プール雨

幽霊について

コーヒー映像 (1) 刑事コロンボ「溶ける糸」

朝起きて、色々片付けて、さて、という段になって考えるのはまずコーヒーのことです。コーヒーをいれて。それからお仕事しましょう。そういう流れになっています。
ランチ。ランチには、たとえそれがラーメンであろうと、コーヒーがつきもので、コーヒーなしのランチのときは、缶コーヒーでもいいから必ず飲みます。
映画。映画に行く際には、どのようなコーヒーをどう持って臨むかが問題になります。家でいれたものをポットに入れて持って行ってもいいですし、どこか喫茶店で持ち帰り用にいれてもらってもいいですし、何なら映画館の自販機で買ってもいいです。
コーヒーなら、わりと何でも良いです。
まずくても構いません。まずいコーヒーを口に含んだ時の危険な匂いには、ある種の甘美さがあり、それをごくりと飲み干すことには不思議な喜びがあります。
もちろん、おいしければもっと良いのですが。
という話をしていたら、親切な方がコーヒー映像を勧めてくださったので、これからちょいちょい眺めていって、感想をメモしていきたいと思います。
第一回は、刑事コロンボ「溶ける糸」です。
舞台はある病院で、被害者はこの方。
 

 
優秀かつ、仕事に情熱と誠意をもって臨む看護師、シャロンさん。シャロンさんの人柄は、冒頭、病院にかつぎこまれるふとっちょ先生を心配する姿からも推し量れます。まじめで、とても良い人です。
で、犯人はこちら。
 

 
ふとっちょ先生の部下であり、心臓外科医である、バリーさん。ふとっちょ先生と何か共同で研究しているようなんですが、その研究にさらにドイツから新しく医師が加わると聞いて、心穏やかではありません。バリーさんは、自分の能力と実績が認めてもらえないのが不満のようです。
だからって、あんなことをするなんて……。
ちなみにバリー先生、目になじみがありすぎると思ったら、この方ですね。
 

 
そんなこんなで、事件は起こり、コロンボが朝もはよから呼び出される事態に。
おねむなコロンボは現場にゆでたまごを持ってやってきて、まず言いました。
 
\コーヒー、ない?/

 
コロンボさん、奥様のおかげんが悪く徹夜だったそうで、とりあえずゆでたまごを持ってやってきたのですが、鑑識の人から「ゆでたまごのからを捨てるな」と怒られるし、頭は動かないし眠いし、かわいそう……。
せめて、誰か、まずくてもいいからコーヒーを、と願わずにいられません。なのに、「コーヒーない?」「コーヒーどこかで飲めない?」「コーヒーさえあればなあ」と言いながらうろちょろするコロンボにやっとこさ与えられるもの、それは……オレンジジュース。
まずそう!
そうなのです。
この「溶ける糸」では、「コーヒー」「コーヒー」とゾンビのようにさまようコロンボが、どうしてもコーヒーにありつけず、かわりにまずいオレンジジュースだの、食べつけない蛤だなのを与えられ、ついには胃薬の世話になる……。
コーヒーが飲みたいときに、コーヒーにたどりつけない。
そういう、「不在のコーヒー」についてのドラマだったのです。
コーヒーがないという恐怖が横溢するこのドラマ。そのせいだと思われますが、わりとストレートにコロンボくんが「犯人はお前だ」「が、証拠がない」「ぐぎぎ」みたいなことを言って声を荒らげています。
コーヒーを一杯、紙コップのでいいから飲ませてあげたかった。