プール雨

幽霊について

ピッチパーフェクト

気まぐれで「ピッチ・パーフェクト」を見ました。見たことを、「マッドマックス」を見たショックですっかり忘れていました。
大学のアカペラサークルが全米大会出場、そこでの披露を競うお話で、歌あり笑いありお下劣ありの楽しいラブコメでした。見たのを忘れたのは飽くまでも「マッドマックス」の音楽映画っぷりに吹っ飛んじゃっただけで、十分楽しかったです。『イントゥ・ザ・ウッズ』で話題のアナ・ケンドリックが美声を聞かせてくれました。
 
Pitch Perfect
 
アメリカ発のガールズ・ムーヴィーの他の例に漏れず、かなりお下劣です。このお下劣はどこから来てどこに行くのか不思議なほど。そして、「信頼できる世界でたったひとりの人を無軌道な主人公が傷つけてしまい、かけがえのない人を失ったと深く反省する」というラブコメとしてはあまりにおなじみな展開。
この辺りはおもいっきりざっくりと定番を揃えた感じでした。
「境遇にも才能にも容姿にも恵まれた主人公の、深刻な悩み」がテーマなので、どう考えてもおいそれとは感情移入できない素晴らしい人生を歩む若い女の子にどこまで好感を抱けるかで映画の評価が決まる……ということも特にないのがおもしろいと言えばおもしろかった。
なんせ歌が楽しいから。あっちからも美声、こっちからも美声でほんとに楽しい。
だからそれ以外は観客の邪魔にならないように、定番をずらりと揃えたという感じなのかな、と思うほど。
学校空間はそこの国の文化が凝縮して表れるので、久しぶりにアメリカ映画に強く異文化を感じました。セリフの一つ一つ、行動の一つ一つにいちいち「おっと」っていう程度ですが、明白な違和感を感じる。それでいながら最後までそれなりに楽しんで見られるのだから、歌ってすごい。世界中で同じ音楽を聴いているのがすごい、とも言える。
オタクと韓国人留学生が差別の対象になっていました。
へえ、って感じ。
特に主人公と寮で同室になる留学生の描かれ方は、アメリカ人じゃない私にはぎょっとするものがありました。挨拶もしないんですよね。主人公は何度も声をかけるのに、完全に無視するし無言なの。
現実にそういうことがあるとかそういうことはこの際どうでもよくて、アメリカの青春映画を見に来るようなお客さんはああした描写に違和感を抱かないと想定されてる、っていうのがなんかすごいなと思いました。
もし私が主人公と同室の学生だったら、主人公には嫌悪感を抱くだろうと思います。彼女は父親が教授として勤める大学に入学してきて、ろくに授業にも出ない。大学入学は親のすすめで本人の意志じゃないから。でもそんなの必死こいて勉強してる他の学生にしてみれば「じゃあ辞めちゃえば」っていうだけの話で。悪い子じゃないけどちょっとあの恵まれ方は、もし自分が学生なら我慢するのが難しいと思う。
すごいローカルなものを見てるなあと思いつつ、音楽が始まると乗れちゃうっていう、そういう映画体験でした。