ざべすよ!
ざべすきのう、映画につれていってもらいました。雨子と、雨子のおともだちお二方といっしょだったのよ。
まず、映画館に入場しました。会場はビルの 6 階にあります。エレベーターに監視カメラのモニターが据え付けられているので、ざべす、ここでいつも身だしなみをととのえます。うまく映るのが難しいです。雨子は頭部のあぜ道をチェックします。
入場するやいなや、雨子が『毒戦』という、来月かかる映画のポスターやパネルをせっせと撮影しだしました。必ず見るそうです。ジョニー・トーさんという方の作品の、リメイクなのだそうです。雨子はリメイク元を見たとかで、「だんぺんてきにしか思い出せない」と言って「死刑……」という気になる単語をつぶやいたあと、「ちがったっけ?」と言いましたが、ざべすに聞かれましてもこまりますわ!
『毒戦』はさておき、一本目は『感染家族』。ざべす、これ、とっても楽しみにしてました!
見渡す限り農地と山々がつらなる中ににょっきりとまっすぐな道があって、その道沿いにぽつんとガソリンスタンドがあるの。そこに住む、どうしてもハワイに行きたいお父さん、長男とその妻(おなかに赤ちゃん)、製薬会社をクビになりたてほやほやの次男、そして無口だけどしっかりしている末娘のパクさん一家が主人公よ。このしーんとした村に、製薬会社の実験によってゾンビウィルス(?)みたいなのに感染した男の子がふらふら〜とやってきて、パクさんちのお父さんが噛まれちゃうの。きゃー! と思ったらなんとお父さんはそれで髪の毛ふさふさになって若返って、パクさん、何飲んで若返った? それ教えて、って言われたもんでこれさいわいとみんなからお金をせしめてゾンビくんにがぶーとやらせるの。お父さんは若返ったもんでお金をもってハワイに行っちゃったから幸せでよいんだけど、問題は残された兄弟&兄嫁&お腹の子&末娘&ゾンビよね。
ざべす、その後の経緯にとっても感動したので、最後まで全部書いていいかしら?
雨子が「よせ」って言うのでよすわね!
とってもすてきなロマンチックラブコメディだったのよ。目と目が合った瞬間何度もミラクルが起こるの。
雨子は「兄嫁界に新たなスター誕生」って言ってます。
ざべすはさみしい村にぽつーんとあるガソリンスタンドから花火が上がった場面がだいすきです。くらくてさみしくてとってもきれいだったの。
二本目はこちら!
大スター、トニー・ジャー、イコ・ウワイス、タイガー・チェンが一堂に会しました。ムエタイ、シラット、カンフーが一度に見られる豪華な映画です。
大富豪の令嬢が、遺産を犯罪撲滅のために寄付することにしたの。そしたらわるいひとが彼女をころそうと……ころしてどうなるのか、ざべすにはいまひとつわからなかったのですが、とにかくそういうことをしようとしたので、その作戦に巻き込まれたトニー・ジャーとタイガー・チェンは令嬢を守るため、そしてイコ・ウワイスはその作戦のせいで妻をころされた恨みに始末をつけるため、テロリスト集団と相対するのです。この、テロリストのみなさんがとっても大きくて、とっても強いの。ごつごつむきむきしていて、銃で撃たれても平気そうな体で機敏に動きます。到底、勝てそうにありません。だから小柄な三人は共闘するのです。だれかにピンチが訪れる度に疾風の如くほかのだれかが現れて守ってくれるのよ。とってもはらはらしました!
三人は、ちゃんとごはんも食べます。大事だと思います。ごはんをつくって、じっくり食べて、たくさんビールを飲みます。そして、罠にはめられて死にかけたその恨みを必ず晴らしてさっぱりした暮らしをするぞーという目標にむかって邁進します。その計画とは
- けんめいにはたらいておかねをためる
- そのおかねで武器を買う
- うらみをはらす
というものです。とっても単純です。ざべす、すてきだと思いました。同時に、ちょっと頼りないなという気もしました。でも、その単純さをこつこつこつこつこつこつ丁寧に積み上げたら、けんろうなお話になっていたのです。
感動しました。
この日は『感染家族』から数えて三回くらい涙しました。はあ、おもしろかった。
おもしろかったね、かっこよかったねと言い合いながら、映画に出てきたシンハー・ビールを飲めるお店を求めてしばし流浪したのち、ついに飲むことができました!
タイガー・チェンさんに敬意をはらって、タイガーというビールも飲みました。サイゴンというのも飲みました。ざべす、いっぱい、ビールを飲みました。
宴は主にえびを食べながら続きました。ざべす、おとなしくみなさんのお話を拝聴しました。基本的によくわかりませんでした。
キアヌ・リーヴスさんというひとが道に落ちていたそうなのです(注:『ブルー・ダイヤモンド』という映画の話)。それを女の人が拾っておうちに連れて帰ったら、翌朝フレンチ・トーストをキアヌさんが焼いてくれて、そのあと、たいへんなことになったのだそうです。
それで雨子たちは真剣な表情で「キアヌが道に落ちていても拾って連れ帰っちゃいけないっていうきょうくんね」「キアヌは拾ったらダメよ」「トム・クルーズも拾ったらだめよね」「トムだったら通報もダメよ」「金城武は?」「保護する」「金城武はしょうがない」「今日のゾンビも保護する」「当然よ」「アンディ・ラウは勝手に帰ってくれそうだから保護する」「でもルイス・クーが迎えに来たらどうするの?」「そこはアンソニー・ウォンで」「ケヴィン・ベーコンは?」「いいベーコンか悪いベーコンかふつうのベーコンか判断できないからダメ」「それに結局ベーコンよ」とかなんとか言っていて、夜は更けていきました。
ざべす、ばけついっぱいのフライドポテトが思い出に残りました。ばけつのポテトにチーズをかけて、お店の人がしゃかしゃかしゃかしゃかと振って、それをざーとお皿にあけてくれたの。
楽しい映画見て、おしゃべりして、ビール飲んで、よっぱらって帰ってきました。
これは帰り道、よっぱらった雨子が撮った月の写真です。
雨子は写真がへたです。
でもまた映画会につれていってほしいです。