プール雨

幽霊について

石原吉郎『望郷と海』

 

望郷と海 (始まりの本)

望郷と海 (始まりの本)

 

  つい読んでしまう。「今読むのにぴったりの本だ」としょっちゅう思うのだが、今また思うよ。
「いま私に、骨ばった背を押しつけているこの男は、たぶん明日、私の生命のなにがしかをくいちぎろうとするだろう。だが、すくなくともいまは、暗黙の了解のなかで、お互いの生命をあたためあわなければならないのだ。それが約束なのだから。そしておなじ瞬間に、相手も、まさにおなじことを考えているにちがいないのである」