この夏はクラムボンのライブアルバムと the National の一番新しいのと Yo La Tengo ばかり聴いていて、「もう一生、この三組だけでいい……」という気分になっていました。
1. クラムボンと私
クラムボンは初めて生で聴いたのが日比谷野外音楽堂で、その後もいつも野外だったので、初夏から夏にかけて外で聴くイメージが強いです。
家で一番良く聞くのは『3 peace 〜live at 百年蔵〜』というライブアルバムで、今夏はとくに朝一番で聞くことが多かったです。
博多唯一の酒蔵、石蔵酒造さんに「博多百年蔵ホール」という施設があって、結婚式なんかもやるところなんですね。このアルバムはそこでの模様を収録したもので、MC も楽しめます。百年以上の歴史がある酒蔵でライブなんていいなあ。ライブ前に試飲や買い物をひとしきりしてちょっと酔っ払ったりして。ライブ中にお客さんがお手洗いに立っていたし、そういうこともあったかもしれません。
いつか旅先でふらっとクラムボンのライブに行ってみたい。元は酒蔵だった古い土蔵の中とか、中古レコード屋さんと古本屋さんが一緒になったようなお店とか、そういうとこで偶然クラムボンのライブに会ってみたい。けど、さすがに「ふらっと」はチケットが取れないだろうなあ。何ならクラムボンのライブ目指して旅行に行くのでもよいです。そんな夢を見させてくれる、いつもいつも移動しているイメージのクラムボンです。
2. the National と私
the National の "Sleep Well Beast" を、いつ聞いているかと言うと、わりと一日中聞いています。このアルバムは昼間聞いてもいいし、夜中に聞いてもいい。
このところ困惑したり途方もなく哀しくなったりするようなことが続いていて、正気を保つのが難しいのですが、「正気を保つ」とはちょっと別の仕方で困惑や悲しみと付き合うやり方を"Sleep Well Beast" から学んでいるような気がします。
話は変わりまして(そして記憶で書くので細部が違っていると思うのですが)、新聞の悩み相談で「職場に残る差別的なあれやこれやを黙って飲み込むことができません。それでかわいげがないとか言われてしまいます」というものがあって、彼女に対して上野千鶴子さんが「かわいげなんかあったって、いいことありませんよ。いいじゃない、抵抗したら」というようなことをおっしゃっていて、そうだよなあ、かわいげなんかあったって、いいことなんかないよなあと思ったんです。「ない」ってことはないでしょ? と思われるかもしれませんが、私は、「ない」って思うんです。かわいげがあったって、かわいげを要求する仕組みや人々に「かわいげがあって良い」と認定されるだけで、そんな構図や仕組みにオッケー出されたってしょうがないんですよね。ほんとはその仕組みを乗り越えたい。乗り越えて笑いたい。その気持ちと "Sleep Well Beast" は近い気がする。
ストイックであること、勤勉であること、そして享楽的であること。"Sleep Well Beast" の前でぼさっと突っ立っていると、そういう構えにならざるをえず、その構えがこのアルバムからの贈り物だという気がします。
3. Yo La Tengo と私
Yo La Tengo はいつも聞いています。多少、夕方のイメージがあるけど、年がら年中、朝から晩まで隙を見つけては聞いています。
Yo La Tengo は音数の少ない、抑制的な展開と轟音モードとの行き来が独特で、気づくとぶわ〜〜〜っとなっていて、その瞬間、ほんとに何も考えていない。
あっ、今突然、何も考えてなかったな、とひゅ〜〜〜っと自分が元にもどるときがおもしろい。
たぶん整体を受けたのに近い効果があると思う。
大昔、高校生から大学生くらいのころ、私はいつも肩が凝っていた。首が痛くて、頭が痛くてしょうがなかった。
今もあのころとやっている作業的にはさほど変わらない姿勢、変わらない負荷で暮らしていますが、肩、凝らない。
私の体が傷みをかわすのがうまくなったということなんだと思います。肩甲骨を意識しているし、立ち方を工夫しているし、そんなこんなで。
傷みをかわす構えは、たぶん冗談じゃなく Yo La Tengo 由来だと思います。
ライブも最高でした!
それで、さっきこの日記のメモをまとめていて気づいたのですが、結局 Red Hot シリーズのコンピレーション、"Dark Was the Night" に曲が収録されている音楽家の曲ばかりを聴いている。Dirty Projectores、The Books、Fiest、Grizzly Bear、そして Yo La Tengo、the National。
すごい、 "Dark Was the Night"。
一枚で(USインディーズが)大抵そろっている。
おすすめです!