雨降り

幽霊について

「道との遭遇」ヒガシトーキョー音楽祭 vol. 2 通称「道フェス」に行ってきました


 
上野、不忍池水上音楽堂にて開催された道フェスに行ってきました。
途中何度も、ああ、この楽しさを誰かと分かち合いたい! と強烈に感じたので、次回は誰かと行きたいです。
 
YMO のサポートや anonymass、JOYZ 等々で活躍中の権藤知彦によるプロデュース。フィギュアスケートでたとえると、売れっ子振り付け師がショーをプロデュース! みたいなことです。いかにも楽しそうでしょう。これがほんとに尋常ならざる楽しさで。
まず、会場が素敵。野外と言っても半透明の屋根がわたしてあって、ここからさしこむ 5 月のさわやかな陽光がとてもきれいだった。鳥がごくごく当たり前に行き交って、ああ、5 月なんだなあ! という感じ。不忍池の上を渡ってくる風もとても気持ちよく…………ちょっと寒かった。この日東京は、5 月とは思えない肌寒さで、みんなわりと防寒ばっちりな体勢で臨んでました。不忍池周辺って、夏でもすこーし涼しいくらいなので、夜は寒くなるだろうなあと覚悟して向かいましたが、それでもちょっとびっくりするくらい寒い瞬間もありました。朝、運営から「寒いですよー」みたいな tweet もあったみたいですね。かわいいカーディガンを着てる人がたくさんいた。
 
客層は乳幼児からおじいちゃん、おばあちゃんまで。
私の目の前を3歳くらいの女の子が走り回っていました。お母さんは中腰でおいかけ……腰は、だいじょうぶだったんでしょうか。
ぼんやりしてたら、まわりをおじさまたちに囲まれ、とっても渋いシートでゆったりと見ることが出来ました。6 人定員のシートに 4 人で。立ち見も出た中で、ほんとすみません。前後のシートはぎゅうぎゅうだったのに、なぜか私のシートだけゆったりと。なんでかなあ。絵面かなあ。
昼から夜にかけての長丁場のライブなので、出入りは自由で、みんな、セットチェンジのときに近くの屋台とかマックから食糧を仕込んできてました。私の近くに座った男性二人が、プリン的なものをどこからともなく買ってきて、それをもそもそ食べながら、くもりなの曲を「きれいな声だなー」と聞き入っていたのが印象的でした。ドンレミーっていうおかしのメーカーのアウトレットショップが近いのでそこで買ったのかな。
 
事前に公開されたタイムスケジュールはこんな感じ。

12:30 松谷冬太×小山田圭吾×権藤知彦
12:50 JOYZ
13:10 今泉仁誠グループ
14:00 くもりな
14:30 三浦康嗣(□□□)×蓮沼執太×木下美紗都
14:55 湯川潮音
15:25 高野寛
15:55 坂本美雨
16:25 LEO今井
16:55 ギャランティーク和恵
17:25 持田香織
18:00 細野晴臣
18:45 小山田圭吾×U-zhaan×稲田進×権藤知彦
19:10 スカイツリー合唱団

 
まず、総じて歌がよく聞こえるライブでした。
技術的なことはよくわかりませんが、歌がよく聞こえるライブで、それが最初から最後まで一貫してました。「歌が大きい」わけではないのですが。つぶつぶと全部よく聞こえる中で、歌が聞きやすかった。それはフラメンコでも歌謡曲でもロックでもそして合唱でも同じで、全部、はっきりまっすぐ歌が聞こえて気持ちよかったです。いろんなタイプのボーカリストがいたんですけども、みんな良かったです。
 
序盤のハイライトは今泉仁誠グループのフラメンコで、どうなっちゃうのっていうくらい盛り上がりました。フラメンコと言ってもありものを台にそのまま乗っけるんじゃなくて、「道フェス」ヴァージョンで、ドラムと金管が入って、新鮮にかっこよかった。先日映画「フラメンコ・フラメンコ」を見て感銘を受けたところなので、今年はもすこしフラメンコや、南欧の音楽を聞いてみようかなと思いました。
くもりなは先日セカンドアルバムが出たばかりの若いバンドですが、とても堂々としてました。□□□の三浦康嗣をゲストに迎えて披露された「1978」、良かった!
湯川潮音は大胆に新曲ばかりを披露。これがなんだか不思議とすーっと耳に届いて、ちょっと泣いてしまいました。今回、初めて彼女の歌を生で聞けて、ほんとに良かった。ユーストなんかで動いているところを見て、なかなかおもしろそうな人だなとは感じていたんですけど、実際目の前に生身で立たれると、飄々として、それでいて強い、かつ、おかしみのある独特な風情に恋をしてしまいました。
 
中盤で華のあるところを見せてくれたのが高野寛金管と歌だけで「夜の海を走って月を見た」披露。感動。その後、デビュー曲の「See You Again」を。広い会場の隅々まで届く声なのに、訥々と心情を吐露するような歌い方で、これまた素晴らしかった。そして、彼のライブではおなじみの「夢の中で会えるでしょう」は、コーラス隊の完璧な振り付けも楽しく大盛り上がり。ここまででも十分楽しい素晴らしいライブなのに、ラスト、湯川潮音を招いて披露された「終りの季節」が! あまりに感情を強く揺さぶられて、一番が終わったところで客席から大きな拍手が! この曲が始まるとき、湯川潮音細野晴臣さんの曲だからと、付けひげをして現れ、付けひげをしたまま歌い、間奏でつけひげをべりっとはがし、客席に投げた! そんな中で人々は歌で感動して途中で拍手した!
 
その後はもう一気呵成に個性の強いメンバーが個性の強いパフォーマンスを披露して(坂本美雨が「Wonder Trip Lover + Ballet Mecanique」とか、小山田圭吾の演奏で「ガラスの林檎」とか)、会場は静かに何かが狂っていき、日が落ち、コウモリが入ってきて、暗い照明の中、細野晴臣が登場し、信じられないほどすばらしい演奏を披露してくれた。かっこよかった。同じメンバーで似たようなセットリストでこれまでにも聞いてきているんだけど、この日はとりわけ素晴らしかった。とても強い、じんと来る、ロックな演奏だった。ああ、香港ブルース!
 
松谷冬太×小山田圭吾×権藤知彦、三浦康嗣(□□□)×蓮沼執太×木下美紗都、といった共演の中でも、細野さんの後の、小山田圭吾×U-zhaan×稲田進×権藤知彦のパフォーマンスは白眉だったし、豊かで怖くて最高だった。小山田圭吾のギター、U-zhaanタブラ、稲田進のフラメンコ、権藤知彦ディジュリジュ! ステージ上でいくつもの複雑な道が出会って一つになってまた分かれているのが見えるようだった。
 
ラストは□□□の最新アルバムより「合唱曲 スカイツリー」を、この日の出演者で合唱。発してしまったらそれは二度と「なかったこと」にはできない、「言葉を口にする」ということの重さと、だけどそこにしか可能性はないという厳然たる事実と、それらを全部引き受けて言葉を発する人の強さともろさと、賢さと愚かさと、解放感と暴力性を受け止めて、終幕となりました。
最後、権藤知彦が主宰として短く「ありがとうございました、また来年」ときれいなお辞儀をして、実にきれいに、ほんとに終幕。

ぞくぞくしました。
 
おわり
 
 
 

名前のない日。

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泰安洋行(紙ジャケット仕様)

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マンパワー

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