プール雨

幽霊について

ここんところ見ていた映画に不規則三行コメント!

「三行コメント」とははてなハイクで行われていた遊びです。

「今日観た映画(DVD)に3行コメント!」というお題がありまして、ここにハイカーは日々、せっせと映画の感想をため込んでいたのです。「三文」でも「三項目」でもなく「三行」というのがみそで、「行」というのは見る人の環境によって長さが変わりますから、実態としては「三項目」なんですけれども、その各項目内でどれだけ長くなろうと、「いや、環境によってはこれで一行かもしれないじゃん。横長のモニターにちっさい字で表示したりすれば」と豪語できるという。なかには堂々と四項目、五項目書き、映画に対する熱を表現される方などもいらっしゃって、なかなか乙なものでした。

昨日は水曜日。あちこちの映画館でサーヴィスデイを展開してまししたので、久々にはしごをしました。まずは、ピカデリー新宿から。

先日、別の映画館で見た「新聞記者」の大きなパネルを撮りつつ、開場待ち。

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朝いちばんで人がいなかったので撮りやすかったです。
  • すでに感想は書いたが書く。
  • ニクソン政権下のアメリカのように暴走する権力をペンの力で止めた経験も、光州事件のように学生から始まった民主化の波が一般市民に波及した経験もない。そんな日本語そして日本史という環境下でどれほどのことが映画でできるかということを考え抜いて粘り強く作られた傑作。
  • 「映画としては今ひとつ物足りない」という感想をちらほら見るのだけど、今ひとつ物足りないのは、一人一人の市民が市民として自立し、その上で連帯し助け合った成功体験を持たない現実の方なのではという気がする。でも、よくよく考えれば色々あったはず。気が重くなるようなことが続くけど、その中でも色々あるはず。この映画で吉岡がたどり着くところも薔薇色の成功ではないけれど、決して小さくない達成があって、ああしたものをこつこつ積み重ねていく以外にないと思う。
  • 映画は静かでなければならない、映画にはアクションがなければならない、映画にはミステリがなければならないといった、古典的な映画像にしっかり応じている。
  • 俳優陣の表現が禁欲的かつ創造的ですばらしかった。

『新聞記者』のことを考えていたら開場しましたので、エレベーターに揺られて当該開場に向かいました。チン! とエレベーターが到着してしゅっと扉が開くとそこには

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高まる期待。

ばばーん!!

と、新しいワイルド・スピードの巨大ポスター。

すごい。おもしろい。なぜかはわからないけど、これだけで楽しい。これを目にしただけで「元は取った」という気分になれる。わけがわからない。どうなってしまうんだろう、このシリーズ。

が、見るのはもちろんこれではなく、

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じゃじゃん

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』!

アベンジャーズ:エンドゲーム』という帚星のしっぽ部分のようなこの映画。彗星のしっぽにぶわっとなでられて、喪中だなあと、悲しくも楽しかったです。

夏休みの研修旅行でアメリカの高校生がヨーロッパに向かいました、となったらそれはもう当然事件が起こります。高校生達のヨーロッパへの憧れにつられて私も冒頭からわくわくしました。

  • トニーったら、もう!!
  • サノスは「起きて寝言を言う」タイプの悪役でしたが、今回のは嘘つき〜〜。より現代的になっています。
  • 一度嘘にはまって嘘を構築し始めると簡単には足抜けできないよ、と。
  • 二種類の「信じる」って言葉が出てきました。ただ信じるという意味の「信じる」と「なにかを信じたい」と願い、信じられるものを待望している場合の「信じる」と。
  • 私自身は常に相手の言うことは 100% 信じて臨んだ方が結局は早道と思っているので、大体信じるのですが(仕事上では)、「かっこ」つきで信じている感じかなあ。疑ってかかるのは手間がかかる。信じて臨んだ方が矛盾などに気づきやすいし、嘘もしくは誤りだとわかったときの反応も早い。
  • とはいえ、私は「信じる」ってことがよくわかっていないのかも。でもピーターの信じ方は体感的に、素朴なレベルでわかる。
  • ちなみに、友だちや家族は「信じる/信じない」の問題ではないです。あなた方と「信じる/信じない」の問題の枠組みで接したことはありません。
  • ピーター・パーカーに輝かしい青春を送ってほしい、楽しんでほしい、と思うのが人情というか。
  • 世にもかわいいカップル。この MJ かわいい!
  • アメリカ映画における「オランダ最高」のイメージ。
  • となりに座った若い方が、ピーターが転んだり何かにぶつかったりするたびに、「はっ……」と口を手で覆うのが見えて、素敵だと思いました。
  • 生身のピーター・パーカー、かっこよかった!

「もっと見た〜い、ずっと見ていたい!」と言うお嬢さん方を視界の隅にとらえつつ次の映画館に移動。新宿武蔵野館です。ピカデリーと武蔵野館を結ぶライン上にスパゲッティのお店があるのでそこでナポリタンを食べます。口がてらてらになります。

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うしろにゾンビも見えます

ポール・ダノにはずれなし」と言われる(注:雨子がひとりで言っている)、ポール・ダノ初監督作『WILDLIFE』。ジェリー(ジェイク・ギレンホール)は妻子と穏やかに暮らしていたが、ある日勤め先を解雇されてしまう。妻、ジャネット(キャリー・マリガン)とは喧嘩が絶えなくなり、逃げるように山火事の消化という危険な仕事に就いてしまう。ジャネットは水泳の教師をしながら、息子のジョーは高校に通いながら写真館で働き三人とも家計を支えるために努力するが、いつしか家族の仲はぎくしゃくし始め……というお話。

ジョー役のエド・オクセンボールドは『ヴィジット』の弟。どっかで見たな〜と思っていたんですが、あの子か〜。大きくなりました。

ジャネットは夫が出て行ってしまうと何か、箍がはずれたようになって、突然美声で話し始め、装いもぐっと素敵になってしまう。そして息子の前で夫以外の男を口説く。何かことが起こる以前に、精神的には彼女はとっくの昔に一線を越えてしまっていたんですね。
わかりやすく考えると、ぐれた、ということになってしまうのでしょうけど。

  • 経験したことのない山火事。その匂いにずっとつきまとわれる。
  • ジャネットの行き場のないかわいらしさ、美しさが切ない。
  • 荒涼とした街、広々としているのに、子どもにとっては行き場もなければ夢もなく、少年が憧れる大人もいないという密室感が辛い。
  • それでも学校をさぼらず、バイトをまじめにし、自分で自分の晩ご飯を用意する。えらい。とてつもなくえらいぞ!!
  • ぽかーんと広いだけの風景の中央ふきんにぽつんとたたずむ人物のショットが繰り返されて、切ない。
  • ちっともきれいな風景じゃないのに、切り捨てるわけにいかない、放り出すわけにいかない、辛い。
  • この手のダメ親ものでは、二人組の片方がだらだらを重ねて、もう片方がたまりかねてぐれてしまってどっかーんということになったとき、「もうちょっと待っていてくれたら大丈夫だったのに」という描写が入るけれど、「どっかーん」を目の当たりにして目が覚めたにすぎないわけで。
  • 「どっかーん」後の静けさが良かった。

というわけで、突然のジェイク・ギレンホール祭りでした。