プール雨

幽霊について

アサルト13 要塞警察、ルビー・スパークス、her / 世界でひとつの彼女、FIRESTORM 風暴

11/21 (金)「アサルト13 要塞警察」(監督: ジャン=フランソワ・リシェ)(DVD)

アサルト13 要塞警察 [DVD]

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吹雪になった大晦日、イーサン演じるジェイクはデトロイト 13分署で数名の同僚とともに年を越すことになった。そこに、大雪のため容疑者を護送する車が避難してきた。中には警官殺しで逮捕されたビショップもいた。……で、色々あって大変なことになって、武装集団に取り囲まれた 13分署は絶体絶命、中にいるのは精神科医と、若い女性刑事、今ひとつはっきりしない老刑事、護送されてきた容疑者のみなさん。誰も頼れない。……というときの我らが主人公はといえば、鎮静剤的なものをぱくっと飲んで目が泳いだり、「どうするんだ」って聞かれて、" I don't know.” と答えたり、机で酒を飲んだり。
実はこのジェイクは少し前、自分のミスで部下を二人死なせてしまい、その罪悪感にさいなまれ、勤務も内勤に切り替えた、そういう日々を送っているところだった。物語としては彼がこの大晦日の絶体絶命の苦境を生き抜き、かつての自信をとりもどすといった結末が最初から予想されるものの、主演のイーサン・ホークが強いの? 弱いの? どっち? というタイプなので、まったく安心できずはらはらする。おもしろかった!
 
11/22 (土)「ルビー・スパークス」(監督: ジョナサン・デイトン、 バレリー・ファリス)ギンレイホール絶賛スランプ中の作家の妄想から女の子が飛び出して大騒ぎ、という風に始まるんだけど、見ていて、そうした奇想がすんなり受け入れられる。「私のこの現実が誰かの夢だったら」というモチーフだけでなく、ごく当たり前のカップルがごくごくありきたりな危機を迎えて、なんとか出直そうというモチーフもあるし、若い作家が職業作家としてやっていく覚悟を決めるまでの話でもあって、イメージが重層的でわくわくする。その一方で主人公を支える兄は心から弟を思いやっていて、そういうところは思いっきりシンプルで素朴。
マッチョな男社会が苦手で、同性の友人を持たず、優しくフェミニンですらあった主人公が、恋人を押さえつけ、コントロールし、所有しようとして暴力を振るった挙句、自分に愛想を尽かす場面はほんとに痛ましい。
 
11/22 (土)「her / 世界でひとつの彼女」(監督: スパイク・ジョーンズ)ギンレイホール人格を持った最新の OS、サマンサと恋に落ちる男、セオドアの話。平行して、別居中の妻との離婚協議が進んでいき、何度も何度も彼女との思い出が思い起こされる。ルーニー・マーラ演じるキャサリンは夫を「あなたは自分しか見ていない」と責めるけれども、その一方で実はキャサリンは結婚に向かない人間で、今のところ一人で生きていく以外選択肢がないという現実も示される。これによって、セオドアが単に捨てられたみじめな男(あるいは妻に対して無理解だった無神経な男)などではなく、キャサリンとの愛情生活に苦闘し、互いに間違えもしたけれど、まだその手には最後の可能性が残されているのがわかる。つまり、夫婦や恋人としてではなく、一人ひとりの人間として、遠くからそっと支えあうような関係になれる可能性が残されている。セオドアがそのことに気づいたのは、OS、サマンサとよくある愁嘆場を演じたり、サマンサの変質に崩れるような寂しさを味わった後のことだった。この、サマンサとの恋、キャサリンとの恋が絡みあって進む物語に時折、友人であるエイミーとのいたわりあいの場面が見られて、ほっとする。エイミーとセオドアの今の友情が、将来、キャサリンをセオドアとの友情が支えることもあるかもしれないと思わせてくれる。
また、若干がさつで口の悪いエイミーが、一箇所、なんとも優しい美声を聞かせるシーンがあって、それが自分の部屋にあるパソコンの OS に語りかける声だというのも何とも良かった。
 
11/28 (金)「FIRESTORM 風暴」(監督:アラン・ユエン)@シネマート六本木
風暴 ファイヤー・ストーム スペシャル・エディション [Blu-ray]

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ためらいなく窓から飛び降りる人々、階段で殴りあう人々、市街地での銃撃戦、坂道を猛スピードでバックする車、そして何度も起こる爆発。その爆発に主演のアンディ・ラウは何度も巻き込まれ、ふっとばされる。香港印の華やかで驚きに満ちたアクションの数々が展開する。
そういったものを見せながら、きわめてまじめなクライム・アクションであるという不思議な映画。几帳面で、真面目で誠実だった主人公が、その正義感ゆえに堕ちていく。
ドラマは実に律儀に展開するのだった。終った時は思わず「ふーーーっ」と大きく息を吐いた。
しかしこういうアンディ・ラウを見たいかと聞かれれば、どうだろう、そうでもないかもしれない、とも思う。
アンディは「インファナル・アフェア」であんなに苦労したのだから、幸せでいてほしい。

名探偵ゴッド・アイ [DVD]

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