プール雨

幽霊について

村上佳菜子「SAYURI」

Skate Canada での FS 演技を見ました。技術要素の得点が 52.09、演技構成点が 59.71、トータルスコア 111.80 の演技でした。PB が130点超えの選手なので、まだまだここからという感じです。

3F+2T、2A+3T(今回は 1A)、3Lo(両足)、フライングキャメルスピン、ステップシークエンス、コンビネーションスピン、3Lo+2T+2Lo、3F(両足)、3S、コレオ(スパイラル)、2A、レイバックスピンという構成で、ジャンプは 3F と 3Lo が二回ずつで、2A+3T が入っています。可能性としては最初の 3Lo を 3Lz にすれば、冒頭のジャンプを 3F+3T にできますので、そういうことを考えているのかなと思います。三連続の最初が 3Lo なところが素晴らしいです。

見どころは前半に組み込まれたステップシークエンス。多彩な動きが音楽にぴたっと合っていて素敵です。また何と言っても、終盤の3S からのコレオがなかなか素敵。スパイラルを 2 ポーズするのですが、二つ目の後ろ向きで滑るスパイラルがゴージャスです。その後 2A を挟んで、ラストのレイバックスピンへと向かうこの辺りは切れ目がなくて見応えがあります。

気になるのは、音楽自体はめりはりがあるものの、演技がずっと沈んだトーンで、それが抑圧的に見えること。無言で抑圧に耐えるような表情で最初から最後まで滑るので、単純に元気がないように見える。

首から下はあんなに多彩な動きなのに、抑圧的に映るという不思議な状況で、この解釈でシーズンを通すのかな、どうなのかなと考えこんでしましました。

娼館の話だからといって「顔で笑って心で泣いて」式の表現にしないのは、村上佳菜子の健全な知性の表れかもしれないと思ったりもしつつ、何かもう一捻りあると、ぐっと得点が上がるのではないか、3S ではなく、3Lo をニ回跳んでるところに意地も感じるし、そういったところがちょっとした補助線一つでぱっと成果に向かいそう、などと夢想するシーズン初頭でした。