プール雨

幽霊について

有楽町にて

「あたくし、今度のサーヴィスデイは新宿とかいう大都会に行って『ねじれた家』を決めてこようかしら」

とつぶやいたら、優しい御方が

「もしもし、あなたの言っている角川シネマは有楽町の方ですよ」

と教えて下さり、あれよあれよと二人ででかけることになりました。

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有楽町は高架下が楽しいところです

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お昼時には高架下のお店に行列が

有楽町の角川シネマはビックカメラのビルに入っています。スクリーンはひとつだけですが、大きいし、すり鉢型の客席が美しいです。こじゃれたポップコーンを売っています。

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美しいカーブ

アガサ・クリスティーの『ねじれた家』は第二次世界大戦終戦後まもなくの刊行で、舞台もその辺り。ロンドンでレストラン業を営んでいたギリシャ人、アリスタイド・レオニデスが、戦中あやしいことをして莫大な資産を築き、レストラン業は次男に任せ、自分は若い後妻と結婚し、戦争も終わったしこれからは悠々自適に、ということろで何者かに殺害されてしまいます。容疑者は彼の建てた「ねじれた家」に住む家族全員。向かない会社経営を任され、資金繰りに苦しむフィリップか、長男であるにもかかわらず会社を任せてもらえなかったロジャーか、それとも 20 歳も年の離れた後妻か……というお話。

戦後ものです。戦後ものだっていうのが、原作よりぐっとくっきりとわかりやすくなっていました。主人公のチャールズとソフィアがなぜカイロで出会ったのか、そこでチャールズは何をしていたのか、殺害されたソフィアの祖父が戦時中そして戦後になってもおこなっていた汚い商売とはどういうものなのか、そうしたことはむしろ最近の方が「常識的に」はっきりと語られるようになったかもしれませんね。

また、戦時中にビジネスで成り上がった大富豪がその後どのように生き抜いているかを知っている現代の我々であれば、原作のような展開はちょっと飲み込みづらいものがあるかもしれません。

そうした、原作ではああだったけど、今だとあれはちょっとあのままだとあれだよなあ、どうするのかなあと思っていた様々なことが、かなり潔く脚本上でも映像上でも処理されていて、「なんか、キリッとした映画だな」って感じがしました。

 と、冷静なふうで書いていますが、結構、かなり、おもしろかったです。言葉はぎりぎりまで削られていて、各登場人物について(原作にあるような)釈明はないのですが、一言一言が効いて、いくつかのシーンで胸をかきむしられました。

印象的なダンスシーンが三回あって、そのどれもとても切なくて。いいダンスシーンでした。

そんなわけで短いエンディングが終わってぱっと灯りがつくと立ち上がり、前方に友人を見つけて手を振りました。彼女も感極まった表情で手を振り返してくれました。

そのあとは甘い物を食べて散歩して餃子食べてビール飲んで解散しました。

午後三時くらいから五時間ちかくしゃべっていたのですが、まだ話せる、いくらでもと思う私たちです。