プール雨

幽霊について

啄木問題

 こどものころ、お医者さんなど、手に技術ある系のおじさんが石川啄木の悪口を言うというブームがあった。「文学者だの文豪だの働きもしないで偉そうに」という恨みつらみ的なものを、借金だらけで夭折した啄木にぶつけていたのだけど、なぜその代表が啄木であって太宰や中也でないのかが不思議だった。顔かな、などと思ったものである。
 啄木のお父さんという人は寺の住職で、なにかやらかして、村からその職を解かれてしまったという経緯があって、啄木が小学校の代用教員の職に就けたときの本人の気合の入りようときたら半端なかったと思う。村で生きていけるきっかけをつかもうと。しかし、一所懸命、児童を指導するあまり、「よけいなことまで教えるな」的な状況が生まれ(補習などもしていた)、やはりこの村ではやっていかれん……と事態が決定的になってしまった。
 だから何だっていうあれではないんだけど、たまに、若い人で、「啄木なんか!」と言う人を見かけると 1970 年代にタイムスリップしたような気になる。