニック」とは殺し屋ビショップ(ジェイソン・ステイサム)の呼び名である。殺し屋家業から足を洗い、音楽と酒の暮らしを堪能していたビショップの前に、かつてともに訓練を受けた幼馴染、クレインが現れる。

 ワールドミッションなので地球を縦横無尽にステイサム様が駆け巡るのだけど、どう見てもスタジオにしか見えないというか、最近ではサメ映画でしか見たことのなかった白いスクリーンをバッグにしたアクションなどを見て胸が熱くなりました。心の支えは世界の美丈夫、ジェイソン・ステイサムのサメ感。海からざっぱーーーんと出て来るステイサムがおもしろかった。今年は新作のサメ映画を見逃していたので、「ああ、今ゴージャスなサメを見ている」と思えて嬉しかったです。

 

9 月 30 日 @立川シネマ 至高

wwws.warnerbros.co.jp

原題:Sully

監督:クリント・イーストウッド

2016 年 アメリカ

2009 年 1 月 15 日、マンハッタン上空 850 メートルでエンジンコントロールを失った航空機がハドソン川に不時着した。乗客乗員 155 人は無事だった。英雄と報道された機長(サリー)、副機長(ジェフ)はしかし、ハドソン川不時着の判断が正しかったのか、国家運輸安全委員会から厳しく追及されていた。

始まった瞬間から「あっ」という感じがする。普段見えていないものを今、まざまざと見ているなという感じ。基本的にシーンとしていて静かで、青みがかった冬の映像がひんやりとしていて、サリーが大勢の人々に囲まれたり、国家運輸安全委員会で追及されていたりするときですら静謐な雰囲気で、衝撃の 208 秒が繰り返されるというのに落ち着いて、じっくり見られる。落ち着いてじっくりと見られるけれども、片時も目が離せない。すごくおもしろかった。これはほんとにみんなにおすすめ。サントラも買いました。今年一番のお気に入り。

 

10 月 7 日 @TOHOシネマ新宿 スタイルとしての不躾さ

bourne.jp

原題:Jason Bourne

監督:ポール・グリーングラス

2016 年 アメリカ

ニッキーがジェイソン・ボーンにコンタクトする。CIA が世界を監視するための極秘プログラムを走らせたこと、そしてボーンの父についてのある情報を携えて、ニッキーはボーンに会い、そいて……

初めてボーン・シリーズを見ました。とてもおもしろかった。弱気なようでいて不躾なカメラは、ちょっとふらふらした後突然人物に近づく。その不躾さは音にも現れていて、不快なノック、雑音まがいの音楽と、映像と音響の文体が一貫しているのがおもしろいなと思いました。でもその後にシリーズの最初から見てみたら、それ以上におもしろくて、遅ればせながらファンになってしまいました。

 

10 月 16  日 @立川シネマシティ 早く大人になりたい子どもたち

gaga.ne.jp

原題:Sing Street

監督:ジョン・カーニー

2015 年 アイルランド、イギリス、アメリカ

父親の失業で公立校に転校させられた14歳のコナーは、転校先で早速不可解な校則やいじめっ子への対応に追われていた。さらに両親の離婚は時間の問題で、最悪の日々。兄と一緒に見るミュージックビデオだけが楽しみだった。そんなある日、コナーはラフィナに恋をする。そして自分のバンドのミュージックビデオを撮るから、それに出てくれと話しかける。コナーは大急ぎでバンドをつくり、練習を重ねる。

 早くおとなになりたいと思っている子どもたちが主人公で、彼ら彼女らができることと言えば夢を見て、その夢を形にしていくことだけで、暮らしが貧しければ貧しいほどその夢は突拍子もないものになり、そこへ向かうのも驚くべきパワーが必要になる、ということを体の隅々まで納得できる映像の連続。おもしろかった! 中でもラフィナがとても魅力的で、ラフィナの美声がなければコナーくんだってあんなにがんばれなかったと思う。

 

10 月 27  日 @シネマート新宿 「テンポがいい」をほんの少し逸脱するスピード

 監督:チャン・ジェヒョン

出演:キム・ユンソク、カン・ドンウォン、パク・ソダム

2015 年 韓国

キム神父はヨンシンが悪魔に取り憑かれたことを知り、悪魔祓いに尽力するが、助手に次々と逃げられてしまう。そこで、神学生アガトが補助司祭に選ばれる。

ちょうどこの映画を見る直前に、BBCニュースで悪魔祓いが取り上げられていて、その中に、神父さんの次のような言葉がありました。

信仰のない人は悪魔も信じていない。しかし神を信じる人は、悪魔は存在すると知っている。聖書にも書いてある。その上で今の世の中の状態を見てみれば十分だ。これほどひどかったことはない。あまたの暴力行為は人間のやることではない。たとえばISのように。本当にひどい。

www.bbc.com

これ、事前に読んどいて大変参考になりました。映画も「信仰のない人は悪魔も信じていない」ということが前提になっていて、一件不良神学生である主人公が補助に選ばれるのも、実は信仰に篤いからこそ悪魔を感じ取れるという能力を買われてのことで、更にはそこに元々ある土着の様々な信仰が入り込んでごった煮状態のところで悪魔祓いが行われるというところにおもしろさがありました。

テンポが予想より若干程度早く、実感として、「息をつく暇もなく」よりも更にワンテンポ速いタイミングで事態が推移するので、ほんとにびっくりして「わあ!」と声を出してしまいました。主人公が賛美歌を歌うシーンなんか、何ならそれで映画一本つくれるんじゃないかというくらい美しいのに、あっという間に終わる。

好きなゴースト(1)

テレビで「蛾人間 モスマン」という秋らしい映画が昼日中からかかっていて、あやうく見るところでした。そのときたまたま時間がなくて、見ていたら約束に間に合わないというところだったのですが、「蛾人間 モスマン」の字面の引力がすさまじく、誘惑に負けそうでした。

「蛾人間 モスマン」は二年前にテレビで見ました。チャラ子たちとチャラ男たちが高校卒業かなんかにあたってキャンプできゃっきゃとやっていると事件が起こり、というか「起こし」、楽しい気分は一変、互いに互いを監視しあわなければならない状況に。主人公キャサリンはそこから逃げ出して、遠い街で新聞記者になって楽しく暮らしていたのですが、故郷で行われる「モスマンフェスティバル」を取材に行けと命じられてしまいます。のこのこと忌まわしき故郷に帰って、かつての友人たちと互いをゴーストのように眺める日々、そしてモスマン伝説が動き出す……というお話。

「なんでその流れで突然モスマン出てきた」

と思われるでしょうが、そういう街なのでしょうがないのです。主人公の子の図太さ、肝の太さ、そして体の厚み、きりっとしたラスト……おやっ、もしかしておもしろかったのかな?

捨てた故郷に帰るとお定まりの災厄が……災厄は自分か? という、そんな曲が BECK にあります。2005 年リリースの『Guero』に収録されている「E-pro」。♪ don't forget to pik up what you sow という声を果たしてキャサリンがまじめに考えたことがあったかどうか、「もう十分苦しんだ、忘れていい」みたいなセリフがありましたがな、キャサリンよ、五億歩譲ってそれを被害者がいうのならまだ聞きようもあるが……♪ I won't give up that ghost……おすすめです!

www.youtube.com

これは Homelife が「Ghost Range」というタイトルでリミックスしています。そちらもキュートでおすすめです。

生まれ育った場所を離れるのはパワーがいるので、一度出たらなかなか戻りたくないのはわかります。が、ずっと放置しているとあっちにもこっちにもゴーストが育ってわやになるので気をつけようというお話は映画でも小説でも定番です。「行って・帰る」のちょびっと複雑なやつ。

最近の映画では、「マーゴット・ウェディング」(原題:Margot at the wedding、監督:ノア・バームバック)、「ジャッジ 裁かれる判事」(原題:The Judge、監督:デヴィッド・ドブキン)が印象に残っています。

 

マーゴット・ウェディング [DVD]

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 マーゴットは、ずっと会っていなかった妹の結婚式のために故郷に帰ってくる。緊張するみなさん。緊張するマーゴット。明るくてマーゴットとは正反対に見える妹と、時折流れる姉妹らしい、共犯者のような雰囲気。冴えない妹の婚約者。マーゴットはひと目見て嫌いになる。不気味な隣人、不気味にもほどがある。関係を修復しようとやってくる夫。全部わかってるけどわかっていないことにしている子どもたち。そんな話なんだけど、時折ぶほわっと笑ってしまう。特に主人公姉妹の、お互い大嫌いだし憎み合っているけど二人で話していると笑っちゃう感じが良かったです。

「マーゴット・ウェディング」は大人が久しぶりに帰省したときの気まずい感じや、気持ちがずっとどたばたしている感じ、自分が幽霊になったような違和感などが丁寧に描かれていて、時々思い出してしまいます。

 

ジャッジ 裁かれる判事」は父と息子の関係に絞られている分だけぐっと「お話」寄り。

 家族と仲違いをしている弁護士のヘンリーに、母の死が訪れる。久しぶりに橋を渡り、故郷に戻る。タイヤショップを経営する兄、いつもカメラを回している弟、謹厳実直な判事である父。その父が裁判にかけられる事態になり、ヘンリーは彼を助けるために尽力するのだが……。

橋の向こうは別世界。ヘンリーにとって、橋の向こうはゴーストうごめく世界で、その中にはかつての自分もいる。しかし帰ってみるとそこにいるのはゴーストではなく、人間たちで、むしろ自分自身の方が幽霊であるような気がしてくるのでした。

諍いをしたまま大人になり、さらには中年になってしまった息子と父の話で、ちょっと神話めいた雰囲気が魅力。その神話めいた雰囲気で、ヘンリーが義務を負い、犠牲を払うことに説得力が加わる。今まで何度となく聞かされてきた話なのに、新鮮だし、深く納得できる不思議な映画です。

おすすめです!

 

蛾人間モスマン [DVD]

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夢がある

グランド・イリュージョン 見破られたトリック」

原題:Now You See Me 2

監督:ジョン・M・チュウ

2016 年 アメリカ

巨大 IT 企業の個人情報をめぐる不正を暴露するためショーを仕掛けたフォー・ホースメンが逆に仕掛けられてしまい、ディラン(マーク・ラファロ)は FBI 捜査官という地位を失い、追われる立場に。彼らの先手を取り、策略に落とし込んだのは、天才エンジニア、ウォルター・メイブリー(ダニエル・ラドクリフ)、目的は復讐だった。

「先手を取っているつもりが、取られていて、頭に来たのでさらにその先手を取った」というお話なのですが、現実では「先手を取る」ってそういうことじゃなくて、「ロジックを変える」とか、「前提を再検討する」とか、そういう作業をするわけですよね。でもこの人たちは律儀に同じライン上の後先を行くのです。それを馬鹿みたいだと取るか、律儀だと取るかは見る人の構え次第なのですが、私は、「夢がある」と思いました。

登場人物はほぼ全員、出てきた瞬間、イラッとさせられるタイプ。イラッとかムカムカッとか。特にジェシー・アイゼンバーグ演じるアトラスとダニエル・ラドクリフ演じるメイブリーはファースト・カットから不安になる。アトラスはかりかりしているし、メイブリーは不気味すぎる。でもなんとなく、結局のところいい奴そう。そんな感じ。そういう安心感があるのは俳優の力量やムードもあるけれど、何よりこの映画のベースにシニカルさがないからだと思う。大人のシニカルにはもううんざり、っていう人には楽しい映画なのでは。

今目に見えている世界とは別のロジックで動く人々がいると感じること、いつも自分は誰かに見守られていると信じること、それから、その悲しみはいつか癒されると信じること。そういう素朴な水準で夢がある話。

続編ものによくある、話がこんがらがってしまって、ひたすらめんどうになる感じもなく、話が早い。豪快で素朴。登場人物たちは幼いけれど真剣。

これはこれで、いいんじゃないかな。

「この登場人物はいてもいなくても話に影響ないな」という人物が数人いたり、話を動かす主要登場人物に女性がいなくて絵面がむさ苦しかったり、二回見ると粗が見えてきそうだったりするのが強いて言えば残念なポイントだけれども、ちょっと映画館でゆっくり休んで頭の中じゃぶじゃぶ洗いたいっていう感じで見るとなかなか良いのではと思います。

夏は青春映画を見ていました

7/13 (水)

原題:Dessau Dancers

監督:ヤン・マルティン・シャルフ

2014 年 ドイツ

1985年、東ドイツ。テレビでふっとブレイクダンスを目にしたフランクはあっという間に心を奪われる。同じように「踊ってみたい」と言い合う友人たちとトライを重ねて、路上でダンスを踊るうち、仲間も増えた。それが「非社会主義的」だとして摘発を受け、路上でのダンスが禁止されていく中、フランクのチームは政府公認の芸術集団として踊る道を選択し、人気を博していった。

ザ・青春映画。「大人はわかってくれない」、漠然とそんな気がしていた主人公たちが「そういう問題ではありませんでした」と気づいていく終盤が爽やかで良かったです。

 

原題:ヒメアノ~ル

監督:吉田恵輔

2016 年 日本

清掃会社で働く岡田は、同じ会社の先輩にせがまれて、彼が好きだという女性に声をかけた。しかしその女性は近頃ストーカーに悩まされており、その相談を聞くうちに岡田は彼女と付き合うことに。

一方その頃……。

これはこれでザ・青春映画……。うああああ、としか言えない。すごい。これを見たら基本的にもう、一生麦茶は飲めない。おすすめですが、麦茶が飲めなくなります。

 

8/5 (金)

原題:暗殺 Assasination

監督:チェ・ドンフン

2015 年 韓国

1933 年。親日派暗殺のため上海に招集された韓国臨時政府の精鋭 3 人。しかし暗殺計画は日本軍に漏れており、臨時政府警務隊長ヨムに密偵の疑いがかけられる。ヨムは密偵の汚名をそそぐため、軍隊にも臨時政府にも属さない殺し屋を雇う。

冒頭のヨムの華やかさ、まっすぐさに 2 時間後、胸をかきむしられる。とにかく、最初から最後まで見る人々を慰め、楽しませることに尽力した映画で、あっという間の 2 時間。「見る人々」として、私たちも想定されているだろうと思える、しっかりとした倫理観に裏付けされた、ポップな存在感をたたえた映画。

 

8/14 (日)

原題:The Trust

監督:アレックス・ブリューワー&ベン・ブリューワー

2016 年 アメリカ

ウォーターズは猫と二人きりで暮らす日々に慣れず、警察の仕事にも情熱を失い、ぼんやりとした日々を送っていた。そこにドラッグ絡みの、表に出せない大金の情報を掴んだ同僚のストーンがその金を奪い取ろうと持ちかけてくる。ウォーターズは聞かなかったことにできず、ずるずると……。

近年、悲惨な仕上がりの続いたニコラス・ケイジもので久しぶりにおもしろかったです。相手役はイライジャ・ウッドで、全くバディ感を発生させないこの二人組がずさんな計画を立て、だらだらと沼に歩を進めていく様にぐらんぐらんするような気持ちを味わいました。イニシアチブを取り合う……わけでもないけれどなんとなく、主導権があっち行ったりこっち行ったりするうちに、なんと……!

 

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「ブリーダー」

原題:Bleeder

監督:ニコラス・ウィンディング・レフン

1999 年 デンマーク

レニーが働くレンタルビデオ店にレオがやってきて、妻が妊娠したと言う。レニーはおめでとうと言い、レオは礼を述べるが、子どもが生まれることに対する不安から、次第に言動がおかしくなっていき、妻に暴力を振るい出す。妻の兄ルイスはそのレオに激怒し、さらに暴力を振るう。それはとどまるところを知らず……。

一方、そのころレニーは……。

友だちが大変なことになっている間、レニーは好きな女の子ができて、彼女に声をかける、かけないで大騒ぎし、かけたらかけたでデートに誘う、誘わないで右往左往、誘ったら誘ったで、デートに行く、行かないで困惑しきっていました。でもレニーにとってはそれも大冒険。それがレオたちのバイオレンスな成り行きとあまりにかけ離れているので落差が大きいけれど、でもレニーの話はレニーの話なりにハードなのです。

 

原題:華麗上班族 Office

監督:ジョニー・トー

2015 年 香港・中国

株式上場を控えたジョーズ & サン社。新入社員のシアンとケイケイは日々あたふたと業務を学んでいる。チャン社長はホー会長の愛人との噂だが、副社長デイヴィッドとの関係も噂になっている。デイヴィッドは実は横領に手を染めており、上場前にそれをなんとかしようと経理のソフィに近づいていき……。

と、全くフレッシュさを感じないあらすじを書いてみましたが、全編これが不思議なセットの中で展開するミュージカルなのです。ほとんどのセリフが歌で、そのため、内心がばんばん、高らかに歌いあげられます。ジョニー・トーの映画では異例中の異例。登場人物の内心が聴けるなんて。溢れる愛と優しさ、情熱、そして後悔、憐れみ。素敵だったわ。

 

8/18 (木)

原題:シン・ゴジラ

監督:庵野秀明樋口真嗣

2016 年 日本

東京湾アクアラインでトンネル崩落事故が発生し、政府は情報が得られず対応が取れないでいる。矢口内閣官房副長官は巨大生物の存在を口にし、対応を求めるが、黙殺される。そんな中、謎の巨大生物が蒲田に上陸した。

子どものころ味わっていた、自分は到底生きていけないだろうという不安を再び味わいました。大人になっていて良かった。じゃなかったらこの映画をきっかけにひきこもっている。すごく人気のある映画で、その盛り上がりに乗れないのは残念ですが、そういうこともある、という気持ちです。あれが蒲田の上陸したときのルックスは好きでした。

晩夏のヘビーローテーション

I hate the world today,
You're so good to me I know,
But I can't change.

と、始まるこの曲を YouTube で見つけて、「あれっ、なにこれ!」と気に入って毎日毎日聞いていました。

Room Eleven のデビュー・アルバム『Six White Russians and a Pink Pussycat』は 2006 年リリース。それが、経緯はわかならいのですが、2007 年に数曲のカバーとライブ録音を加えて再発売されたのですね。「Bitch」はその時のバージョンに収められている曲。

2006 年の最初のバージョンを持っているので、あらためて買うのも何だしな、と YouTube で我慢するるもりだったのですが、むくむくと、夏の夕方のこの部屋で、ちゃんとしたスピーカーで聞きたい! という気持ちが抑えられなくなり、中古盤を購入することにしました。

ウィ・ラヴ・ルーム・イレヴン(初回限定盤)

ウィ・ラヴ・ルーム・イレヴン(初回限定盤)

  • アーティスト: ルーム・イレヴン
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2007/08/08
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" I hate the world today, You're so good to me I know, but I can't change." といった言葉はこれまで何度も何度も聞いてきたし、そういう気分になることも数限りなくあったけれども、これほどすーっと、聞き入れたい、そばにいたいような気分になる "I hate the world today" は初めて。

このバンドは今はもう解散しているのですが、ヴォーカルのヤナ・スクラ(Janne Schra)はソロで活動中で二枚のアルバムを出しています。

 

この人の、寂しそうだけど機嫌の良い感じが気にいって、この夏は狂ったように聞いていました。

秋になっても聞くでしょう。 

 

Janne Schra

Janne Schra

 

 

ポンゾ

ポンゾ

 

 

コーヒー映像千本ノック (7) コーヒーカップが待ち構えている

『RONIN』

原題:RONIN

監督:ジョン・フランケンハイマー

1998 年、アメリカ

パリ、モンマルトル。夜更けにサム(ロバート・デ・ニーロ)は長い階段を降りていた。階段の先にはパブ。出入りする人々の慕わしげな姿が見える。サムは裏手にまわり、ドアの位置を確認すると拳銃を隠した。パブにはディアドラ(ナターシャ・マケルホーン)、ヴィンセント(ジャン・レノ)らがいた。そこにスペンス(ジョーン・ビーン)、グレゴール(ステラン・スカルガルド)、ラリー(スキップ・サダス)らが加わり、ある人物から銀色のケースを奪ってほしいという依頼を聞かされる。経歴も本名も互いに知らない、国や組織といった雇い主を持たない 6 人はアタッシェケース奪取のために共闘するのだが……。

日本での公開は 1999 年。1999 年 というと、「スターウォーズ エピソード 1」が公開された年。大騒ぎだった! それに「マトリックス」もあった。小さい子たちがキアヌ・リーヴスのモノマネを路上でしていたなあ。「ファントム・メナス」、「マトリックス」、「サイコ」、「シックスセンス」が同じ年公開なんだと思うと「シックスセンス」の時の流れと無関係な感じすごい。それに「メリーに首ったけ」、「バッファロー '66」、「ラン・ローラ・ラン」、「シュウシュウの季節」、「ゴージャス」……この年もこの年なりに映画界は大騒ぎだったのですね。

そして、完全に見逃していた「RONIN」、「好きだと思う」とDVDを貸してくださった方がいてじっくり見ることができました。大好きでした。

この映画は前半後半でがらっと様相が変わる。前半は互いを知らないまま依頼を受けて、計画し、実行するところまで。後半はその計画が失敗し、事態の一部が露見し、主人公たちが真相究明に向かう。前半では一般市民に犠牲者が出ることなく物事が推移し、そこから彼らの元々の職業が窺い知れる。後半はそれがぐらっと崩れて、たまたまそこにいただけの人々が銃弾に倒れる。しかも舞台が観光地と来ているのでとても怖い。

さっき、「主人公たち」と呼んだのはロバート・デ・ニーロ演じるサムと、ジャン・レノ演じるヴィンセント。サムは、ほとんど内心を見せないし語らないので、最後の最後まで何を考えているかわからない。ヴィンセントはこのサムと語り合わないまま友情めいたものを結び、互いに飲み物や煙草の火を分けあい、そして互いの命を助けるに至る。誰が何者かわからないこの映画にあって、サムとヴィンセントの連帯は、唯一観客がほっとできるところ。ヴィンセントとサムの、言葉よりはるかに雄弁な目の表情に何度もほっとした。特にヴィンセントはただ一人、内心が窺い知れる人物で、言葉少なな彼がぽつっと漏らす「助かったよ」「恩人だ」といった本音は、真っ暗闇の中に据えられた白い巨石のような役割を果たす。コーヒー代を彼が払うと言い、次は俺が払うとサムが言う場面には感動してしまった。

前半の、作戦場面で印象的な役割を割り振られているのがコーヒー。

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ポットの中身はコーヒー。このコーヒーによって、能力が低く作戦にとって不利益をもたらす人物と、作戦に紛れ込んだ敵が炙りだされる。サムは並々と注いだコーヒーカップで相手を挟み撃ちにして、確認する。そして自分にとって信用できる人物を絞り込み、生き残ろうとする。

当然のことながら、事態が大きく動く後半ではコーヒーの場面はぐっと減ってしまう。

撃たれたサムとヴィンセントが一時潜伏する場所で飲んでいるのはおそらく紅茶だったと思う。

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ティーカップだから。

こうなってくると、コーヒーを飲んでいたあの頃が懐かしい。サムはまだ撃たれていないし、シルバーのケースはあるべき場所にあった。

コーヒーが雄弁に語る場面は後半にも、一箇所ある。この場面がとても素敵だ。

長い階段、路地、高低差の激しい道、Y 字路、コーヒー、森に住む偏屈な老人、カーチェイスそしてフィギュアスケートと見どころ満載。これで猫が出てきたら気絶しそうっていうくらい、私の好きなものがてんこ盛りで、思わず二回連続で再生してしまいました。