プール雨

幽霊について

KIRINJI LIVE 2020

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どーん!

 今年二月に行くはずだった KIRINJI のライブ。やっと行けました。

 十カ月の間に「KIRINJI Studio Live Movie 2020」と「Slow LIVE'20 in 日比谷野外大音楽堂」があったので、家族には「あれ、また行くの?」と尋ねられました。でも、前者はストリーミングで、後者は(フェスで、)単独じゃなかったから、ファンとしては「二月からずっと待ってました!」というモードにはまっていて、「いや、今年初めてだよ」と言い張って混乱させてしまいました。

 感染状況は二月より悪く、「どうなるのかな」と思っていました。あのときも今も何がどうなったら緊急でどこをどう締めればどうなるかオフィシャルにははっきりしないのはいっしょで、医療体制の逼迫や COVID-19 のこわさだけが迫ってきて、「どうなんだろう」と不安ばかりが増しています。

 そんな中、なんとか開催されて、気をつけてでかけました。外食できないので、家で摂る昼食をずらして三時頃にしたり、開場時間を過ぎてから駅に着くよう調整したり、とにかく「行って、帰る」だけになるよう、それなりに工夫して。

 ところで、久しぶりに原宿に行ったら風景が変わっていてびっくりしました。駅舎がすっかり大きく広くなっていて、すいすい移動できました。元の原宿駅はうなぎの寝床的なつくりで、イベント時は通路が人でぎゅうぎゅうになってしまっていたので、オリンピックを前に改築したのですね。オリンピックが開催不能でも、都度都度ぎゅうぎゅうになってしまうのでは大変だし、いつかは改築しなきゃいけなかったんだなあとしみじみしつつ、広々とした通路からすい〜と NHK ホールまで歩きました。

 感染症対策で客席は一席おきだから、いつものライブのような渋滞がなく、行列の待ち時間もなくすいすい入場。体温を測ってもらえて便利。「手指の消毒を」というアナウンスに「しゅし」と「てゆび」が混在していて、親切。

 と、なにもかも絶賛モードで入場しました。そしたらなんと、まだリハーサル中だったのです。やだこんなの初めて。ストリーミング放送もあったからそれで遅れたのでしょうか。どきどきしました。

 とはいえ、着席した時点で開演まであと 45 分くらいたっぷりあるという状況で、そうなってくるとつい余裕が出て本を読んでしまい、物語の中ではついに「オヤジを殺したのが誰か」が判明しつつあり、「えー、だれ」とびっくりしたところで暗転。あ! だれ! あの切れ者のオヤジがだれに殺されたって言うの〜〜〜〜とどきどきしたまま「明日こそは / It's not over yet」が始まってしまい、これは「今が大事とかんたんに言うけれど、純然たる『今』などない」という大変にシビアな歌で、暗殺者の正体と相まってハードモードに突入。次の「Golden Harvest」も「人々が君を讃えるとき、君はいない」という歌で、必ず帰ると約束した相棒が帰ってこなかったときの気分になり、そこに「Mr. Boogieman、あなたを殺せるのは私だけよ」という「Mr. Boogieman」が重なり、ゲストの YonYon が出てきてくれなかったら、ひとりで『ジョン・ウィック』になるところでした。


KIRINJI - killer tune kills me feat. YonYon

 7 月に現体制でのライブを初めて( web で)見たとき、「うわあ、すごく、ダンスミュージックだ!」と驚きました。

 飢えや貧しさの中からも詩や音楽は生まれるという、ややもすると散文的な主張を(しかし散文を拒みながら)演じてきた KIRINJI に、ここまで踊らされるのは 2020 年ならではということになるのかなあ。

 もしかしたら KIRINJI は私たちをはげまそうとしているのではないか、KIRINJI なりに、という気すらするほど、ダンス、ダンス、ダンスでした。また、現体制での KIRINJI はこれで終わりなので、この KIRINJI 流ダンスはこれっきりかもとそのはかなさにもどきどきしました。 

 私のお気に入りは「非ゼロ和ゲーム」、「悪夢を夢見るチーズ」、「ONNA DARAKE !」、「LEMONADE」の、メインボーカルがぐるっと順にスウィッチしていくところ。この四曲が連続で聴けて、「うわあ、この世界観でこんなにダンスだあ」とふらふらしつつ、「かっこいい、かっこいい!」と何回も思いました。

 「shed blood!」で再び YonYon が登場し、いよいよ不思議な盛り上がりを見せ、彼女のあたたかい声の混じる「『あの娘は誰?』とか言わせたい」では明け方死体になっている自分を幻視しました。

 そこに鎮座dopeness が登場して、「Almond Eyes」が始まったときはどっちが前か後ろかもわからない状態に。

 鎮座dopeness バージョンの 「The Great Journey」、ふらふらしていてよかった! ダンスミュージックとしての「パレードはなぜ急ぐ」、「嫉妬」、「都市鉱山」、とてもよかった!

 とくに、本編最後の「都市鉱山」はリリース時から好きだったので、今こうして聞けて、そして踊れて感激です。真夏の、貧血をともなう風景が広がる曲です。KIRINJI は夏の曲にも名曲が多いので、夏曲中心のライブセットなんかも、いつか聞けたらなと思います。

 アンコール後は四曲も聴かせてくれてサービス満点でした。「時間がない」で終わるところには、愛すら感じました。


KIRINJI「時間がない」Teaser

 何もなければ、今年初冬にツアーをして、フェスにたくさん出て、秋にベスト盤を出して、冬に集大成のホールライブ、ということだったのだと思います。でも、こんな状況でも不思議な詩とダンスをじっくり味わえて、楽しかったです。

 帰りは大都会にいて、ライブ終演後なのに静かで、人の波というほどの波もなく、なにもかも、不思議でした。

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ぼんやりまっくら

 そしてはたと気づくと、今日、梅が咲いていて、またびっくりしました。

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梅ちゃん