プール雨

幽霊について

大人のすることじゃない

 昔、ある漫画家が、若い人に「国のために死ねるか」って質問したら若い人たちは「死ねる」って言ったって言うんです。それで漫画家は、若い連中は立派だ、といった発言をしたことがあって、その時点では私も若かったんで単にびっくりして、「国のために死ねるか」って質問に「死ねる」って解答するのが「立派」なのかって考えるとどうなのほんとなの大丈夫なのとか、そもそも「国のために死ぬ」ってありえるのか、とか考えてしまって、質問自体がよくわかりませんでした。

 市民が死んだら「国のため」になる事態ってあるんだろうか、それはどこまで行っても痛ましい、悲痛なことであって、死が何らかの成果につながるなんて実際問題ありえないのではないだろうか、若い人が「国のために死ぬ」ことを期待しているのはだれで、それはどういうことなのか、とかいろいろ考えて、最終的にはその質問した奴出てこい、みたいに思ったのですが、今にして思うと、あれってほんとにインタビューなり統計なりを取ったのかなあ? ってことがそもそも気になります。取ったんだとしても、若いときって弱いし、まわりの様子をうかがって後手にまわりもするし、結局、「若い人たちはこう言っているよ!」ってかたちで主張を通そうとする年寄りってほんと醜悪って結論に落ち着きました。

 電車の中で男子高校生がこう言ってたよとか、マクドナルドで女子高校生がこう言ってたよとか、そういう言動を取ることのみっともなさについて、思い当たりました。二十年越し(たぶん、そのくらい)で。