プール雨

幽霊について

こんな夢を見た

 りつこさんと会うのは久しぶりだ。

 パンデミックがみんなを隔てていたから、マスクなしで人と会うことに関して私たちはリハビリ中だ。

 りつこさんに会えると思うととても広々とした気持ちになる。

 りつこさんは徳が高く、口が悪い。

 生きとし生けるものを言祝いでいる、その徳の高い言語体系にきらきらと輝く「きもい」という言葉を、りつこさんに出会ってから何度か聞いてきた。りつこさんの口にする「きもい」はきりっとしていて余計な付帯物がなく、潔い。

 あんな「きもい」を私も発音してみたいと憧れを抱いている。

 今日は、りつこさんと、りつこさんの姪御さんと食事だ。姪御さんとは初対面だ。小学校高学年くらいだろうか。無口だが不機嫌ではない、すてきな人だ。

 私とりつこさんは強い酒を頼みつつ、姪御さんには「今日は食べたいものなんでも、飲みたいものなんでも頼みなさい」と命令した。それで彼女はいきなりチーズケーキを食べ出した。チーズケーキはおかずになるのだという。長方形のチーズケーキをゆっくりとけずりながら食べているところを見ると、「お酒にもあうのかな?」という気持ちになってきた。じゃあ私も頼んでみると言いかけると、姪御さんはにっこり笑って、「じゃあ、私のをあげる」と言った。え、いいよいいよ、好きなんでしょ、めしあがれ、と応じると、「ううん、食べてほしいの」と私に皿をよこした。

 お皿の上のチーズケーキは、私の前に来るとなんとすきやきだった。ある角度から見るとチーズケーキで、真上から見るとすきやきなのだった。

 とても驚いた。