プール雨

幽霊について

コーヒー映像 (5) コーヒーを飲ませてもらえない映画としての『L. A. コンフィデンシャル』


 
★★★『L. A. コンフィデンシャル』(1997 カーティス・ハンソン) ★★★
 
(多少、ネタバレに配慮していますが、結局バレています)
 
『L. A. コンフィデンシャル』と言えば「ロロ・トマシ」とメガネスーツしか思い出せない。
 

(参考:「メガネスーツ」)
 
それではちょっとさみしいので、久しぶりに見てみました。
二度目ですが、すんごく、おもしろかったです。二度目なのに、三度ほど本気で驚きました。
ちなみに先日、全然別のクライム・アクションを見たら、刑事さんが張り込みのときにパン的なもの(ドーナツ?)と牛乳状のなにかを食しており、その後居眠りをしていたので、やはりコーヒーか紅茶、なんなら緑茶などを飲めばいいのではないかなと思いました。
アメリカの映画やドラマを見ていると、よくおまわりさんがコーヒーショップで休憩して、ドーナツとコーヒーを召し上がっていますが、この『L. A. 〜』でもまず、そんな話が出てきます。あるおまわりさん行きつけのナイト・アウルというコーヒーショップ襲撃されるのです。
現場はこちら。奥の方の床に、血の跡が見えると思います。誰かが撃たれて、ひきずられたんですね。この画像に写ってはおりませんが、被害者は六人。うち一人は刑事、ステンズランド。行きつけだったようです。別のショットで、彼が飲みかけのコーヒーが映っています。
 

 
第一発見者はパトロール中の警官。コーヒーを飲もうと思って立ち寄ったところ店が閉店していたとか。
 
                     \ I stopped for coffee. The Nite Owl was closed……/ 

 
この映画で私は "stop for coffee" という表現を身につけました。
写真右のおまわりさんは「コーヒーでも飲も」と思ってたところに殺人事件ですから、大変な衝撃であったと思います。
ステンズランドが撃たれた跡であろう壁のそばには小さなテーブルがあって、そこにはコーヒーカップが二つ、片方に口紅がついていました。
このことにバド(ラッセル・クロウ)が気づいたのは映画も中盤を過ぎてからでしたが、これにより一気に真相に近づきます。ステンズランドが一緒にコーヒーを飲んでいた相手を特定、その家の床下から……を発見し、ある人物とステンズランドの関係を知るに至ります。
このことにジャック(ケヴィン・スペイシー)が気付き、……に……したところ、どう見てもいれてから何時間も経っているであろうポットのコーヒーをカップに注いでもらい……で、……で結局、……わけです。(「……」のところが気になる人は本編を御覧ください)
それでこの、ジャックが、いかにもまずそうなコーヒーをぱっと受け取って、即、口に持ってくのが泣ける。
コーヒーは酸化すると激しくまずくなるので、いれたらすぐ飲むのが鉄則なわけですが、現実、家ではこのようにポットにどかっといれて、何の気なしに飲み続けるわけです。あげく、レンチンしたりして、「まずいなー」と思いつつ、ごくごく飲む。
でもそれって、自分で飲むものだからで、人には飲ませないですよね。それがたとえ招かれざる客だとしても。
この、ジャックがまずいコーヒーを差し出されて、何のためらいもなく受け取って、即口に持っていくシーンは何度見ても胸を突かれる。
どれだけジャックが……を……しているか、もうすっかり汚職などには慣れ親しんでいたりする、刑事としては擦れてしまったジャックが、そこだけは疑いもしなかったと思うと。
 
初見時、20 代で、仕事で失敗ばかりしていた自分はエドガイ・ピアース)に感情移入していました。多分仕事を通じて、自分のゲスさや下品さに毎日出会っていて、そのことを耐え難く感じていたのでしょう。それで初見時、彼が初めてリン(キム・ベイシンガー)と対峙するシーンをよく見れていなかった。大人になって、落ち着いて自分の部屋で見ると、リンにじっと見つめられたエドがきょろきょろと黒目を動かすのがちょうおもしろい。そしてその後の展開は俗にいう「うしろ、うしろ」というものなんですが、「あーあ」と思うだけで全く心が揺れなくなってしまいました。
それよりむしろ、警察署内で二人が再会して、お互いあざだらけの顔をして対面するところがとても印象深かった。お互いに、言うに言えない、相手を思いやる気持ちを抱えつつ、距離を取り合うやりとりが素晴らしかった。
映画も小説も、チャンスがあったら二度見ると良いのだなあと思いました。