プール雨

幽霊について

「額田王」観測日記

 2016 年 9 月、「額田王」で検索すると、Google様はこのように示唆された。

f:id:poolame:20220114075050p:plain

自分のブログからコピペした

 不思議なこともあるものよのうと思い、スクショをとっておいた。この時点では生没年がばしっと明確に書かれていること、「天武天皇の娘」「親:天武天皇」「叔父:天智天皇」とあることなど、ほとんどの記述に誤りがあります。でも画像が明らかに違うため、つながった瞬間から「この情報は信用できない」というメッセージが伝わることになり、使用者にとってはさほど問題ないのかなとも思います。が、学習中の小中学生や日本語が第二言語の人はちょっと困るでしょうね。学習者はまず「ネットはジャンクが溢れている」ということを観念する必要があります。

 そしてときは流れ、2017 年 10 月、「そういえばあれ、今どうなっているのかな」とまた「額田王」で検索してみました。

f:id:poolame:20220114075055p:plain

一難去ってまた一難

 不思議なこともあるものよのうと、またスクショ。この写真の人はだれ、という以上に引き続き「天武天皇の娘」になっています。とりわけ「両親:天武天皇」の表記がすごいです。どこがどうしてこういうことになってしまうのでしょう。記憶で申し訳ないのですが、このときはリンクの Wikipedia を見て、そっちはそれほど明らかな間違いがないことを確認し、Google の仕様が不思議なことになっているのだなと思いました。

 それで、これは毎年観測していこうと思っていたのですが、その後すっかり忘れ、ときは流れて 2022 年 1 月、久しぶりに検索してみました。

f:id:poolame:20220114075059p:plain

どん!

 表示される画像が上村松篁の絵になりました! 井上靖『額田女王』の挿し絵です。「天武天皇の妃」のあとに不思議な「』」が残っているので、これをトルツメして、生没年を未詳表記できるようにして、「両親」の「両」と「パートナー:中臣大島」をトルツメすれば一応、問題ない感じです。

 「パートナー:中臣大島」と表示されてしまうのは、wikipedia臣籍降下説が紹介されているためなのかな?

 Google の仕様、技術のことはよくわからないのですが、まだまだ現状では「ネットは間違いだらけ」という事態が続いているようで、Wiki の記述は日々アップデートされ鍛えられてはいても Google の仕様が追いつかないという感じでしょうか。

 たまに親兄弟から「もう、本、いらなくない? スマホがあれば」と言われます。それは私の仕事(校閲)を知っての発言なので、「仕事やめてのんびりしたら?」という意味で、親切心から言っているのはわかるのですけど、とっさに「こんにゃろー」と思ってしまいます。

 本のつくりと web のつくりは全然違うので、両方必要だと思います。本は一応、著者、編集者、デザイナー、校正・校閲、印刷と大勢でよってたかって鍛えるもので、それが史料として残っていき、他の史料とともに検討され続けるものであり、またアクセスも非常に容易で便利なものです。とはいえ、いい加減なつくりの本が大量にリリースされているという問題もあり、「本だったら情報源として大丈夫」とは必ずしもいえないのですが。一方、web はもはや情報源として私たちの生活に欠かせないものです。しかし、情報ツールとしてはもうちょっと全体的に「プレーヤーのほとんどが何らかのプロの姿勢で臨み、責任を自覚している」という状態が実現して、今の「でたらめを好きに書ける! ひゃっはー!」みたいな一部の状況をある程度対象化、可視化できるようにならないと、学習者が使用するのは二度手間三度手間を生むので大変かなと思います。

kotobank.jp

 

💻 おしまい 📱