プール雨

幽霊について

バウスシアターで爆音映画際

第四回爆音映画祭に行ってきました
 

 
昨年は開期中何度か行けたのですが、今年は残念ながら一日だけの鑑賞になりました。
 
昨年はバウスシアターから長い行列が出来ている日なんかもあり、整理券を買うにも一苦労でした。今年は前売りがあったり、会場以外でも整理券を配布したりして、この点が解消されていました(初日はどうかわかりませんが)。10:30 から整理券配布が始まって、私が行ったのが 10:30 過ぎ、全然並ばずにすぐ買えて、でも番号は 80 番台という感じでした。並ばないで済んだので良かったです。
 
爆音のレベルですが、大きいといってもスピーカーからの音だけなので、ライブハウス等で聞く生の轟音なんかに比べると全然大人しいものです。それにやはり現実ではなく映画だから、もともとかなり音が取捨選択されています。したがって、それで耳がおかしくなるようなことはありません。
でも、ぶんぶん低音が胸に響く中で見ると、音の設計がしっかりしてる映画とそうでもない映画の差が大きく出ると思います。私が今まで見た中ではうるさいと感じた映画は一つもありませんでしたが、邦画で、俳優の声が聞き辛いなというのはありました。大きな音だと、訓練の甘い人の声は雑音が多くて台詞が聞き取り辛くなってしまうのかもしれません。
ハリウッド製に限らず、どこの国の映画を見ても感じるのですが、俳優の身体の鍛え方が、日本だけちょっと別の方向に行っているような気がする時があります。特に大きな音で声を聞くとそう思います。日本の映画やドラマではぎょっとするほど細い男女が滑舌悪くぼそぼそ不機嫌そうに喋ってる場面が多くて、これはこれで文化かもしれないけれど、異様は異様だよなあと。
もちろん中には、きちんと鍛えている人も散見されます。でもそうすると、今度はその人の声だけが浮いて聞こえたりする。大河ドラマなんかを見ると、声のレベルと質がばらばらでびっくりします。
 
外国製の映画でそういうことが皆無かというとそういうわけでもないだろうけど、少なくとも爆音で見た「ローラーガールズ・ダイアリー」(原題 "whip it" 2009 ドリュー・バリモワ)では、そういうことが全くなかった。とても楽しい爆音体験だった。
色んな体つきの俳優たちがぶつかりあって起こる音、ローラーシューズから繰り出される恐怖すれすれの心地よい音、多様だけれども訓練しつくされた俳優たちの良い声、きっちり計算された背景の音、楽しい音楽。
大満足。
主人公ブリスを、くすぶって硬くなっている今の状況から "whip it" するために、まず本人が格闘し、それを親友がサポートし、最後には家族が背中を押してやるという実にシンプルな物語。ですが、ちょっとしたエピソードが全て生き生きとしていて、素朴でありながら、とっても豊かなドラマに仕上がっていました。
私はブリスが酔ったマギーの介抱をする場面が何とも言えず好きです。汚いんですけど。根っからともだちなんだなっていう感じがして微笑ましかった。
 
それから、「This is it」(2009 ケニー・オルテガ)も見ました。マイケル・ジャクソンの遺作となってしまった今作ですが、その部分はとりあえず置いておいて、バックステージものとして、すごくわくわくしました。大勢で舞台を創り上げていくときの大きな苦難を伴う、さらに大きな喜びがそのまま映っていて、感動的でした。マイケルがスタッフたちに、「がんばろう。観客を非日常の世界についれていくんだ。想像もつかないものを見せるんだ。忍耐と理解をもって。がんばろう」というのが印象的。これまた、普遍的で、素朴だけど、太いテーマ。
さらに、ダンサーたち、演奏家たちの、ストイックに訓練しつくされた身体の美しいこと。均整がとれているというより、その身体が演奏のために、あるいはダンスのために、最良の形でメンテナンスされているという感じ。だから太っている人もいれば痩せている人もいる。いや、正確に言うと、痩せている人はいない。あまり脂肪がついていないのはみんな一緒なんだけど、筋肉の付き方が人それぞれで、「がっしり」という印象の人もいれば「むっちり」とか「ぴしっ」とか色んな人がいる。
その中にほっそりしたマイケルが入るとすごく目立った。ほっそりした身体から繰り出される軽々とした踊り。やはり雲の上を歩くよう。リハーサルだからなるべく力を抜いて軽く踊ろう、軽く歌おうとするんだけど、時々本気出しちゃう。華やかだった。
世間では色んなかたちでああだこうだ言われて来た人だったけど、踊って歌ってる本人を見ると、随分ストイックな生活をしてきたんだなと思いました。あの年齢であの身体とダンスを維持する為に、どれほどストイックな暮らしを続けてきたんだろうか。
そしてやはり、爆音で「This is it」を味わうとよくわかるのが、「音楽は静かだ」ということ。"Black Or White"や"Human Nature"、"Man in the Mirror" といった華やかな楽曲が演奏されるときの、音と音の間の隙間の広さに緊張したし、わくわくしたし、楽しかった。
 

Whip It

Whip It

Michael Jackson's This Is It - The Music That Inspired the Movie

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