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幽霊について

高畑版『赤毛のアン』第 40 章「ホテルのコンサート」

 夕べは『赤毛のアン』第 40 章「ホテルのコンサート」を拝見しました。
 チャリティコンサートにアンが詩の朗読で出演することになりました。アンはダイアナのお見立てでオーガンジーのドレスに白い薔薇、そこにマシューが買ってくれた真珠のネックレスでおめかし。このとき、アンが流行の型じゃないけどと不安を示すと、ダイアナはすらっとして姿勢のいいアンにはこれがいちばん似合うんだと主張しました。流行より、似合うかどうかを優先するダイアナのおしゃれは本物ですね。
 ダイアナが「アンにいちばん似合う」と太鼓判の、このオーガンジーの素朴で、清楚なドレスについて、原作ではマリラがこう言っています。

オーガンジーなんて生地は実用的じゃないんだよ。マシューが買う時に、そう言っておいたんだけどね。この頃じゃ、マシューには、何を言っても無駄だよ。前は、私の意見に耳を貸してくれたのに、今じゃアンの物となると、何の考えもなしに金に糸目をつけずに買ってしまうんだから。(松本侑子訳『赤毛のアン』より)

 ところが、いざホテルに行ってみると、まわりは寄付のために集まった都会の富豪のみなさんで、てらてらのシルクのドレスやらダイアモンドやらでアン達は気圧されてしまいます。見ながら思わず、「アンがいちばん、きれいだよ、すてきだよ」と語りかけてしまい、すっかりマシューの気持ちになりました。それでも、アンの朗読したリア王(『赤毛のアン』のファンサイトを参照しました)の詩は大評判で、結局彼女がコンサートの主役のひとりになったようでした。原作では『乙女の誓い』を読んだ、とあるのですが、松本侑子注によればキャロライン・オリファント『乙女の誓い』のことだが、他にスタフォード・マクレガー『マルス・ラ・ツール、乙女の祈り』ではという説もあるそうです。アニメでアンが演じたコーデリアの台詞は確かにはっとする感じがして、彼女の声が会場中を魅了しているのが伝わり、見事な改変だと思いました。
 送り迎えをしてくれたジェーンのお兄さんのシャイさも印象的でしたが、何と言ってもこの回はジェーン、ダイアナ、アンが三人でぴったりくっついておしゃべりしているのが楽しかったです。帰りの馬車でジェーンが「お金持ちになりたくない?」と言うと、アンは自分たちはすでにお金持ちだと言いました。16 歳の今まで無事に育ってきているし、女王のように幸せだし、想像力もあるし、と。そのときのジェーンとダイアナの「うーん、でも……」という顔がとってもおもしろかったです。