あきらめました。
掘っても掘っても見つからないので思い出せる限りでメモします。
1. 偽史、偽書もの
偽書で歴史を好きなように書き換える行為は死者の口をふさぐようなもので、やっていいことと悪いことの分類でいうと相当悪いことだと思います。でも、偽書はなくなりません。書くこと、語ることにはどうしても演技や嘘の要素があって、偽書づくりに飛び込んでしまうきっかけはどこにあるかわかったものじゃないってことなのかなあ。
2. 言葉をめぐる本
- 山下泰平『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本』
- 温又柔『来福の家』
- ロンブ・カトー『わたしの外国語学習法』
- 齋藤兆史、野崎歓『英語のたくらみ、フランス語のたわむれ』
- サンキュータツオ『ヘンな論文』
- 『田村隆一詩集(現代詩文庫)』
- 『続・田村隆一詩集(現代詩文庫)』
- 宇多丸『ライムスター宇多丸の映画カウンセリング』
このジャンル(注:雨子の勝手な分類)では何と言っても『舞ボコ』という久々の大ヒットがあったのが大ニュース。ちょうどアベンジャーズの『エンドゲーム』を見たころだったので、「物語作家のあきらめの悪さ」みたいなものを味わいました。
3. コーヒー
- 井谷善惠『アガサ・クリスティーとコーヒー』
- 臼井隆一郎『コーヒーが廻り、世界史が廻る』(再読)
- 臼井隆一郎『アウシュビッツのコーヒー』(再読)
- 片岡義男『珈琲が呼ぶ』
こういうのはコーヒーじゃなくても紅茶でも砂糖でも柑橘類でも何でもいいのですが、たまたま私は親戚が珈琲屋さんで、小さいときから身近だったのです。おいしいなと飲みながらも頭の隅でいつも「不思議な経緯を踏んだ飲み物だ」ということがちらちらとうごめいています。その「ちらちら」を『コーヒーが廻り、世界史が廻る』は落ち着かせてくれ、『珈琲が呼ぶ』はむしろ散らかすという感じで、コーヒーに関する読書はいずれにしろざわざわするものです。
4. ミステリ
- アンソニー・ホロヴィッツ『カササギ殺人事件』
- 高野和明『グレイヴディッガー』
- アガサ・クリスティー『ねじれた家』
- エラリー・クイーン『Xの悲劇』
- エラリー・クイーン『Yの悲劇』
- 丸谷才一『探偵たちよ スパイたちよ』
- J・P・トゥーサン『ムッシュー』
- チョ・ナムジュ『82 年生まれ、キム・ジヨン』
『ムッシュー』と 『82 年生まれ、キム・ジヨン』はいわゆるミステリではないのですが、語っているのがどういう人間かというところにしかけがあるので、ここに入れました。『探偵たちよ スパイたちよ』には小林秀雄と江戸川乱歩の対談が収録されていて、「昔の対談は適当だな」と思わずほほえんでしまうようないいかげんさがあって、それが今読むと楽しいです。小林秀雄が『アクロイド殺人事件』に本気で腹を立てているので、好感度が上がりました。この中で普通に「おすすめです!」と言えるのは『グレイヴディッガー』と『82 年生まれ、キム・ジヨン』かな。どちらも読み出したら止まりません。
5. 東山彰良/津村記久子/綿矢りさ/今村夏子/……
- 東山彰良『夜汐』
新刊が出たら大体すぐ買って読む構えでいる作家が何人かいて、2019 年上半期は東山彰良の新作を読みました。幕末ものでした。幕末は支離滅裂で、理もへったくれもなくなっていくなか、「哀れじゃない新選組」を描いたところがこの人らしかったかなと思います。
6. 気まぐれに手に取って読んだもの
- 岩村暢子『残念和食にもワケがある』
タイトル通りの本。和食好きな人からすれば眉をひそめた食卓にも理由や事情があるのです、というレポート。
- 川上和人『鳥類学者だからって鳥が好きだと思うなよ』
いち研究者のドタバタした日々。本人はたいへんそうだけど、楽しい本でした。
おしまい