プール雨

幽霊について

荒川静香の詩

 バンクーバーオリンピックかなにかのときに、テレビでアナウンサがー安藤美姫に対して、「日本のためにがんばれ」的なことを言ったところ、すかさず荒川静香が「自分のために! がんばってほしいですね(にっこり)」と言ったのを思い出したなあ。 「自分のために」と彼女はついに言われなかったのかもしれないな、とか、この言葉は安藤美姫には届かないかもしれないな、とか色々と考えたのでありますけれども、あの場でああいう言葉が発されて、ぐっと情報が複雑になったんですよ。情報の向きがばらけたというか、本音めいたものに一瞬触れたというか。言葉自体は使い古されたものだし、そこまでの文言の展開はうんざりするほど新情報ゼロで、誰もちゃんと考えてないってことしか伝わらないものだったのに、そこに荒川静香クリシェをひとつ、乱暴に投げ込んで、そのことで急にその場が輝いたのだった。