プール雨

幽霊について

高橋幸宏 LIVE 2018『Saravah Saravah!』を映画館で見てきました

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 謎の映画館が歌舞伎町の縁(へり)の所にできてました。A 席と S 席があって、それぞれ入場料が 4500 円、6500 円という立派なお値段。そんなお値段だったら『ゴッドファーザー』全作一気見とかじゃないと納得できないんじゃないかという私の悲しい貧乏心が働いて、今まで視界に入れないようにしてました。

 だが入ってしまったのです。

 高橋幸宏が 2018 年に行った、アルバム『Saravah Saravah!』の再現ライブです。アルバムの曲順そのままに再現するライブ、一時期はやってましたよね。あれは一体何だったんだろう。

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 とにかく。

 高橋幸宏もやったんです。2018 年でした。それを、すばらしい環境で聞かせてくれるというので、行ったんです。

 そして私は、以前から小耳にはさんでいた「グリーン車の乗客はガラが悪くなりがち」という伝説にちょっとした説得力を感じるような経験をそこでしました。なお、ガラの悪い客はいませんでした。みなさんどこまでもどこまでも静かでした。

 問題は私のガラです。

 あぶないところだった。

 説明します。

 まず、チケットを取ります。すると QR コードが送られてきます。それを入り口でぴぴっとやって入場します。入場したらもう、そこはだだっぴろいロビーで、

だだっぴろいです

さあくつろいで、くつろいでさあ! と言わんばかりです。 4500 円のチケット料にはここの使用料やウエルカムドリンク、ポップコーンの料金などが含まれていて、開演一時間前にはここで楽しむことができます。また、有料ですがバーカウンターがあって、そちらではアルコールや、ちょっとしたスコーンのセットなどを楽しめるそうです。

 そんなわけで、じゃ、コーヒーを飲もうかなと思ったんですよ。入場を済ませて、スマホは電源を落として鞄にしまって、

現場

「あったかいコーヒーください」と言いました。そしたら、コンシェルジュ的な人が、「チケットをご提示ください」って言うんですよ。

 おや、チケットを出してこの空間にいるのにまたチケットを出すので? と不可解に感じました。しかし提示せよとおっしゃるのでおとなしくかばんからスマホを出して電源を入れて、ぴろりら〜んきら〜んぽちゃ〜んみたいな状況をくぐりぬけて、やっとこさ QR コードをぴっとやって、コーヒーを出してもらって、それなりに機嫌をよくしてコーヒーを飲みつつ、開場を待ったんです。

 開場しました。

開場〜

 もっかいチケット見せろって言われました。

 あれっ、なんで? と思いつつ、さっきのこともあったので今度は電源を落としてなかった。そんでスマホの画面見せてまたぴっとやって、ぴってやった隣では別の人が紙にメモしてた……私の席を……三回もQRコードぴってやった上で最終的に紙でチェック……

 ふつうのシネコンって、チケット出してぴっとやるの、一回ですよね。ここは三回出すんです。

 ま、でもそこは、別に腹は立たなかったのです。不思議だなって思っただけで。そんで、先に書きますけど、結構「むか」って来たことがこのあと待ち受けていたのです。

 席最高。腰にも肩にもよさそう。すべての医療介護施設に導入すべき。あと広い。左右に余裕がある。S 席だと前方にも余裕があって席をかなりぐいぐい倒せるそうです。靴をぬいで足を伸ばせるのはいいかもしれませんね。エルキュール・ポアロもよく足が痛いと言っていましたから。でも、A 席でも十分、信じられないほどリッチな気持ちです。

 しかし、この席で見る映画泥棒の映像が思いのほか「むか」としました。

 心が狭くて申し訳ないです。

 4500 円払って見るこの、客を泥棒予備軍扱いする動画がほんとに「貧乏」ということをつきつけてきて、辛かったです。

 私はちょくちょく映画に行くのでまだいいんですけど、半年に一度とか年に一度とか、たまに映画でも、と来られたお客さんが興味ない予告や CM を延々見せられたあげく、映画泥棒の動画で「あなたは泥棒予備軍。法律を知ってね!」と言われたら、「もう来ないよ」って思ってもおかしくないんじゃないでしょうか。しかも大抵、もう一本マナー啓発動画みたいなのが流れて、そこでも「録音録画するな」って言われるんです。ひととき、日常を忘れ、リッチでゴージャスな気持ちで人がわくわくしているときなのですから、できればマナー啓発動画自身もスマートかつゴージャスになっていただきたい。雨子からのお願い。

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 というわけで、初めて、映画館で高橋幸宏の映像を見て、高橋幸宏の音楽を聞きました。全然雑音がないの。雑音というか、ライブのときってスピーカーからの音以外にもいろんな音が聞こえてますよね。会場によっては反響が大きいところもあって、なにか遅れて聞こえる音もあったりして、その空間自体の音を楽しむのですが、映画館で聞く音楽は雑音がなくて、はっきりしているけど静かで、すごく不思議な体験でした。やっぱり、映画館で見るから、映画特有の静けさがあって、「こんな風に高橋幸宏を聞くのは生まれて初めてだな」って感動していました。

きれいでした

 家のスピーカーで聴くときも「きれいだな」って思ってるんですけど、これからもう、ずっときれいな音でしか聞けないんだなとあらためて心細くなったりもしつつ、やっぱりすてきでした。

 どういう回路かわからないけど、猛烈に漱石の『こころ』を読みたくなりました。

ばいばい

 外に出るとそこでは昼間でも危ない歌舞伎町。

 その落差にくらっときたので、早足で家に帰ってまた高橋幸宏聞きました。

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ずっと高橋幸宏を聞かされるかわいい人たち

♪ おしまい ♪