プール雨

幽霊について

発表! 2014年ベスト・イーサン・ホーク大賞

第 3 位 「ゲッタウェイ スーパースネーク」(コートニー・ソロモン) のイーサン・ホーク as ブレント・マグナ!!

クリスマス。無茶ばかりやってスポンサーから見放されてしまった元プロレーサーのブレントが帰宅すると、クリスマスソングが流れ、華やかな飾り付けがなされたリビングに乱闘の跡。そこに、妻を誘拐したという脅迫電話を受ける。犯人に指示されるままに車を盗み、夜の街を爆走。パトカーに追われながら次々と脅迫は続く。さらには車の所有者だという少女まで乗り込んできて……。

で、一晩中それは大変な目に遭って、顔がこうなりました。

眉間の皺が、すっかり模様のようになって、とれなくなってしまったイーサンです。
カーチェイスが見せ場になっていますが、イーサンの顔と手と足も見どころです。クリスマス、ブルガリアの夜、脅迫されるイーサン。完璧。なぜブレイトがそんな目に遭わなければいけなかったか、ということもちゃんとラストに明かされます。その言葉とイーサンが見事に釣り合っている!  まだご覧になってない方はぜひクリスマスになんとかして……。
 
第 2 位 「ビフォア・ミッドナイト」(リチャード・リンクレイター) のイーサン・ホーク as ジェシー!!!!

ジェシーセリーヌは双子の娘とともに、パリで一緒に暮らしていた。冒頭は、そのジェシーと前妻との息子がパリを離れる場面。ジェシーは言いたいことも言えず、半端に父親風を吹かせ、だがそんな父の気持ちもおみとおしさ……という息子を見送る。その後、二人は友人に招かれてギリシャの海辺の町へやってきてバカンスを楽しむ。……というはずが、ジェシーは息子が気がかりだし、セリーヌは仕事に不安を感じているし、それぞれ悩んでいた。当然、夫婦げんかが始まり……。

そして、全編、ひたすら夫婦げんかを繰り広げた二人。

ジェシーの息子が、父親にではなくセリーヌの方に電話してきたり、色々と相談していたことがわかってパパ、あっという間に不機嫌。セリーヌの方はセリーヌの方で、仕事の相談をするとジェシーが歯に何かが挟まったようなもの言いをするので不機嫌。

基本的にこのように、二人が車に乗ったり、歩いたりしながら、向こうから手前に向かってやってきつつ、喧嘩してる。
後はごはんを食べたり、寝てる娘の手から落ちた林檎を食べて後で泣かれたり、それぞれ友達に愚痴をこぼしたり、そんなのが延々続くのですが、なぜかそれが爆発的におもしろく、なぜおもしろいのかわからないくらい、おもしろかった。冒頭の空港シーンから「あっ、これはおもしろい!」という雰囲気が充満しており、それがラストに向かってぐいぐいと膨らむ一方。
このジェシーって人は、他の映画でイーサンが演じてきた数々のダメ人間たちとはまたひと味違っていて、「ある種のアメリカ人」の象徴めいたキャラクターで、それがおもしろい。善良で、知的であろうと努力をし、その一方でスピリチュアルなものに親和性があって、根っこのところで自分の文化の弱さをわかっている。だからこそ知的であろうと努力をするんだけども……という感じ。
 
第 1 位「6 才のボクが、大人になるまで」(リチャード・リンクレイター)のイーサン・ホーク as メイソン・エヴァンス・シニア!!!!!!

母、姉とともに暮らす 6 歳のメイソンJr.。
母親に伴い、ヒューストンに引っ越したり、母の再婚相手のせいでひどい目に遭ったり、でもそこで新しく出来た姉弟たちとは仲良くなれたり、学校でいじめに遭いかけたり、アラスカから戻ってきた父親が就職してんだかしてないんだかよくわからなかったり、そうこうしているうちに母親が再再婚したり、メイソンJr.にも恋人が出来たり、カメラに夢中になったり……

四人の俳優を中心に 12 年かけて撮られたこの映画。単純に、2 時間 45 分の映画の中で子どもたちがどんどん大きくなっていくのを見るのは、衝撃的だった。意外と、そこにすごくびっくりした。「あっ!! 大きくなった!!」というところに。
そして、どのシーンもみっしりきっちりと組み上げられていて、くすくす笑いが止まらなかった。時には大笑いも。とっても新鮮な映画体験。
そんな中、イーサンは仕事してるんだかしてないんだかわからなくて、お母さんにそうそうに見切りをつけられてしまったお父さんを熱演。ジェシーとはまた全然違う、リアルなダメ具合。
なにせ、こういう目で息子から見られてしまうのだから。

このシーンはおかしかったなあ。
こちらはわりと最初の方で、久しぶりに会ったお父さんに浮かれる姉と弟が左右から前後無関係にどんどん自分の話だけをするシーン。パパ、パパ、聞いて聞いて〜の応酬で、お父さんはいつもの感じで応対。

邦題では「ボクが、大人になるまで」とあるのですが、実際大人になるのはこのお父さんとお母さんの方で、お父さんはふらふらするのをやめ、意にそわないところもある人と結婚してまっとうに暮らし、お母さんはお母さんで自分のダメ具合を認識し、葛藤し、あきらめる。こどもたちは、一本立ちのスタートラインに立ったところ。これからどんなことがあるのかな、と彼らの前に青空は広がるのでした。
 

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