プール雨

幽霊について

臼井隆一郎『コーヒーが廻り 世界史が廻る』

(ナポレオンの海洋封鎖について)ナポレオンがコーヒーのことなど念頭に入れていなかったと想定するのは難しい。ロクな栄養もないわりに、なんとなく元気が出るコーヒーを、なによりも元気が取り柄の軍隊の食事に採用したのはナポレオンだといわれている。そのコーヒーをどうするつもりなのか。産業に頼る他はない。難しいが、ナポレオンは不可能を知らない。

臼井隆一郎『コーヒーが廻り 世界史が廻る』第5章より

なんともいえない味わいのある文言だなと思って。この本、「見たきたかのように語る」系でそこがとっても楽しいです。

コンパクトにまとまっっているのに、時折「ドイツ語ではこうした代用コーヒーを…(中略)…、おおよその語源的意味は『朽ち果てた褐色の大地』である。赤面したくなる。しかし赤面してはいけない。この程度で赤面していては、この国とつきあっていけないのだ」といった文言が入る。先生! その三行、どうしてもいりますか、いるんですね……としみじみ思う。あと、フリードリッヒ大王と会ったかのように語る。途中で若竹七海の短篇集のせいで中断に遭ったりしつつも、楽しい読書体験でした。