プール雨

幽霊について

高畑版『赤毛のアン』第 36 章「物語クラブのゆくえ」、第 37 章「十五歳の春」

 29 章で始まった物語クラブも、クイーン組のアンたちと受験しないダイアナとで熱意に差が出てしまい、解散することになりました。
 ダイアナはみんなが物語クラブを重荷に感じていると知ってしまい泣き出しますが、同時に、自分たちがもう、殺人だの、駆け落ちに秘密なんていう物語を書いて楽しんでいられる子ども時代を過ぎてしまったことを自覚してもいて、「もう子どもじゃないのよ」と言って物語クラブを終わらせます。そして、37 章ではアンは 15 歳になっており、すっかり落ち着き、「心の友」や妖精の話をマリラにすべて話すこともなくなり、マリラは寂しさに泣いてしまいます。
 原作では、この二章は一章分で、とくに物語クラブの行方はほんの一言で済まされていることに驚きました。アニメでは第 37 章「十五歳の春」に向けて、ゆっくり、丁寧に、流れる小川を描写してきて、徐々に子ども時代に背を向けつつあるアンを描いてきたんだなあと思います。
 原作のタイトルは「第 31 章 小川と河が出会うところ」。松本侑子訳『赤毛のアン』の注によれば、ヘンリー・ワズワース・ロングフェローの詩『乙女』の一節で、詩は「女らしさと少女らしさがかけ抜けていく!」と続くそうです。まさに十五歳のアン・シャーリーです。
 アニメの終盤で効いているのがレイチェル・リンドで、アンが自立しつつある寂しさを抱えるマリラのそばには、レイチェルが変わらずにいてくれました。マリラとマシュウを支えるレイチェルの姿が頼もしかったです。ミス・バリーがマリラをファースト・ネームで呼んで友情を示したのもすてきでした。