『ベイビー・ブローカー』を見ました。
教会の赤ちゃんポストに預けられた赤ちゃんを盗み出して養子として斡旋し違法に礼金を取るサンヒョン(ソン・ガンホ)とドンス(カン・ドンウォン)の二人組と、その現場を押さえたい刑事スジン(ペ・ドゥナ)とウンジョ(イ・ジュヨン)。そこにソヨン(イ・ジウン)が赤ん坊を預けに来たことで釜山からソウルまでの逃走&追跡劇が始まるのでした。
とても変わった映画で、味わったことなのない感じを味わっているなあと思いながら見ました。ちょっと気持ちが散らかっていてまとまらないので、箇条書きにします。
- 生き死ににかかわるハードな題材なのに、時折そうしたハードな映画を見ているときに生じる「脅されている感じ」がまったくない。
- 多分、テキストだけをつないでいくと変な感じになるのだと思う。
- 味わったことのない、奇妙な解放感。
- 親になれない、なりきれない人たちがきっぱり親であることから降りようとしたり、なんとか親になろうともがいていくいきさつの中で突然、親の位置に押し流される人がいて、その人がまた、親になりたいと切望する人たちと親とを結びつけようとする。
- スジン(ペ・ドゥナ)側により重点を置いた映画になることもありえたと思うけど、そうすると赤ん坊の父親の存在が重くなるからなあ。
- 現に、ばりばりに、何のためらいもなく親である人が出てこない。親であることから降りようとしている人、親になることを諦めている人、親の位置から追放された人、親になりようもないと思い込んでいる人、親を騙っている人、親になりたい人、そういう人たちのこと。
- 多分、台詞だけをつないでいくとおかしなことになる。
- でも、画面がとてつもなく豊かで落ち着いていて、俳優陣が充実していて、どのシーンも印象的。
- ソヨン(イ・ジウン)が洗車の後で、今までこんなに安心したことはなかったし、これからもないだろうとかみしめているような表情を浮かべた辺りから、ソヨンの声が浮き上がって聞こえるような状態になってしまい、とても不思議な気持ちだった。
- 終盤、「語り手スジン」登場、というか映画の語り手が彼女にスウィッチした瞬間もとても驚いた。ペ・ドゥナでなければあの声の変化は演じられないと思うほど、説得力のある声でした。
そして、酒を飲み、そばを食べました。
私はペ・ドゥナが好きです。スジンは物語の冒頭から間違った状態、何らかのストレスにさらされた状態に晒されていて、でもそれを支えてくれる後輩も夫もいて、じーわじーわと考えて考え抜いて、「間違ってた」と表明するんですけど、そのときの解放感がすごかったです。
不思議な映画を見て、お酒を飲んで、ディスクユニオンでCDを買って、炎天下を歩いて近所のユーカリにたどりついたときの自分の気持ちを言葉で表せません。
今自分がどこにいるか、よくわかりません。
🎥 おしまい 🎦