プール雨

幽霊について

夢がある

グランド・イリュージョン 見破られたトリック」

原題:Now You See Me 2

監督:ジョン・M・チュウ

2016 年 アメリ

巨大 IT 企業の個人情報をめぐる不正を暴露するためショーを仕掛けたフォー・ホースメンが逆に仕掛けられてしまい、ディラン(マーク・ラファロ)は FBI 捜査官という地位を失い、追われる立場に。彼らの先手を取り、策略に落とし込んだのは、天才エンジニア、ウォルター・メイブリー(ダニエル・ラドクリフ)、目的は復讐だった。

「先手を取っているつもりが、取られていて、頭に来たのでさらにその先手を取った」というお話なのですが、現実では「先手を取る」ってそういうことじゃなくて、「ロジックを変える」とか、「前提を再検討する」とか、そういう作業をするわけですよね。でもこの人たちは律儀に同じライン上の後先を行くのです。それを馬鹿みたいだと取るか、律儀だと取るかは見る人の構え次第なのですが、私は、「夢がある」と思いました。

登場人物はほぼ全員、出てきた瞬間、イラッとさせられるタイプ。イラッとかムカムカッとか。特にジェシー・アイゼンバーグ演じるアトラスとダニエル・ラドクリフ演じるメイブリーはファースト・カットから不安になる。アトラスはかりかりしているし、メイブリーは不気味すぎる。でもなんとなく、結局のところいい奴そう。そんな感じ。そういう安心感があるのは俳優の力量やムードもあるけれど、何よりこの映画のベースにシニカルさがないからだと思う。大人のシニカルにはもううんざり、っていう人には楽しい映画なのでは。

今目に見えている世界とは別のロジックで動く人々がいると感じること、いつも自分は誰かに見守られていると信じること、それから、その悲しみはいつか癒されると信じること。そういう素朴な水準で夢がある話。

続編ものによくある、話がこんがらがってしまって、ひたすらめんどうになる感じもなく、話が早い。豪快で素朴。登場人物たちは幼いけれど真剣。

これはこれで、いいんじゃないかな。

「この登場人物はいてもいなくても話に影響ないな」という人物が数人いたり、話を動かす主要登場人物に女性がいなくて絵面がむさ苦しかったり、二回見ると粗が見えてきそうだったりするのが強いて言えば残念なポイントだけれども、ちょっと映画館でゆっくり休んで頭の中じゃぶじゃぶ洗いたいっていう感じで見るとなかなか良いのではと思います。