プール雨

幽霊について

メロンと私

 こどものころ、メロンはそこら中の畑で生っていた。おばちゃんたちは近所にメロンを押しつけ合うのが大変そうだった。そんなわけで、初夏にもなると朝からメロンが食卓に並んだ。皮は漬け物になった。食べきれなかった。時々「生ったまま熟れすぎたメロン」というものが出てきた。要するに腐っているわけで、これが大変な苦痛を伴う味なのだが、私は叱られるのが怖く、「おいしい、おいしい」みたいなノリで飲み込んだ。涙が出た。それ以来、メロンを食べるとき、ちょっと匂いをかぐのが癖になり、最終的に食べられなくなった。
 大人になって、二日酔いの状態で出勤したある日、何の気なしに生ジュースのスタンドで「二日酔いに効果あり」との張り紙を見て、メロンジュースを一杯いただいた。とてもおいしかった。
 我が人生にメロンが復活した感動の朝であった。