プール雨

幽霊について

「この世界の片隅に」

11 月 15 日@立川シネマ


映画『この世界の片隅に』予告編

エンドクレジットの後、この映画に出資した方々の名前が流れるのですが、エンドロールのときもそのときも客席から誰も立ち上がらず、灯りがついてやっとゆっくりとみんな立ち上がり、そこここで涙が止まらないような人もいて、こういう体験はなかなかできないなあ、一生でこれが最初で最後かもしれないなあと思いながら歩きました。

この映画を人に勧めるときに「反戦映画ではない」とわざわざいわなければならないというのは、あまりにもナイーヴすぎじゃないでしょうか。この映画は「◯◯映画ではない」といった条件がつくような、構えの小さなそれではないと思います。おそらくは、政治的な主張をプロパガンダする映画ではないから(気楽に)みんな見てほしいという意味でそういっているのでしょうけど、この映画を見た後ですらそんな反応が出るほど、「戦争を全力で避ける」といったことが口にしづらい状況になっているということで、こうなってしまうとほとんど戦時中にいるのと変わらないと思います。「反戦映画ではない(から評価できる)」と主張しているときに(おそらく図らず)採用しているその政治的態度を一度じっくり検討してみてほしいなと思います。

この世界の片隅に」は、これまで第二次世界大戦及び戦争そのものについてなされてきたいろんなレベルでの、厖大な「語りそこね」(例えばその中には、戦時を生きた方々について「昔の人はえらかった」という言葉で済ますということも含まれます)があって、それらの失敗をも全部包み込むような、大きな構えの映画です。反戦映画であり、冒険映画であり、恋愛映画であり、戦争が終わっても、戦争から逃れられず、戦争に傷つきつづけている私たちへの贈り物です。

 

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

 

 

 

この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)

 

 

 

この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)