映画館に続く道です。
『エターナルズ』を見に行ってきました。
みんな大好き偽史ものとでもいえばいいでしょうか。
人類の歴史の裏には、実は、エターナルズという神(?)の使いの奮闘があったのです。人類を食らうディヴィアンツから人類を守り、その進歩発展をそっと後押しするエターナルズ。数千年の奮闘のすえ、ディヴィアンツは絶滅した。地球の守護神たる役目もそろそろ終わりではないだろうか、帰還命令はいつ下りるのだろうかと心待ちにするエターナルズであったが……。
というのが表のあらすじです。
エターナルズは十人いて、それぞれに目からビームを出したり手からビームを出したり、触れたものの組成を変えたり、韋駄天のように俊敏に移動できたり、異能をもっています。能力的に優れた十人が集まって、それぞれの能力を生かし、助け合い、仕事をやりとげる。エターナルズは 7000 年もの長きにわたってメンバーチェンジをせずに済んでいる稀有なアイドルグループのようなものです。
そうです。ずっとメンバーチェンジせず、解散もしないなんて、アイドルファンとしては夢のような存在です。
とはいえ、7000 年もの長きにわたって活動すると、病を得るもの、仕事の指示に疑念を抱くもの、人類(ファン)に不信感を覚えるようになるもの、そもそもグループ活動が好きじゃないと気づくものが現れ、このまま何もなければエターナルズも解散かな、それはそれでエターナルズにとっても人類にとっても地球にとっても幸せ……
とか思って吞気に構えていたら、5世紀前に倒したはずのディヴィアンツ大復活で、地球は大騒ぎ。活動休止中だったエターナルズは再結集しなければなりません。さてさて。
かように、『エターナルズ』はグループアイドルのどたばたとして見てもかなり納得のいく話なのですが、もっと広く「お仕事もの」として見てもおもしろいです。神的な、社長的ななにかは、「質問するな」「言われた通りにやっていればよい」という、部下に絶対的な忠誠心を求めるタイプです。リーダーのエイジャック(サルマ・ハエック)はこの「命令絶対」という上司と、部下をつなぐ中間管理職です。「言われた通りにやっていればよい」で 7000 年もやっていられるか、少し想像してみるといいと思うんですけど、それは無理だし、ミスを誘発することにもなります。エターナルズの皆さんの中には「この仕事の方向性自体が間違っている」と主張して早期(といっても何世紀も働いた後だが)離脱をするものがいて、「そりゃそうなるわ」と思いますし、残ったメンバーも「リーダーに忠誠を誓います。そしてとっとと仕事済ませて帰りたい」派と「いや、忠誠心ってなんか……ちょっと、心を虚しくして働くと私あまり能力発揮できないタイプだし、都度都度考えます」派に分かれます。上司の意向を具現化した機械の部品として生きることにためらないのないタイプと、ためらってしまうタイプとでもいいましょうか。この後者、どうしても個を捨てられない、それぞれの人物に固有のものこそ大事でかけがえがないと考えてしまうタイプの人たちが、圧倒的苦境の中、立ち向かいます。
こう言ってしまうとよくある話なのですが、ここにもう一手間加えてあって、それが個を捨てられない人間と愛の関係です。愛するということはどういうことなのかについて、『エターナルズ』は最初からかなりきっぱりと映像でも主張していて、全体として「愛の映画」といってよいと思います。
単独の、とりかえのきかない記憶と尊厳をもったものが、やはりとりかえのきかない記憶と尊厳をもったものとして他者を愛する。そのときの花が開くような、輝かしいけれども同時に穏やかで静かな愛の情景が最低でも 15 分に一回入ります。いや、もっと入る。頻繁。一言で言うと、甘酸っぱい。
君は、この神々による甘酸っぱビームに耐えることができるだろうか。
おすすめです!
久々に甘酸っぱいものを一度に摂取した私は、今日は酸っぱいものを食べないと気が収まらないなと思いました。この日の晩ごはんは鯖とトマトのスパゲッティ、略してサバトスパゲッティです。
そのうち、日がだんだん暮れていきました。
🎥 おしまい🌍