プール雨

幽霊について

晴れ渡る密室

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原題:It

監督:アンドレス・ムシェッティ

2017 年 アメリカ

27 年に一度、人が消える町で、子どもたちの夏休みが始まった。

年明け一本目に何を見ようかな、おじさんが性転換してミシェル・ロドリゲスになっちゃうやつか、ビン・ラディンニコラス・ケイジが追いかけているやつか、どっちにしようと悩んでいたら、見損ねていた『IT』がまだやっていたのでいそいそと出かけてきました。

家で安心できない、学校でも居場所がないという「負け犬クラブ」の男の子たちと、一人でいじめっこグループと相対している女の子に夏休みがやってきて、ひととき解放感を味わう……ということもなく、彼ら彼女らに町自体がひとつの大きな密室として迫りくるのでした。

晴れ渡っている大通り、木々の間を風がさわやかに舞う川沿いの道は、それゆえに逃げ場がなく、子どもたちを恐怖に駆り立てます。

冒頭は雨で、主人公ビルの弟、ジョージィがお兄ちゃんに紙で舟をつくってもらい、それをもって元気いっぱい雨の大通りに遊びに出るところから始まります。このシーンを見てこの兄弟に好感を持たない人はいないでしょう。体の弱い、すこし吃音のあるお兄ちゃん、そのお兄ちゃんには逆らえない、かわいい弟が、家の中で互いに互いを頼っていて、お互いを大好きだということがわかります。かわいいな、と思って見ていると……

そんなわけで、子どもたちは親の暴力や、いじめっこたちの暴力ともうひとつ、「それ」がしかけるチェイスともたたかわなければならないわけで、大変な夏休みになってしまいました。

子どもたちが「お兄ちゃんに怒られる」とか「おやじに殺される」といった「○○に××される!」という恐怖をそれぞれ口にするのがポイントで、基本的にはその恐怖と対峙させられ、乗り越えたり、乗り越えられなかったりといったことが主軸になっています。そこに「それ」の恐怖が加わるのですが、彼ら彼女らが無謀にも「それ」と対峙することを選択するのは、どうせ家には家の、町には町の恐怖があって、安全な場所なんてどこにもないからです。

この辺りの、選択肢がなくて、閉じ込められて監視され脅されているような感覚に、見ているこっちもすっと入っていけるのが見事だなと思いました。

びっくりしたし、おもしろかったです!

これをちょっと見る前、DVD で『イット・フォローズ』も見ていました。『It』の方の「それ」とは違って、『イット・フォローズ』の「それ」は人間ぽくなくて、怖かったです。動きに迷いがなくて。

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どっちもラストが良かったです。