2018 年上半期、大変でした。
2018 年上半期には平昌オリンピックもあって、あそこからず〜っと毎週オリンピックを見ているような感じです。
基本的には「映画でも見なきゃやってられるかよ」といつも頭の隅で思っているのですが、それにしたって「スリー・ビルボード」も「デトロイト」も「フロリダ・プロジェクト」も「万引き家族」もこの半年にあって、「マンハント」や「トレイン・ミッション」もあって、やあやあ、大変な半年だったなあと思います。あんまり、魂のこもった映画ばかり続けて見ていると「これ、人類、走馬灯まわってるのかな?」と不安になるので、時には午後ローを眺めてひとの心を取り戻さなければいけない、そんな半年でした。劇場では 34 本拝見しました。以下、その簡単なメモです。見た順に「タイトル/おすすめポイント」を記しました。
- IT イット/こどもたちが夏休みで、光り輝く外に自転車で出かけていく毎日。なのにそれぞれに閉じ込められている感じがすごい。まぶしいのに密室。
- 最後のジェダイ(吹き替え)/私の手帳には「まずしい世界 おろかな世界 孤児たち とりかえしのつかないことをめぐる物語 みょうちきりんな映画」とあります。
- カンフートラベラー 南拳/2018年このあらすじがすごい大賞。「危機的状況に追い詰められた人類を救うため、未来からタイムスリップしてカンフーマスターに指導を受けるロボット戦士たちの奮闘を映す(シネマトゥデイより)」見ていない方には一読で理解不可能な文言では。あらすじをまとめた方には何の罪もありません。誰にも、何の罪もありません。
- 勝手にふるえてろ/原作の雰囲気にすごくよく似てる。それが奇跡のように思える。
- スリー・ビルボード/「なにかがすこし遅れて届く」あるいは「思いがけない相手から届く」といったことの積み重ねで開放的なラストに至る。
- ダークタワー/人間が長くひらひらしたものをまとってくるくるターンしたりするのがいい。
- デトロイト/うぁぁぁ。
- パディントン2/みんな生き生きしてる。
- 修羅 黒衣の反逆/シリーズ:チャン・チェン、かっこいいのに、なんで……
- マンハント/人類に対する夢が広がります。
- はじまりのうた/ピカデリーの爆音祭りで見ることができました。全体に、節度があっていいです。節度飢えきびしいこの頃なればまたひとしおです。
- ロープ 戦場の生命線/後片付けや調整、微調整、といった「ととのえる」という仕事に「淡々」と「だらだら」の間のどこか、つまり、普通の構えで臨むみなさんを映してるだけで、すごくおもしろい。
- 15 時 17 分、パリ行き/「友達が酔っ払うといつもする話」みたいな味わい。
- ブラックパンサー/きれい。
- シェイプ・オブ・ウォーター/生命力がぶわっと香る。
- 花咲くころ/ひどくリアルに、むき出しで進む話の中で、銃の経緯だけが映画的。
- 空海/空海の歩く後ろ姿が意外ときれいでよかったです。
- しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス/誰とペアを組んでも違和感があるイーサン・ホークですが、サリー・ホーキンスとのタッグはそこがとても良かった。この夫婦、この物語に合ってた。
- 長江 愛の詩/長江を遡ると、時間も遡る……
- 馬を放つ/なにかが失われていくという事態を「告発」とも「糾弾」とも違う文体で描いている。
- 毛虫のボロ/ど迫力。
- トレイン・ミッション/好きすぎて説明できない。どのシーンもつぶつぶとして、大好き。エンドクレジット大賞を差し上げたい。
- ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書/ケイがメガネをもじもじと触りつつも、口角は決して下げず、目をそらさず、あからさまに自分を軽んじている相手と対峙していること、それをわかってくれる人が思いがけないところにいることなど、今思い出してもどきどきしちゃう。輪転機の音に震えました。
- アベンジャーズ インフィニティ・ウォー/トニー・スタークがこの後どうするのか。ドクター・ストレンジやスパイダーマンの最後の言葉が気になります。「気になります」の状態のまま来年まで待たねばならない。
- タクシー運転手 約束は海を越えて/実話もののラストに本人の映像が入るのが苦手なんですが、これはそれがあってよかった。この映画をつくって公開にこぎつけた皆さんのノンフィクション部分がそこに凝縮されていて。
- アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル/すでに公式の場でトーニャからナンシーへの謝罪があって、それとは別にドキュメンタリーがつくられたこともあって、その上でまたこの映画が制作されて、そしてほかならぬこの映画がほんと素晴らしくて、そういうところに、「アメリカ」あるいは「アメリカ人」が繰り返しトーニャ(とナンシー)に謝罪しているんだなあというようなことを考えました。
- ピーターラビット/ぎゅっと詰まっててとても楽しかった。
- ゲティ家の身代金/元実話ものにつきものの非物語的なところがなくて、きちきちっと言動が積み重なってラストに至るのが見事でした。
- デッドプール 2/とても清潔な話だと思いました。
- いつだってやめられる 10 人の怒れる教授たち/イタリアの、職にあぶれた研究者のみなさんがなぜか麻薬捜査にかり出され……というお話でとにかくめっぽう楽しい。三部作の真ん中。前後が見たいです。
- フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法/それでも、この子たちもいつか、何かに背中を向けて立ち去っていく、立ち去っていかなければならないという作り手の気持ちが映像になっていて、今思い出しても「……!」という気持ちになる。
- 万引き家族/じっくり、ゆっくり見せてくれる。それが「タメ」とか「間」とかそういったものではなく、ほんとに愛するのに必要な時間としてあって、満足ゆくまで見ていられて、自然に愛せる。
- リミット・オブ・アサシン/「ジョン・ウィック」とはまた違ったみょうちきりん感。とても楽しい映画。
- ビューティフル・デイ/ジョーの言葉のなかにすっぽりはまって、その中で彼や彼女の息づかいを聴いている感じだった。
- 女神の見えざる手/「一方、このときスローンさんは実は……」と常に常に想像させられる。見つつ想像しつつ裏切られつつ。そしてラストが最高なの。
- ドリーム/「宇宙に出る」なんて最先端のことをしながら、棟から棟に移動するには走らなければならず、人種差別があり性差別があり、一人一人たった一回の人生を素人として懸命に歩まなければいけない感じがテンポ良く、つまり余裕をもって映し出されていて、素直にがんばろうと思えた。