プール雨

幽霊について

「薄氷の殺人」を見ました

ポスターにつられて「薄氷の殺人」(2014 ディアオ・イーナン) を見てきました。
みんなにおすすめできるわけではないけど、好きな映画でした。
まず、冒頭で主人公が妻となにやらカードゲームをしていまして、わりとその場面自体がきれいなのです。構図といい、色といい。で、これは後々何かなのかな、とか思って見ていると……。
それから、びっくりするような事件が、わりとそれもびっくりするような構図とタイミングで起こって、そのときに目撃者なんかも結構いたりするわけなんですよ。で、どうなるのかな、と思ってみていると……。
……で、あっという間に 5 年経ち、刑事だった主人公は零落しており、だがしかし、5 年前の事件を警察ではいまだ捜査中で、その過程で一人の女性がまさに号泣っていう感じで泣き叫んでおり、しかしある登場人物が
 
「気にしないで」
 
と、そう言ったので、私は、あ、気にしなくていいんだ、と、他の登場人物とともにその状況を受け入れました。脇で一人の人が号泣してるんですけど、とりあえず、気にしないで。さらにその後、なぜか建物の中、屋内に◯◯がいて、さっき「気にしないで」と言った当の人が「なんでここに◯◯がいるのお?」と言うわけです。それで、結構長時間その◯◯の検討が続き、その中で、どこぞのなになにさん、最近見かけないんだけど、みたいな話が出たもので、てっきりそれが事件に関係するのかなと思ってると、そこで刑事さんが
 
「それはいいから」
 
って言ったもんで、「あ、いいんだ」と受け入れ。
おおむね、映画はそのように進みました。
結構、びっくりしました。
まず、色がきれい。構図がきれい。場面が変わった最初のショットがわりといつも印象的ではっ……と息をのむこと度々でした。それに、音が印象的。タイヤが雪を噛む音、靴が雪を踏みしめる音、電車の音、クリーニングのごんごんという音。風の音。
そして、寒そう。経験したことのない寒さでした。北国生まれの私が「あっ、ここは確実に私が今まで経験したどこよりも寒い」と感じる寒さ。
その中で、いわゆる人々を翻弄する「運命の女」っぽい人が出てきて、最初は見ながら「この人が最後までこの調子だったらつまんないなあ」なんて思っていたのですが、最終的にどうでもよくなっちゃった。
とにかく、寒さを味わったし、「捜査したいからしてる」「踊りたいから踊る」「屋上に行きたいから行く」っていう人を見てちょっとすっとしたりもしました。
映画の中に全部が収まりきっていない感じがするのが特に気に入りました。フレームの中には特段関係のない物や人がどんどん入り込む中、肝心なことはその外で行われてるんじゃないかという雰囲気。ふだんはそういう映画は「ちぇ」と思ってしまう方なんだけど、これはそれがおもしろくてはまってしまった。たまたまカメラを向けられた瞬間がそうだった、という感じに人々が映っているのが小気味よかったのです。
◯◯と、クリーニング屋の店主の頭部、消防訓練などに、かなりメモリを食われましたが、もしもう一度見る機会があったら、うすらぼんやりと何か食べながら見たいです。
 

 
このシーンもな。なんで……。