プール雨

幽霊について

「マッチスティック・メン」

マッチスティック・メン」(リドリー・スコット


こつこつと小さな詐欺を続けるロイ。強迫神経症を患い、ひどい潔癖症のせいで、薬なしでは外に出ることもできない。あるとき、「でかすぎるヤマははらない」という方針を変えて、相棒と二人で大きな仕事に手を出し始める。そこに元妻が別れてから産んで、今は 14 歳になった娘が家出をしてきて、もう、てんやわんや。カウンセリング、詐欺、娘とのどたばた、その果てに……っていう話で、ラスト 10 分が素晴らしい。主人公は大きな問題を抱えているんだけど、まさか、そういう乗り越え方をするとは……! 

印象深いのは、一貫して「問題だらけだけど、良い人」として描かれてきた男の、その元妻が出てきた数分間。見ているこっちはずっと間違いだらけのロイによりそっているから、どんな冷たい態度に出られるかと思いきや、ぱっと出てきた瞬間、「あっ……」と声が出るほど、優しくも痛ましい表情。ずっとロイのことを痛ましく思ってきたことが伝わってくる。14 年間の苦しみを思いやる彼女の手が触れる一瞬のすばらしさ。
様々なアイテムが入り乱れているようでいて、一人の人物が立ち直っていくところにスポットがあたっているので、とてもシンプル。