読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

雨降り

幽霊について

ストームトルーパーがヘルメットを取ると

私事で恐縮ですが先日、母から突然「我が家の歴史」という長文が届いてびっくりしました。「あなたの知らないことがあります」という書き出しで始まる物語は、大体知っていることで埋め尽くされていたけれども、母の口からまとまったかたちで聞いたことはなかったので、彼女の了見からすればそういうことになるんだなと感慨深かったです。

それで、その歴史に私が登場しなかったというのもあり(聞き手として想定されているにせよ)、これまでいつもいつも私の頭の隅にあった母に対する曰く言いがたい気持ちがぱっと晴れてしまいました。何十年も目の前を覆っていた霧が突然晴れたような不思議な体験でした。

starwars.disney.co.jp

監督:J. J. エイブラムス

原題:Star Wars : The Force Awakens

2015年 アメリカ

遠い昔、はるか彼方の銀河系で…。

ルーク・スカイウォーカーハン・ソロを救出後、修行を終えるため師ヨーダの元に行き、そこでダース・ベイダーの正体を知らされる。

そのころ、帝国第二デス・スターの建造を進めており、情報を入手した同盟軍は、ソロ、ルーク、レイア達を加えた潜入部隊を編成し、エンドアへと向かう。そこでソロ達はイウォーク族と遭遇、彼らの協力を得ることに成功する。

同盟軍が作戦を遂行する中、ルークはベイダーと対峙していた。

同時にソロ達も、イウォーク族とともに反撃を開始する。作戦は、ソロがシールドを破壊できるかどうかにかかっていた。そして、ついにルークとベイダーの対決に終止符が打たれることとなり……。

という「ジェダイの帰還」から約30年後の物語。

話は変わるのですが、この新作を見る前に期待していたことの一つに、「もふもふした生き物が見たい」というのがありました。しかし、新作にイウォークたちはじめ、もふもふした生き物は出てきませんでした。

眠れない夜、イウォークたちがせっせと自分たちのお洋服を洗濯し、きれいに干したりたたんだりお片づけしたりするところを想像してやりすごしてきました。

サンキュー、スター・ウォーズ(6)。サンキュー、もふもふ。

新作にイウォークたちは出てきませんでしたが、勇敢なポー・ダメロンが出てきました。そのポーを主人とし、忠実に使える BB-8 が出てきて、ポーと出会って1分で友情を結ぶフィンが出てきて、BB-8 を救出し、曲がったアンテナを直し、フィンの見栄を見抜きながらつきあってやるレイが出てきました。

彼ら彼女ら、新しい主人公たちのそれぞれの登場の仕方があまりに晴れやかで、劇場のシートに身をうずめながらそれまで考えていたあれやこれやがぱっと晴れてしまいました。

スター・ウォーズ」が初めて公開されたとき、私はまだ小学生にもなっておらず、完全に蚊帳の外でした。その後エピソード1が公開されたとき、私は社会に出ようとしてうまく行かず、契約社員をしていて経済的に困ったことになっており、映画に行く余裕がありませんでした。だからこのシリーズを見たのは、21世紀に入ってから……というような、どんな「私」が見たのかを表明せずにはやはり何も語れないような長い歴史を持つこの映画がこれからどんな風になっていくのか、もにゃもにゃと考えつつ、しかしやはりわくわくしつつ席にいて、そうした複雑な気持ちをぱっと晴らしたのが新主人公たちの佇まいでした。

おじいちゃんがいておばあちゃんがいて、お父さんがいてお母さんがいて、今目の前にいるその子はいて……というのと、師がいて弟子がいて、たまに教育の失敗があって、というのが「スター・ウォーズ」の基本で、どの話も「これはずっと続いてきた話のごくごく一部」という姿を見せています。

歴史を引き受けたり、引き受けそこなったり、ということが描かれているのですが、二時間の映画でそこのところをスマートに描くのは難しい。

その点に関してこの「フォースの覚醒」はなかなか清々しいものがありました。歴史の重さに押しつぶされそうな人物がいて、しかし彼は自分のことを被害者と思っているわけでも悪事をしていると思っているわけでもなく、自分なりに何か始末をつけようとしているだけで、そこにはいかに愚かだろうとも、他人がどうのこうのできない彼の了見がある。一方である人物の前で「神話」が「歴史」に変わる瞬間があって、その人物は最初は悲鳴をあげ重さにふっとばされ逃走するも、最後には耳を傾けて受け入れる。この、受け入れ方が良かった。たった一つの言葉でその人の中で何か筋が通るという描写があり、その言葉をつぶやいた人物たち、つぶやいたタイミングとも見事だった。そして、「ウォーズ」というタイトルを持つこの映画に初めて「逃げる」という言葉を持ち込んだ人物のすさまじいまでの魅力。

一人ひとりの物語が、他からは侵し得ないものとして描かれているのがとても良かったし、そんな彼らが完全に出会っていく姿が良かった。

ストームトルーパーのマスクを取った瞬間現れた顔、砂漠を行く人物がマスクを取った瞬間現れた顔、彼らが出会うもの、出会う人に向ける目。すべてが外を向いていて清々しかった。

どちらかと言うと頼りないレイやフィン、カイロ・レンがライトセーバーを構えるところを思い出しても、自分でも意外なほど「ああ、これが今の、私達の『スター・ウォーズ』なんだ」という感じがして、新シリーズ第一作としてとても好きです。早く続きが見たい。

以上です。

以上ですが、もう一つ。

レイアが好きだなあ。レイアはもともと好きなんですが、新作で30年ぶりのレイアを見た時、「ああ、ずっとお姫様で、これからもお姫様だ、この人は」と思えました。声もかっこよくてねえ。