プール雨

幽霊について

2016 年上半期映画でフィギュアスケート女子シングル FS のプログラムを組みました

好きな映画で「打線」を組んだり、「イレブン」を決めたりしているのを見て、私もやってみることにしました。

 

まず、大事な大事な冒頭のジャンプ。観客を異世界に引き込みます。単独の 2A スタートで、優雅に「キャロル」。余裕のある、ふわっとしたジャンプで、着氷はまるで音楽に合わせて降りてきたかのよう。宝物です。降りた脚で軽やかにステップを踏みます。ゆっくりはじまったな~きれいだな~と油断していると、そこからやおら飛ぶ、3Lz+3Lo =「貞子VS伽倻子」のびっくり大盤振る舞い。とは言え、「跳んだ!」「降りた!」だけの「貞子VS伽倻子」ではありません。しっかりとした技術に裏打ちされた、絶品の「貞子VS伽倻子」です。観客がその充実の大技に驚いているうちに、フライングシットスピン、つまり「アイアムアヒーロー」。女子としては驚きの大きな入り。すぐさま決まる深いシットポジション。速い。フリーレッグがあらぬ方を向いています。ゾンビ表現ですが、奇をてらった感じはしません。スピードは上がる一方。観客の興奮が早くも最高潮に達したところでリンクを大きく使ってのステップシークエンス=「スポットライト」です。一つ一つのターン、ステップの堅実さが光ります。左右バランスよく、上体の動かし方も美しい。そしてなんと言っても音楽にぴったりと合っています。軽々と踏んで当然レベル4。加点の嵐です。

得点が 1.1 倍になる後半のジャンプはゴージャスに 3F=「ストレイト・アウタ・コンプトン」から。これが見事なインサイドエッジ、反時計回りのカーヴからぽーんと大きい、大きい、大きすぎる飛翔! そのわりに軽々とした着氷になにこれーー! とか言っているうちにあっという間に 2A+3T=「オデッセイ」!! この「オデッセイ」を「手堅い」などと言う人には「ちょっと待て」と言いたい。何を勘違いしているのですか、プログラム後半、ステップシークエンスからの 3F からの 「オデッセイ」ですよ。泣くでしょう! あ、二回目の 2A だな~、するとコンビネーションだから 2T でもつけるのかな~と思っていたらなんと「オデッセイ」。しびれる。しびれる観客にたっぷりゆったりステップを挟んで油断させておいて「あっ」という間もなく まさかの 3S+2T+2Lo、マネーショーーーートーーー! 「マネー・ショート」、何が起こったかよくわからない。どきどきがとまらない……のに、来ました、プログラム終盤での絶品 3Lz。つまり「ボーダーライン」。乾いた夕日が見える。銃を構えるマイム。撃つのか、撃たないのかどうなのどうなの? えっ……転倒……っじゃない、「今のもう一回見せて?」という不思議なポジションから足換えコンビネーションスピン、「ヘイトフルエイト」だーーーー! 場内泣きながら爆笑!!! 一体何回回っているのだ!! そして来ました。話題の鬼コレオ「レヴェナント」。人間の身体はそういう風に出来ていないのではないのか? という動きの連続で観客はぐらんぐらんしてきました。なんだか寒い……いや、暑いのか……? と額から汗が流れたところでスケーターがゆるりと観客を見回します。くるうり、くるうり、くるうり、くるくるくる~まだ跳ぶのか 3Lo、「サウルの息子」………!

もう、何がなんだかわからなくなったところで、最後はリンク中央で見事な背中のカーブを見せるレイバックスピン「クリード」。久しぶりに見る、オーソドックスなレイバックスピン。なのにフレッシュ。ポジションを変えても回転速度が落ちません……きれいなかたちのビールマン、飛んでいってしまいそう……というところで大きく回って回転をおさえて、フィニッシュ!

 

明日になれば書いた本人にも意味がわからなくなるでしょう。