プール雨

幽霊について

リード・マイ・リップス、思い出のマーニー、バリーリンドン

リード・マイ・リップス [DVD]

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見下したり見下されたり、利用したり利用されたり、さもしさや卑しさの中で、本人たちの思惑とは別の方向、別のタイミングで育まれていく何か。主人公たちは同じ空間、それも至近距離にいながら、ほんとのところで出会えておらず、別の位相からあてずっぽうに言葉や態度を投げかけているだけ。その中で、どんどん思わぬ方向に出来事が転がっていって……!
こわくておもしろかった。おもしろかったし、とても好きな映画。(DVD)
 
  
夏の初めにぴったりの、素敵な怪談を見ました。
二人の少女が出会いながら、時々調整がうまくいかなくて互いのチューニングがずれていってしまうところとか、主人公たちがさらされる様々な暴力がはっきりと「怖いもの」として描かれているところとか、とてもおもしろかった。
大人たちの群れが久しぶりに怖かったです。煙草の煙とか、お金も。
これを見ると、自分が普段映画を見る時、いかにチューニングを調整をしながら見ているかよくわかる。受信するために努力を重ねて映画館の席に座っているんだなあ。でもこの映画はそういうチューニングが不要な、とても身近な話でした。
主人公の二人のような鬱屈を抱えているか、あるいはかつて抱えていた人、そんな子に話しかけてみたかったけどできなかった後悔を抱えている人など、そういう人たちのそばにあるような映画で、「誰に向けて語りかけるか」というところがはっきりしてるのがこの監督の良さだと思います。
(劇場)
 
 
バリーリンドン [Blu-ray]

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すべての場面が一枚絵として完璧な構造で始まり、とにかく美しい。
昔の説話ものを読んでいるような感じで、見ながらジャッジしなくていいのがらくちん。(DVD)
 
 
テレビで「もののけ姫」を見ました。怖いシーンの連続で「こわー!」と叫んでいました。
あの映画でもサンとアシタカは位相の違う人で、至近距離に居はしても、なかなか出会えない。それでラストにアシタカが彼女に「会いに来るよ。ヤックルに乗って」って言うのがなかなかいいなあと思って。「何度でも出会い直そう」ってアシタカは言うわけですけど、サンの方は「無理だよなー」と思ってて、でもそこで「ヤックルに乗って」って言ってくれると、ちょっと彼女の気が楽になるという。
そういう、「同じ空間にいるんだけど、実は出会えてない」みたいなことを描くのに、映画はぴったりなんだなと思った今月でした。