プール雨

幽霊について

開幕! 夏のファン・ジョンミン祭り

アジアのアイドル、世界のアイドル、ファン・ジョンミン。

みんな大好きファン・ジョンミン。

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『華麗なるリベンジ』では罠にはめられる検事、『コクソン』ではジャージのアップリケが印象的な霊媒師、『傷だらけのふたり』ではカタギに恋する闇金のお兄さん、そして『新しき世界』ではチョン・チョン……チョン・チョン、チョン・チョンに会いたいよ〜〜〜〜!!

というわけで、正気を保つために「ファン・ジョンミン祭り」を開催しました。

 

8 月 3 日『国際市場で逢いましょう』(録画)

ファン・ジョンミンは朝鮮戦争のときに離ればなれになってしまった父と妹を探しながら働きぬいたユン・ドクス。老人になったドクスが孫の手を往来で離しそうになった瞬間、彼は少年時代に引き戻される。妹の手をつかんで興南から脱出しようと必死で走った日に。第二次世界大戦朝鮮戦争ベトナム戦争も終わって、今は穏やかに日々を暮らしているのに、ドクスは辛かったときをつい、思い出してしまう。

すべては基本的にドクスの思い出として語られます。そのためなのか、朝鮮戦争、西ドイツの炭鉱への出稼ぎ、ベトナム戦争と、とても過酷な思い出なのに、過酷すぎないというか、どこか「お話」めいていて、それが良いと思いました。

このドクスが誰にむかってその思い出を語っているのか、誰に話しかけているのか、ということは終盤明らかになります。だから、一生をともにした友人がいたこと、辛い出稼ぎの最中にすてきな女性にあって恋に落ちて結婚したことなどは、とりわけじっくり語られていくことになり、「そのため」と言ったらいいのか、「なのにむしろ」と言ったらいいのか迷うところですが、語りながら「辛かった、辛かったよ」と泣き崩れる場面がより胸にせまりました。友だちがいるんだ、妻もいるし、店も開いたよと素朴に来し方を語ってきたその筆致とのギャップが鮮烈で、今、思い出しても、喉の奥がぎゅっとなります。

このユン・ドクスという人物の青年時代から現在の老年までを一人で演じきるファン・ジョンミン。ということは、当然、一生をともにした親友(オ・ダルス)と妻(キム・ユンジン)も、一人の俳優が演じきったわけで、その思い切りがすばらしいです。

おすすめです!

 

8 月 14 日『工作 黒金星と呼ばれた男』(シネマート新宿)

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ばばん

金大中が大統領になれるかどうか、そして北朝鮮核武装してしまうかどうかと揺れる韓国で、北朝鮮に潜入するスパイ、パク・ソギョンがファン・ジョンミン。作戦は、実業家を装い、広告代理店を巻き込み、北朝鮮で CM 撮影をとりつけ、さらには観光の誘致も狙っているとアピールし、核開発の情報に近づくこと。

ソギョンが作戦を遂行する最中にも国境で北朝鮮による軍事行動が行われ、朝鮮半島の情勢は緊迫する。しかし、そこでソギョンは、なんだこれは、どういうことだと違和感をもつ。ひとりの部屋で銃の重みを確かめ、考えながら自分のこめかみに当ててみる。銃口を感じながら、一体だれがだれに銃口を向けているんだ? と考える。

ソギョンの作戦が進行すれば、北朝鮮と韓国の交流は広がり、朝鮮半島統一への機運は高まるはずだった。これはそうした、長いスパンの作戦だったはず。

なのに、思いがけないところから思いがけない横やりが入る。

これは一体何だ、だれがだれに銃口を向けているんだ? と考えぬいたソギョンは賭けに出る。「真実を口にする」という賭けに。ふたりの人間がまっすぐ前を向き、直立不動の姿勢で、真実を語るシーンのアクションに、私も自分の首が絞められているような感覚を味わいました。

スパイものでバディものでもあり、冒険映画でもあり、歴史映画でもありました。

大ヒット上映中。私が結末まですべてを書ききってしまう前に劇場でご覧ください。おすすめです!

 

8 月 18 日『ベテラン』(録画)

ヤング・アソータローのようなドラ息子対ファン・ジョンミン。ファン・ジョンミンはオ・ダルス室長率いるチームで働く刑事、ソ・ドチョル。冒頭の二つの逮捕劇はとにかく楽しい。車のトランクの中からファン・ジョンミンがくるーんと登場するシーンなどはほんとにただ単に私たちを楽しませようとしているとしか思えない。

事件が起こるのはそのあとで、賃金不払い、不当解雇などの改善を求める労働争議中に、大企業の社屋でひとりの男が自殺をはかる。一命はとりとめたものの、意識が戻ることは期待できそうにない。

これは財閥のドラ息子のやらかしの結果なのだが、ドラ息子の手法は暴力を知り尽くしたもののそれで、『マッドマックス』のあれと同じ質と水準を維持している。やっぱり、悪いやつの悪い行動というのはそれほどオリジナリティあるものではないらしく、大体、「改竄&隠蔽する」、「攻撃対象自身ではなく、まずまわりを攻撃する」、「賄賂で抱き込み巻き込む」といったことに終始する。まとめると、単独で行動している個人を暴力の構造に巻き込んで抜け出せないようにして支配することに尽きるわけで、これに対抗するには、「ちょっとした改竄」だとか「ちょっとした賄賂」だとかの時点でつっぱねる肝の太さが必要で、それを短時間にびしっと表現するのが、ソ・ドチョルの妻、イ・ジュヨン。ドラ息子の秘書から現金の詰まったブランドもののをバッグを手渡されるや、「これ、持ってるわ。意外とつかいにくいのよ」と言いながら、中からその現金を出し、喫茶店のまわりの客に見えるように、聞こえるように、「なにこれ!?」と言う。そして、その足で警察に赴き、ソ・ドチョルに顛末を話し、決然と言い放つ。

「堂々と生きましょ」

ソ・ドチョル、よかったね。

ソ・トチョル、なんとすばらしい妻と人生をともにしているの?

もちろんドチョル本人もすてきです。財閥のドラ息子は当然、警察の幹部ともつながっていて、ぐいぐい巻き込み、捜査を妨害します。

そんなことであきらめるドチョルではありません。あきらめないドチョルとチームは粘り強く捜査を重ね、証人を見つけ出し、徐々に包囲網をせばめていきます。その彼が、ヤング・アソータローの秘書にかける言葉が印象的です。ヤング・アソータローの秘書はすべての罪を自分がかぶって自首することで事態の収拾をはかろうとします。秘書にドチョルは尋ねます。

「(ドラ息子が)謝罪すれば済むことなのに、なぜ?」

ほんとだよ。

ほんと、そうよ。問題を明らかにすれば済むことなのに、なぜいちいち改竄&隠蔽&懐柔&脅迫&暴力に打って出るのでしょう。時間もお金も人間ももったいないじゃん。

あまりにおもしろくて、ラストまで書いてしまうところでした。

とにかく、おすすめです!

 

まとめ

ファン・ジョンミンにはずれなし。

ここで問題です。以下の画像は、私が上記の映画を見ている最中に残したメモです。一体、どの映画について書いたものでしょう。

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