プール雨

幽霊について

華やかで、重い。流れない。

ちょっと前、権藤知彦 ソロ・プロジェクト「Euphobia 001」に行ってきました。
小林賢太郎の舞台『Sweet7』などの音楽も手がけた anonymass のメンバーで、近年は YMOThe Beatniks のサポートメンバーとしての活躍が目立つ一方、「道との遭遇」等、様々なかたちでイベントを仕掛け、若手のプロデュースも精力的な、大変に魅力的な音楽家です。

蓮沼執太×三浦康嗣× ... -twilight race @ 道との遭遇

ギンガムチェックの小鳥

THE BEATNIKS - シェー・シェー・シェー・DA・DA・DA・Yeah・Yeah・Yeah・Ya・Ya・Ya @ 森、道、市場 2017
数々のバンドのサポート、編曲等を手がけてきた彼がいよいよソロプロジェクト始動ということで、わくわくと出かけてきました。
ゲストに高野寛、くもりな、Jimanica、フラメンコギターの今泉仁誠、木村仁哉、佐藤秀徳。小さなステージの上に最大で 9 人のメンバーが乗ってのとても楽しいライブでした。
 
くもりなは若いバンドで、2005 年より活動を開始して、2007 年にメジャーデビュー、2009年には一枚アルバムを出していて、今度また新しいアルバムが出るそうです。初めて聴きましたが、ライブ映えのする、堂々とした、良いバンドでした。北京語の曲を一曲披露していて、それが素敵だったなあ。北京語だったと思うんですけども。多分。
 
中盤には今泉仁誠さんのフラメンコギターと権藤知彦ユーフォニアムだけで YMO の Happy End をカヴァー。これがとーっても素敵でした。もともと、この曲をやるつもりだったのではなく、古いスペインの曲をセッションしてみたところ、これは教授の Happy End に合うのではないか、という話になり実現したとか。そして、その元となった、13世紀に編集された古いスペインの古謡をギターとブラスだけで聴かせてくれました。
 
中盤を過ぎて、高野寛が「待ちくたびれた」「待ち時間長いから風呂入って来ちゃった」などと言いながら登場。ぱっと会場が明るくなる。権藤知彦も「なんかほっとしますね」と。
曲は「See You Again」、「夜の海を走って月を見た」、「Perspective」、「How?」、「Another Proteus」(多分)、「雪解け」など。
記憶で書いてるので、ちょっと間違ってるかも。「See You Again」と「夜の海を走って月を見た」の間になにかあったっけ……?
まあ、細かいところはともかく!
「夜の海を走って月を見た」というのは、高野寛の初期の名曲なのです。
この曲をトランペット、フリューゲルホルン、チューバ、そして歌のみの編曲で披露してくれました。
このアレンジがほんと良かった。夜の海に浮かぶ月が見えるようでした。寂しくて、切なくて、でも華やかで、とっても素敵! このとき、「金管は音がどれほど大きくてもなんか優しいから好きだ」と感じました。
演奏がおわるやいなや、高野寛の口から「かっこいい」「このアレンジで録音しよう」と。ほんとに録音してほしい。
「Perspective」は教授の還暦祝いにつくった非売品の CD から、権藤知彦高田漣高橋幸宏の三人で編曲したバックトラックに乗せて
のレアバージョン。高橋幸宏に代わって高野寛がボーカルを、ギターには高田漣の代わりにくもりなの人が入って。彼はステージに上がってからも壁に向かって必死で調整、練習していました。正直、その姿が大変におもしろく、MC そっちのけで見てしまいました。
この「Perspective」もよかったです。やっぱり権藤知彦がからむと不思議な華やかさが出ます。それでいながら甘さは三割減みたいな感じで、とてもおもしろい Perspective でした。
pupa の「How?」をはさんで、今度はステージ上にアボリジニの伝統楽器ディジュリドゥが登場。木製なんだけど、発音方法から金管に分類されるという不思議な楽器。ユーフォニアム・フリューゲルホルン奏者で、プログラマーで、ディジュリドゥも出来る、権藤知彦ディジュリドゥをやり出したのは今に始まったことではなくて、元々吹いていて、まだプログラマー「志望」だったころに、高野寛のライブにサポートメンバーとして呼ばれたときにもこの楽器を披露したとか。かっこよかった。曲は「Another Proteus」。
 
アンコールは盛大な拍手をすぐに終わらせて、あっという間に「じゃ、一曲だけ」と言って細野晴臣の「終わりの季節」を全員で。ここではピアノを弾いてました。
 
最初から最後まで権藤知彦! っていうのは今回が初めてで、不思議な作家だなーと改めて思いました。
ゆったりしていながら、きっちりしていて、軽やかでありながら、重厚で。華やかで、同時に厳しい。甘さはあまりない。可愛らしさはある。直感として、「このひとの音楽は流れていかない」というイメージを持ちました。
pupaのライブに行くと、ひとつ不思議なことがあって。観客の歓声が、
「知世ちゃーん!」(野太い声)
「幸宏ーー!」(野太い声)
「権ちゃーん!」(黄色い声)
なんですよ。高野寛堀江博久高田漣なら黄色い声もわかるんだけど、何で? と不思議に思ってました。
その謎は、何となく今回解けました。