今年劇場で観た映画から過去にも何度か観ているものを抜いて、☆5つで分類しました。
★★★★★ (どれが今年一位でもおかしくない映画)
インヒアレント・ヴァイス 監督:ポール・トーマス・アンダーソン……原作を読むと、かなり大胆な削除も行われているし、映画としてシンプルに再構成されているけれども、観ているときに感じるものが小説を読む楽しみにかなり近く、それがおもしろかった。最初から最後まで通しで見ても良いし、どこから見始めても、途中でやめても良い。
マッドマックス 怒りのデスロード 監督:ジョージ・ミラー……20世紀に人類が犯した罪を、これほど慈悲深く描写したものは観たことがなかった。
ラン・オールナイト 監督:ジャウマ・コレット=セラ……とてもきちんとしたきれいな映画で、見ていて楽しい。「ひとり親家庭の子どもを支援するプログラムで僕はボクシングを習っていて、そこに彼はボランティアとして来ていて、僕の指導者です」という台詞と、その状況は、見終わった後、ちょくちょく思い出してしまう。
薄氷の殺人 監督:ディアオ・イーナン……とにかくきれい。驚きと美しさに満ちていた。馬と消防訓練とカツラに惑わされた。
アバウト・タイム 愛おしい時間について 監督:リチャード・カーティス……主人公カップルのかわいらしさに悶絶。背景にある倫理観がしっかりしていて、どれほどはらはらさせられても、物語を味わう楽しさに満ちている。
黒衣の刺客 監督:侯孝賢(ホウ・シャオシェン)……主人公をめぐる因縁の糸がふわっとほどける過程がとても良かった。
追憶と、踊りながら 監督:ホン・カウ……亡くなってしまった相手に向かって「I miss you.」と語りかける以外できないところから、「I miss him.」と他者に説明できるようになるまでの短い時間を丹念に追っていてとても良かった。
ドローン・オブ・ウォー 監督:アンドリュー・ニコル……21世紀型悪をじっくり描写していて、それを「終わったこと」として描いてない点が良かった。
ラブ & マーシー 終わらないメロディー 監督:ビル・ポーラッド……ポール・ダノが大きくなったらジョン・キューザックになって。
フォックスキャッチャー 監督:ベネット・ミラー……寒さと静謐さと緊張感とあっけなさにびっくり。
激戦 ハート・オブ・ファイト 監督:林超賢(ダンテ・ラム)……楽しい、わくわくする、切ない、勇気がわくなど、映画に期待することが全部詰まっている上に、テンポが独特で新鮮さもあった。
ジョン・ウィック 監督:デヴィッド・リッチー、チャド・スタエルスキー……全部おもしろかった。シリーズ化してほしい。
イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密 監督:モルテン・ティルドゥム……暗号の解析に日々従事する人々が、互いの嘘を噓と知りながらも「噓はよせ」の一言が言えずからまりそうな糸がからまならないところが切なかった。
バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) 監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ……長回し好きには堪えられない。味わったことのない方向に感情が高ぶって、それが新鮮で楽しかった。
ムーン・ウォーカーズ 監督:アントワーヌ・バルドー=ジャケ……頭がおかしくなった。最終的に笑いがとまらず、とても苦しい思いをしたし、涙まで流れた。
ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション 監督:クリストファー・マッカリー……とにかくかわいすぎる。立ち向かい方がキュートで素敵。
ワイルドスピード SKY MISSION 監督:ジェームズ・ワン……車が空を飛んだ。エンドクレジットで流れた曲を聞くといまだに涙が出る。
群盗 監督:ユン・ジョンビン……ハ・ジョンウ、堂々たる 18 歳。素晴らしかった。
誘拐の掟 監督:スコット・フランク……ある人物が挫折をして、そこで話が終りなのかと哀しくなっていたら、全然別の話に展開していくのが見事だった。すばらしいエンディング。
ホーンズ 容疑者と告白の角 監督:アレクサンドル・アジャ……おもしろすぎ。どうやって考えたんだろう。内向的な主人公をめぐる風景がくるくると変わっていっておもしろかった。
ヴィジット 監督:M・ナイト・シャマラン……みっしりおもしろかった。エンドクレジット大賞。
ビッグ・アイズ 監督:ティム・バートン……エイミー・アダムスとクリストフ・ヴァルツの一騎打ち炸裂。二人が見つめ合うだけですごいパワーが生じてふっとばされた。
コードネーム U.N.C.L.E 監督:ガイ・リッチー……キュートな三人組に悶絶。
スター・ウォーズ フォースの覚醒 監督:J・J・エイブラムス……新しい主人公たちが魅力的で、いますぐ続きが見たい。病院で嫌な検査中にもレイやフィン、ポーのことを思い出して耐えたほど。カイロ・レンもおもしろいと思います。
スペシャル ID 特殊身分 監督:霍耀良(クラレンス・イウ・レン・フォク)……宇宙のアイドル、ドニー・イェンの面目躍如というか、とにかく笑いました。
007 スペクター 監督:サム・メンデス……変なメカや、悪の組織など古色蒼然とした道具立てをずらっと揃えつつも、ボンドガールが✕✕✕✕ったり、驚きの展開もありました。ダニエルボンドは人間味があって楽しい。
チャッピー 監督:ニール・ブロムカンプ……見ていて一度すごく深い底に叩き落とされるのですが、そこからの展開がせせこましくなくて、いろんなことがどうでもよくなる。
憂鬱な楽園 監督:侯孝賢(ホウ・シャオシェン)……ほとんど会わない親戚の飲み会に紛れ込んだ感じを味わえます。「お前どこの誰だ? まあいい、座ってまず食え」と言われます。
★★★★ (年によってはこれが一位であったこともあっただろうと思われる映画)
ジャッジ 裁かれる判事 監督:デヴィッド・ドブキン……中年の危機ものをやるにはぎりぎりの年齢の主人公の、ぎりぎりさがとても良かった。間に合って良かったなあ、と思える。
悪党に粛清を 監督:クリスチャン・レヴリング……とても美しい。色がきれい。
キングスマン 監督:マシュー・ヴォーン……二人の若手に対して、素朴に「がんばれ、がんばれ」と思った。
義兄弟 SECRET REUNION 監督:チャン・フン……ソン・ガンホの魅力で押し切られた。
嗤う分身 監督:リチャード・アイオアディ……映画に出てくる「上を向いて歩こう」場面で一番かっこよかった。
私の少女 監督:チョン・ジュリ……ペ・ドゥナの魅力で押し切られた。
コングレス未来学会議 監督:アリ・フォルマン……難解だったけど最後まで興味を失わず見られた。
マップ・トゥ・ザ・スターズ 監督:デヴィッド・クローネンバーグ……怪物がいっぱい出てくるけど目を閉じると瞼の裏にはジョン・キューザック。
アイスマン 監督:ロー・ウィンチョン……キュート。続きが見たい。
クリミナル・アフェア 魔警 監督:ダンテ・ラム……ちょう変な映画だった。ニック・チョンが「いつものニック・チョンのイメージ」を演じていておもしろかった。
技術者たち 監督:キム・ホンソン……満足感がある。
ロバート・アルトマン ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男 監督:ロン・マン……ドキュメンタリーなので、冷静に見られませんでした。
作戦 THE SCAM 監督:イ・ホジェ……どこを切ってもきちきちっとしてて充実してる。
カンフー・ジャングル 監督:テディ・チャン……すごい。けど反則案件。
レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ 監督:アキ・カウリスマキ……くるみとたまねぎで頭が一杯です。
人生スイッチ 監督:ダミアン・ジフロン……おもしろかった。真夏に見ると良いと思う。
殺人の告白 監督:チョン・ビョンギル……この犯人像で仕上がりが安っぽくならないところがえらいと思う。
WE ARE PERFUME WORLD TOUR 3rd DOCUMENT 監督:佐渡岳利……次回がもしあるのなら、一本の映画として成り立つものを目指してほしい。
尚衣院 監督:ウォンサック・リー……きれい。そしてシビア。
★★★ (午後のロードショーでかかったら盛り上がるだろう映画)
劇場版 MOZU 監督:羽住英一郎……演出はおもしろいけど、話はびたいちもんわからなかった。
リピーテッド 監督:ローワン・ジョフィ……ミスキャストかなあ。
ジョーカー・ゲーム 監督:入江悠……監督の次回作に期待。
アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン 監督:ジョス・ウィードン……短かった。
イニシエーション・ラブ 監督:堤幸彦……まゆを怪物として描いているので、おもしろいけど原作より一段階話が小さくなった。
ピッチ・パーフェクト 監督:ジェイソン・ムーア……どうしてそこまでお下劣にするのだろう。
フォーカス 監督:グレン・フィカーラ、ジョン・レクア……午後ローで見れば良かった。
★★ (いや、この映画こそ今年ベスト1だと人から諭されること自体はやぶさかでないという感じの映画)
ザ・レジェンド 監督:ニック・パウエル……アナキンとアンディ・オンに幸あれ。
アナーキー 監督:マイケル・アルメリーダ……どうすればおもしろくなるのかわからない。
海街 diary 監督:是枝裕和……この監督独特の雰囲気が感じられなかった。
クーキー 監督:ヤン・スヴェラーク……このスタッフはぬいぐるみとともに暮らすということを何一つわかっていない。
セッション 監督:デミアン・チャゼル……「映画で遅刻」が苦手なので自分には正当に評価できない。
ハッピーボイス・キラー 監督:マルジャン・サトラピ……何でもやればいいってもんじゃないという気がするのです。裏「レッドドラゴン」みたいな感じなんだけど、うーん。
★ (うーん、ちょっと。)
リベンジ・オブ・ザ・グリーン・ドラゴン 監督:アンドリュー・ラウ、アンドリュー・ルー……感傷的、情緒的で同情をあおる演出のわりに肝心の物語がぱさぱさしていて、単に不快。
まとめ
今年も映画、楽しかったです。「ゾンビーバー」「プリデスティネーション」「アメリカンスナイパー」「アントマン」など大作を見逃して後悔ひとしきりな一方、今年は本人比で「見過ぎた」という感触があります。来年は本数を減らして、その分同じ作品を二回三回と見るようにしようかなと考えています。大体、繰り返し見るとさらにおもしろくなるので。