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雨降り

幽霊について

クイズ・ショウ

映画

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監督:ロバート・レッドフォード

脚本:ポール・アタナシオ

原作:リチャード・N・グッドウィン

出演:レイフ・ファインズジョン・タトゥーロ、ロブ・モロー

アメリカ 1994 年

1950年代、夜になると家族みんながテレビの前に集まり夢中になって見ていたアメリカが舞台。クイズ番組「21(トウェンティワン)」ではハービー・ステンペル(ジョン・タトゥーロ)が連勝中だったが、スポンサーからおろすように指示があり、プロデューサーは彼に「別の番組に出てもらうから」と言い、わざとクイズを間違わせて降板させる。ハービーに代わり、スカウトされたのが大学講師チャールズ・ヴァン・ドーレン(レイフ・ファインズ)。番組側は、このチャールズにも事前に問題を教え彼が勝ち進むよう「演出」する。この番組ではずっとこのように番組側の意向で勝者が選ばれてきたのだった。

ハービーはその後、「21」の八百長を大陪審に告発するものの、封印されてしまう。この封印の記事を読み不可解に思った立法管理小委員会の捜査官、ディック・グッドウィン(ロブ・モロー)が調査に乗り出して……。

元のクイズ勝者ハービーは激高しやすい性格で人付き合いがうまくできず、そのことからくる劣等感がある。彼はクイズで勝ち進み多額の賞金を得ただけでなく、アメリカ中で有名人となり人気者となれたことに深く満足する。そして、「これからは何もかもかわる」と夢を抱く。これまでは誰よりも知識があるのに、その知識ゆえに人から疎まれ、何をやってもうまくいかなかった、しかし今はその知識で自分は人気者なのだ、と。そんな彼を心配そうに見つめる妻が印象的。番組は、「視聴率が横ばいだから」という理由でこの彼をおろしてしまう。持ち上げるだけ持ち上げておいて、当然のように梯子を外してしまうのだ。

一方現チャンピオンのチャールズも偉大な研究者である父に対する劣等感がある。まだ仕事として何をなしとげたというのでもなく、伴侶もいない、おそらくは父ほどの偉大さを持ちあわせてはいないだろうと自らの来し方行く末を思うと不安になる一方だ。そのちょっとした隙をテレビに狙われ、彼は八百長でチャンピオンになり、テレビの人気者なっていく。

そして、この番組を調査する捜査官ディックもまた、仕事で成功したいという大きな野心がある。野心で、小さな記事に目をつけ、粘り強く捜査を重ねる。その過程でチャールズに惹かれてしまうところに彼の人間味がある。そのことを同僚から「劣等感だ」と言い当てられてしまうところは本当にいたましい。

まだ道半ばの、野心と劣等感に胸を焼きつくされそうな毎日を送る老青年たちが、テレビという怪物にその人生をめちゃくちゃにされてしまう過程がいたましくも丁寧に描かれていて、見ている間はひたすらはらはらし、痛々しく苦々しい気分に苛まれる。

ディックが迎えたある種の敗北と、それによりつぶやかれた言葉はしかし、知的だし、その分だけ希望もある。

おもしろかった。

ところで、物語の終盤、チャールズの父が教鞭をとる教室で "I still don't see how this old guy with a, with a, with a, uh, horse……and a fat old sidekick can think he's a knight." という質問をする学生がいて、その学生への態度を見ると、チャールズの父が良い研究者であり優れた著述家であるだけでなく、素晴らしい教育者であることがわかります。短いけれど、ほっとする良い場面です。この質問というか、感想を述べる学生がイーサン・ホーク。1シーンだけカメオ出演していました。