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雨降り

幽霊について

すぐ好きになる

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「神なるオオカミ」

原題:狼图腾 Wolf Totem

監督:ジャン=ジャック・アノー

原作:ジャン・ロン

2015 年 中国・フランス

1967 年、中国。都市部の青年、「知識青年」を地方の農村に「下放」して働かせる政策により内モンゴルにやってきたチェンとヤンは、あっという間に遊牧民の暮らしと人々に魅せられていく。

ある日、チェンは族長ビリグの言いつけをやぶり違う道を通り、狼に遭遇する。狼の群れに囲まれ、命からがら逃げ出しながら、彼は高揚していた。狼に魅せられてしまったのだ。そして、狼の子どもを捕まえて育ててみたいと言い出す。

遊牧民は自然界の秩序を重んじ、それを乱すような行為を厳に慎むことで共同体の安定を保ってきた。そんな彼らの生活も変革期の只中にあって次々と乱されていく。そうしたさなか、役人からの命令で狼の子どもを駆除する役目を担っていたチェンは、一匹の仔狼を保護して小狼(シャオラン)と名づけ……

 チェンは惚れっぽい青年で、目に入るもの、人、すぐ好きになる。下放政策でモンゴルに送り込まれたその瞬間からわくわくしており、なだらかな草原に足を下ろした瞬間土地に恋をし、族長と相対した瞬間敬慕の年を抱き、そこで暮らすうち、族長の息子の奥さんにまで恋情を抱くようになる。

好きになるだけならまだしも、恋をするとすぐ所有したくなってしまうチェンは、数々の過ちを犯す。手にしてはいけないものを手にしようとし、時には手に入れ、その結果、人々を苦境に立たせる。

チェンの手に負えないところは、自分では悪いことをしているとは思わないところで、ただ愛しているだけだと思い、そう主張する。チェンのある行為に、ビリグは怒りと嫌悪感を隠さないが、「父と呼ぶな。私の前から消えろ」と告げた直後チェンが涙声で訴えると、思わずその声に耳を傾けてしまう。

行きたい場所に行き、ほしいものを手に入れ、住みたい場所に住む。そうすることによって、人々と土地を徹底的に傷つけてしまう。そういう事態が展開している。

チェンはまるで現代の私たちのようで、来た道に何も残っておらず、いくら欲望があろうと寂しく、心細い。弱い。

そんな彼の姿が、劇場の椅子に見を沈めて安全地帯で映画を見る我々を撃つ……ところまで行っているかどうか、どうかなという感じで、そのことを考えると、どうもこの原作をこんな映画にしてしまったことはもはや「悪」に属するのではないかという気すらする。

内モンゴルのなだらかで厳しい自然、美しい馬たち、羊たち、そして狼たちの映像はやはり見応えがあり、特に馬と人の姿は美しかった。でもどうしても、たった今の話にしか見えないのが良いことなのかどうか気になった。話が大きくなっているのか小さくなっているのか、判断がつかなかった。

見終わった時は寂しかった。