プール雨

幽霊について

新聞で『それから』

 最終回。

 あれほど無口だったお兄ちゃんが語り倒して、あれほどぐちゃぐちゃと語り倒してきた代助がほぼ無言で終わりました。

 ラストまで読んでみると、「代助」なんていうひどい名前をつけられて、おそらくはその名前にふさわしいであろう扱いを受けてきた人間がしうる行動として、ありかなしかで言ったら「あり」かなあと思えるようなことを彼はしたんだという気がします。
 平岡は終始一貫して代助を幻滅させ続けるわけですけど、当の代助が昼寝と読書ばかりしている三十男というのもあって、そうそう単純に彼に同情できないし、兄の代打要員として育てられて、実質放っておかれた男はしかし、当時最高の教育は受けさせてもらい、日々の糧には困らない生活もさせてもらっているのだから、そうそう簡単に読者の同情を誘わない。
 そしてその埋め合わせかと思うほどに代助は語って語って語り倒したのですが、あのとき彼は語りそこねていたんだなあという読後感です。今の彼の気持ちは三千代にしかわからないと書いてありますが、読者にも、色んな操作を加えないとわからないです。
でもそれがこの話の味わいなのかなとも思いました。暗闇にぽつんと横たわっていた男が、その内面の孤独を外にぐいっと反転させて社会的にも孤立したとき、逆に時間が流れだして、街の喧騒が一気に流れこむというのはあまりにハードだけど、やはりおもしろかったです。

 何考えてるかわかんないけど、多分、自分でもわかってないけど、がんばれ代助!