プール雨

幽霊について

今村夏子芥川賞受賞記念読書会

f:id:poolame:20190817085303j:plain

ばばん

何人かいる、新作が出たら即買って読む作家のひとり、今村夏子が『むらさきのスカートの女』で芥川賞を受賞しまして、記念に読書会をしました。以前から「今村夏子で読書会したいね」とは話題にあがっていたので、よい機会となりました。

声をかけてくださったみなみ(id:south-NewWell)さん、ありがとうございました。

f:id:poolame:20190817085258j:plain

じゃじゃん

会場は本とコーヒーとビールの街、西荻窪にある、BREWBOOKS(麦酒と書斎のある本屋)さんです。

f:id:poolame:20190817085223j:plain

かわいい街のかわいい本屋さん

f:id:poolame:20190817085228j:plain

こんな書店がわが街にもほしい……

みんなが到着する前につい、買い物。

「どこかいいところで出くわしたら買いたいな」と頭の隅に置いている本が次から次へと見つかる書店で、「ここでこれ見つかったから、もう買わなきゃいけないな」とあきらめがつきます。西荻散歩の際にはぜひ寄りたい場所です。

f:id:poolame:20190817132914j:plain

この書店に来て手ぶらで帰れようか

ちなみに、この BREWBOOKS さんのそばにタビーという文具店もあって、ついそこでも便せんと封筒を買ってしまいました。

f:id:poolame:20190817131255j:plain

これで手紙を書かざるをえない

会場の書斎はこんな感じです。ここにテーブルを出していただいて、四人で食べたり飲んだりしながら、『こちらあみ子』を中心におしゃべりしましょうという趣向です。

f:id:poolame:20190817085233j:plain

旅館ぽい!

とりあえず、暑かったので一杯。乾杯!

f:id:poolame:20190817085239j:plain

久我山の工房で醸されているクラフトビール

おのおの持ち寄ったおつまみ。私はなぜか「今日は飛び込みで若い人がいらっしゃるかもしれない」という思い込みにとらわれ、コロッケを大量に買ってしまいました。でも、女性四人で、コロッケをいくつも食べられるわけはなく、残りは持って帰って食べました。

f:id:poolame:20190817085244j:plain

女子会から遠く離れて

『こちらあみ子』は、語り手とあみ子の距離が近いので、全体像がわかるのにすこし時間がかかること、そして状況がわかっても、あみ子から距離を取れるわけではないので彼女がはっきりと言葉にしていない疎外感の種みたいなものにつきまとわれて、「疎外感」という言葉を口にするよりずっと辛い状況に置かれること、それでいながら、他の登場人物の置かれている状況もわかって、これまた辛いことなどなどを吐露しあいました。

私はあみ子に限らず今村夏子の小説を読むと、疎外感(のようなもの)を味わっていた生家でのことを思い出して、それが引き金となるのか、大体こわい夢を見ます。『むらさきのスカートの女』を読んだ夜は、13 階段を上がった先に自分の部屋があって、その部屋にたどりつくまでのアプローチがゴミためになっていて、そのゴミをよけつつドアを開けると、中で弟がゲームをしているので、「お願いだから私の部屋から出て行ってくれ。私は何も思い通りになることがないのだから、私の部屋から出て行くくらい、してくれたっていいでしょう」と泣きながら弟に頼むのだけど、弟はこちらに顔を見せることもなく、ゲームをしつづけ、するうちに視界の隅には父親までいることがわかって、二人に泣きながら出て行ってくれと懇願するものの、彼らは反応すらしてくれないという悪夢を見て夜中に目を覚ましました。

泣きながら家族に懇願するが、耳をかしてもらえないというのはよく見る夢です。

あみ子は「こちらあみ子です」とトランシーバーに話しかけるけれども、それが誰にもつながらず、彼女がついに死者に語りかけようとするする辺りはあまりに切ないです。でも、彼女が意図しない、意識しないところでその声をふっと兄が聞いたり、同級生が聞いたりし、ラストでは祖母の声を彼女が大きく受けとめ、そんな、望んだり意識したりしたところとは別のところから彼女の元に届く声が「ある」ということがとてもうれしかった。

今回、こういう機会があって、あみ子を再読して、初めて読んだときよりもさらにわっと震えるような感じをおぼえましたし、切ない、辛いだけではなく、彼女に誰かが声を届け、彼女がそれを真剣に受けとめる(受けとめたいと願う)という場面が終盤繰り返されることで、何といったらよいかわからないのですが、いちばん近い言葉としては「よかった」というような気持ちになりました。

こういう体験はやっぱり小説ならではだし、そして今村夏子ならではだと思うので、おすすめです!

 

こちらあみ子 (ちくま文庫)

こちらあみ子 (ちくま文庫)

 
あひる (角川文庫)

あひる (角川文庫)

 
星の子

星の子

 

そしてそのあとは盛大に愚痴大会へと突入してしまい、しかし「こんな愚痴はここでなきゃ話せないから」と、お互い思い切り話して、それぞれに悩みを言語化しあいつつ、最終的にはにこにこと、また読書会しましょうと解散しました。