プール雨

幽霊について

「Shangri-La」に彩られた悪夢のような日々が高音質で

監督:大根仁

2015 年 日本

電気グルーヴ、25週年、フジロックフェス、グリーンステージに立っていた。

 この 25 年ちょっとというもの、ちょうど 4 歳上の電気を無意識的に「理想の先輩」視してしまっていたようです。

「ちょうど 4 歳上」の何が「ちょうど」かと言うと、自分が大学入学のころ、向こうは社会に出たての「新人」だったということで、そういう感じのグループがいくつかあって、どうもそういう人たちのことを「先輩」と思って暮らしてきたようです。

よく覚えているのは「Shangri-La」リリースのころで、自分はあのころどん底で、今でも思い出したくもない時期なのですが、ラジオからよく「Shangri-La」が流れていて、そのときだけ正気を保てていたこと、ほどなく発売された「A」をどうかというくらい繰り返し聞いたこと、お金もないのにかき集めて赤坂ブリッツに行ったこと、そして元気を出したこと、でもすぐにまたきつい日常が始まったこと……等々。そうした思い出したくもない日々が「Shangri-La」で彩られていたと、今になって思い返すとなんだかおもしろいなという気もするけれど、なんとか自分のやれることを探そうとしていて、当時は必死でした。

電気グルーヴは異常で狂っていて偉大だけれども、同時に勤続 25 年の、その間ずっと自分のやれることを探してこつこつやってきた普通の人たちでもあって、ということがすーっと了解できて、そこがおもしろい映画でした。特に説教モードもプレッシャーもなく、ごくごく当然のこととして進んでいく映像がおもしろかったです。そして、そうだったんだなあと妙に納得しつつも、見る前と見た後で、特段二人のイメージも変わらないのがいいなあ。

飄々と、ひどいことばかりを言う仙人みたいな二人があそこでああしているのを見ると素朴に楽しい気持ちになりました。