プール雨

幽霊について

2017年 一本目は「ホワイト・バレット(原題:三人行)」にしました

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監督:ジョニー・トー

主演:ルイス・クー、ヴィッキー・チャオ、ウォレス・チョン

2016年 香港・中国

強盗が発生し、逮捕にかけつけた警察と強盗団の間で銃撃戦が発生した。強盗団の一人、チョン(ウォレス・チョン)は頭を撃たれ、病院に担ぎ込まれる。手術が始まろうというときに奇跡的に目を覚ましたチョンはなぜか手術を拒否。トン医師(ヴィッキー・チャオ)はたまたま弾が脳の重要な箇所を避けてとどまっているから今は動けているが、危険なことに変わりはない、この 6 時間が山場であると告げる。一方、チャン警部(ルイス・クー)はチョンから証言を得ようとするのと同時に、部下がチョンに発砲した経緯について何とか隠蔽しようと工作を画策する。

きゃー! わからーん!

と思いつつも、最後までどきどきわくわく見てしまった……。

例えば、6 時間以内に手術しないとウォレス・チョンは死ぬ、ヴィッキー・チャオは今すぐにでも手術したい、しかし手術をしたら次に目覚めるのはいつかわからないので、早く証言を取りたいルイス・クーは焦る、ウォレス・チョンはどうしても仲間に伝えなければならないことがあり、それさえ済んだら後はどうでもいいというか何なら死ぬつもり、という三人の間で壮絶な駆け引きが繰り広げられ……といった、ありきたりの話ではま……………………ったくなく、まず、ウォレス・チョンがなぜ手術を拒否するかがわからない。このまま手術をしないとどうも死ぬらしい。じゃあ、警察の支配下におかれている現況と怪我から考えて、もう生きるのを諦めて自暴自棄になっているのかというとそうでもない。生きようとしているし、逃げようとしている。五億歩譲って、麻酔を撃ったときに生じる独り言を恐れる……まあ、どうでもいい! そして、ルイス・クー。部下への伝達ミスでウォレス・チョンを部下が撃ってしまったのだけど、その隠蔽工作と根回しに必死で、捜査はそっちのけ……というわけではないものの、何かこう、不可思議な行動を重ねる。なぜか人員を一箇所に送りたがる。「罠だ」が口癖。真顔で。さらにヴィッキー・チャオヴィッキー・チャオで、事件とは無関係に治療でうまく行かないことが重なり、帰宅を命じられる。が、なぜか帰らない。越権行為などもする。ここに、全然関係ない患者さんの院内徘徊行為なども加わり、しっちゃかめっちゃか。

これらに??????という感じになりつつも、こっちでおじさんが謎の窃盗行為をし、そっちでラム・シュがお尻を刺され、あっちでヴィッキーが薬をすり替え、などするその一連の流れが奇妙に音楽的で、間とテンポが良く、身体の方は素直に楽しんで映画を見てしまう……。

「これ、好きでしょう?」という幻聴がする……いや、断固拒否する!!

そして、ああ、そういえばジョニー・トーには「ダイエット・ラブ」っていう変な映画があったな、「フルタイム・キラー」だってえらいことになっていたな、「ターンレフト・ターンライト」だってびっくりしたな……などと映画的走馬灯がぐるんぐるん周りだし、そうだ、「香港、華麗なるオフィスライフ」だって不思議だったし、きっとジョニー・トーは新たな階段を登っているんだ、また何かの途中なんだ、と思うよう、自分に言い聞かせ、映画館を出ました。