シュテケレと呼ばれるフィリピン風中華ドーナツは、世界中の美味いもの好きをシトカへ呼ぶことに大いに貢献してきた。シトカで食されているそれは、フィリピンにはない。中華料理の権威はそのような食べ物がかつて中華鍋から誕生したことはないと断言するだろう。ユダヤ教の唯一神ヤハウェが元はシュメールの嵐の神だったのに似て、シュテケレはユダヤ人の発明ではないが、ユダヤ人の欲望がなければ、世界は神もシュテケレも人類に与えなかったはずだ。細巻き葉巻の形をした揚げドーナツは、甘すぎず塩辛すぎず、砂糖をまぶした外側はサクサク、中は蜂の巣状の空気穴でふんわりしている。紙コップのミルクティーに浸けて眼をつぶり、十秒数えれば、いっそう美味しく食べられること請け合いだ。
と、今読んでいるハードボイルド小説に突然出てきたので引用してみました。M・シェイボン『ユダヤ警官同盟』より。シトカっていうのはアラスカのシトカです。
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