プール雨

幽霊について

よくある話

 

 

原題:Wiener - Dog

監督・脚本:トッド・ソロンズ

撮影監督:エドワード・ラックマン

2015 年 アメリ

ガンを治療中の息子にダックスフントをプレゼントして「何の相談もなしに!」と妻に叱られる男。散歩もしつけもするからと言うが、振り回されっぱなしのある朝…………ところでそのダックスフントが連れて行かれた施設で働く女性、ドーンは犬のあまりのかわいさに……そしてドーンはオハイオに行き……それはさておき……

 レミは仰向けに寝転がって半目を開いている。死んだふりをしているように見える。その子にダックスフントをあげる父と、それに反対する母との会話から、レミががん患者で、治療はうまくいっているものの、定期的な検査が必要な身だとわかる。それで、死んだふりじゃなく死ぬ練習をしているのだなとわかる。

 レミに母が、犬の避妊手術をしなければならない理由を説明する。この世界はわんちゃんにとってはあまりに過酷だから、かれらが生き抜いていけるように私たちが手助けしてあげるのよとかなんとか。ちょっとおかしなことを言っているな……と母自身がわかっているので、一瞬死んだ目になる。しかしそれを振り払うかのようにオーマイベイビー、悲しまないでとかなんとかそういう傾向のことを言ってハグ。ハグされて、レミも100 % は納得できないので、「なんか変だな……」という顔をしている。

 レミ家族のシークエンスが終わると、次は獣医師の助手、ドーンのお話。彼女はちょっと気が弱いけれどいかにも優しそうですてきな女の子。今度こそハートウォーミングな話に展開するかと思いきや、ばったり会ったブランドンと「オハイオに行くんだけど」「オハイオになにがあるの?」「シャブ」「……」「冗談だよ」「行くわ」という謎の会話を経て旅立ち。

 特に会話もなく、ブランドンとの旅は続き、時折「待ってて」と車を停めて待たされる。ブランドンは誰かの家を訪ね、会い、何かを話しているようだけど、どうも門前払いをされているようだ。そのうち……

 …………全部書いてしまいそうデス!!

 書いてしまったからと言って、特にネタバレということにもならないとは思うんです。

 どういう映画かと言うと、ただ、この映画を見た日から、ブランドンとドーンのことが、レミ家族のことが、売れない脚本家の先生が、その先生にうんざりしていた生徒たちが、おばあちゃんにお金を無心に来ていた孫娘が、そして当のおばあちゃんが、あれからどうしているかな、と気になるというほどでもない温度で気にかかるだけ。震えるほど感動した! というようなことじゃなく、なんとなくずっと、「トッド・ソロンズの子犬物語」と地続きの世界にいる気がする。

 一旦口を開くとどうしてもろくでもない言葉ばかりが口をついて出てしまい、思わぬ方向に話が行ってしまってもどうしようもできない。私たち同様に、しょうもない人々が特段糾弾されるわけでも批判されるわけでも、また嘲笑されるわけでもなく、逆に愛されるわけでもなくただスクリーンの中を行き過ぎるのがおもしろかった。一匹のダックスフントのまわりをうろちょろしているだけなんだけど。

 

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