日本銀行の脇を通って、
三越だ〜。「今日は帝劇 明日は三越」の三越だ〜と思いつつ歩く日本橋です。
日本橋、ぺかぺかしていて、心なしか他の街より暑かったです。実際この日は暑かったので、どこにいても暑かったのでしょうけど、街がまぶしくて。あんまり逃げ場所もないし。
そんな颯爽とした街を、へろへろと歩いて、三井記念美術館で開催中の『日本の素朴絵 ゆるい、かわいい、たのしい美術』を見てきました。
長い日本美術の歴史上、表だっては出てこないものの、時々ちらっちらっと私たちの前に姿を現しては「……!?」という反応を引き出してきた素朴絵が一堂に会しました。
七つある展示室の二つ目を見終えるころにはすでに「……これ、どうやって集めたんだろう?」と不思議な気持ちになりました。
そもそもこの「素朴絵」は矢島新が提唱する新概念。
リアリズムを目指さないおおらかな具象画というほどの意味をもたせようとしたのだが、新たな言葉を造ったのは、日本語の中にも適当な言葉が見当たらなかったからだ。
矢島新「素朴絵の系譜」『特別展 日本の素朴絵』図録より
これまで、ひとつのまとまりとして対象化されることのなかったものにスポットを当てているので、それには確かに新しい言葉が必要です。
おもしろいなあと思ったのは、この展覧会の英文タイトルをめぐってのどたばたです。「素朴」の訳語がみつからないのです! simple でもない、naive でもない、unsophiscated でもない、と専門家とともに検討に検討を重ねてたどり着いたタイトルは " Soboku-e : Japanese Innocent Paintings through the Ages "。Innocent かあ。主催者側はまだ、ぴたっと納得しているわけではないそうです。それでも Innocent で行こう! と飛躍して決着した瞬間を想像するとおもしろいです。
" through the Ages " ってことですが、これがほんとに時間的にかなり長いスパンで、古墳時代から江戸後期の南画や禅画までを一挙に見ることになりました。たっぷりしていました。
描き手はいわゆる庶民ということになるのですが、時々、「あっ、これは描ける人がさらさらっと描いたんだな」という、プロによる素朴絵もあって、そうするとさら〜っと見られる。うまいって確かにすごいです。
でも、うまくないけど一所懸命な絵はぎくしゃくしていて、見ていてすっと次に移れない、一回一回つまずくような感じがあって、とっても楽しかったです。
図録やグッズも充実していました。
図録の角が丸いのでとてもうれしいです。めくりやすくなるのです。
ふあ〜っとぼんやりした調子で表に出ると、そこは灼熱の日本橋。島根の料理が食べられるお店があったのでぱっと入って島根名物のがいな丼をいただきました。
最後はお出汁を入れて、お茶漬け風にして食べるのです。おいしいものでした。このあと、長崎の物産館にも寄って、そこで「長崎出身の方ですか?」と期待をこめた目で見つめられたり、買おうとした石けんが意外と高価でびっくりしたりしつつ帰ってきました。
おわり