あなたは、心理試験というものの弱点について考えられたことがありますかしら。デ・キロスは心理試験の提唱者ミュンスターベルヒの考えを批評して、この方法は拷問に代るべく考案されたものだけれど、その結果は、やはり拷問と同じように無実のものを罪に陥れ、有罪者を逸することがあるといっていますね。ミュンスターベルヒ自身も、心理試験の真の効能は、嫌疑者が、ある場所とか人とか物について、知っているかどうかを見いだす場合に限って決定的だけれど、その他の場合には幾分危険だというようなことを、どっかで書いていました。あなたにこんなことをお話しするのは釈迦に説法かもしれませんね。でも、これは確かに大切な点だと思いますが、どうでしょう
(江戸川乱歩「心理試験」『江戸川乱歩全短編 Ⅰ 本格推理』p.67 より)
こんばんは。ぽーちゃんです。
今夜は月がきれいですね。
月は昨日もきれいでした。
ぽーちゃん、こないだ、西村京太郎サスペンスをテレビで見ました。
ぽーちゃん、犯人の人、すぐわかりました。
それで考え込んでしまったのです。
犯人は、某さんに会ったことありますか? と刑事さんに質問され、「一度も会ったことありません」と即答していました。
刑事さんは「何か隠しているな……」とすぐわかってしまいました。
どうして、「一度も会ったことがない」などと即答してしまうのでしょうか。犯人じゃなかったとしても、すくなくとも、嘘をついていることはすぐわかってしまいます。
だって、「会ったことある」なら即答してもおかしくないですけど、「会ったことがない」を即答できるって変だからです。いっしょけんめいにうーんうーんと記憶を掘り進めて、そして、会ったことないなあと思ったとしても、だって、ぽーちゃんが忘れているだけかもしれないし……と戸惑うのが自然な心の動きというものじゃないでしょうか。
雨子も「『一切……ない』『決して……ない』は嘘つきのしるし」って言ってました。
雨子とぽーちゃんは江戸川乱歩を読んでいるから知ってるんです。
でも西村京太郎サスペンスの見どころはそこじゃなくて時刻表トリックだから、見ている人も最初の方で「あ、犯人だな」って気づかないとおもしろくないので、ドラマ上それはしかたないんです。
類似の見識としてはざべすが「鉄板のアリバイがあるやつが犯人よ!」ってことを言ってました。西村京太郎的境地だと思います。
📚 おしまい 🚋